劇場公開日 2019年6月14日

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「自分物語と、周りの見えない危うさと、終わりなき旅と」旅のおわり世界のはじまり ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5自分物語と、周りの見えない危うさと、終わりなき旅と

2019年6月14日
iPhoneアプリから投稿

僕たちの世界に蔓延してる危うさとは、このようなことかもしれない。
誇張された演出のテレビ番組を観て遠い国に思いを馳せ、街歩きガイドに従ってバザールに足を運んで、冒険してるようで、実はマニュアルに従っているのと同じだったりする。
「海外に行ったら、街のバザールに行ってみよう!その国の生活に触れることができるかも!」のようなやつだ。
そして、バザールを一目散に歩いても、実際に買い物をするのは、バザールの店じゃなくて、コンビニのようなショップだったり、いつのまにか、暗い道に迷い込んでバザールとは違う場所にいたり。
結局は、期待した感動や満足感とは程遠い。

毎日必死でインスタに自分物語をアップしてるのも同じだ。
今日は、レストランで、こんな食事食べましたとか、こんなイベントに参加しましたとか、実は、感動を伝える自分の言葉や表現力は不足していて、誰かがやり尽くした、事実を積み重ねるという作業を単に繰り返しているのだということに気が付きさえしないのだ。

注意を促す人の声に怯え、手を差し伸べてくれる人の親切を振り払い、自分物語を見栄え良く綴ろうとしても、空虚なだけだ。
家畜のヤギを野に放ち、あなたは自由よ!と言っても、もともと人に育てられたヤギは幸せなのだろうか。獣に怯えながら、生きて行くことになってもだ。
恋人からの電話に、「本当に、心配したんだから」と言うよりも、かける言葉は別にあるだろう。
結局は、周りが見えない、独りよがりなだけなのだ。
ウズベキスタンの緑の山でヤギを見つけて、あれは自分の野に放ったヤギに違いないと思い込んで、感動するのも同じことだ。

ウズベキスタンの青い空は、愛の讃歌の歌にあるように、決して落ちてなど来ないのだ。

こうした果てるともない長い旅が終わらないと、世界ははじまらないのかもしれない。

必死で頑張ってるのよと自身を鼓舞するのをちょっとの間でも止めてみて、少し立ち止まって、深呼吸でもしてみないと、本当の自分は、本当の自分の物語は見えてこないのかもしれない。

ワンコ
ワンコさんのコメント
2019年6月18日

恐怖のブランコは、恐怖ですよね(笑)あれは、あっちゃんしか出来ないですよね。

ワンコ
びわ湖のこーちゃんさんのコメント
2019年6月18日

映画見た後にコメント見ました。色々な雑誌系、ネット系の映画評より解説の切り口が異なり共感しました。色々深くすすめたかったが、全て編集でカットされたのでしょうか。歌うシーンのみは、前田さんでなかったほうが良かったのでは。新妻聖子さんとか。新妻さんなら恐怖のブランコ?は成立しないし、あっちゃんで良かったと私は思っています。

びわ湖のこーちゃん
ワンコさんのコメント
2019年6月17日

こんにちは、
コメント、ありがとうございます。
実は、悩んだポイントなんです。よって、鋭いご指摘なんです。
映画の触れ込みの中には、主人公の葉子の成長のロードムービーって書いてあるのもあるんです。実は、僕、学生時代、バックパッカーしていろんな国を旅したことがあって、その時の感覚もあって、なんか、この人、成長してないよねって感じて…。
でも、葉子に自分を重ねる人って、結構いるだろうなとも感じたのも事実なんです。
そのせいで悩んだんですが、最後の朗々と歌う場面で、結構違和感が出ちゃうエンディングのシーンだと思うんですけど、葉子に自己投影してる人も、この場面では、少し、「むむっ」って考えるんじゃないかと思って、あのレビューになりました。
余談ですが、モロッコのマラケシュに行って、バザールを回った時、自分の店を指差して、日本語で、「安物買いの銭うしなーい!」って僕に向かって言ってるおじさんがいて、悪い日本人がいるなーとか思ったり、バザールはお土産売りの酷い人もいますけど、基本的にはコミュニケーションの楽しいところのはずなんです。

ワンコ
いぱねまさんのコメント
2019年6月17日

貴殿の解釈、大変参考になりました。監督がもう少し親切だったら、その『少し立ち止まって、深呼吸でもしてみないと』のシーンを繰り入れて伏線回収して欲しかったですね。でないと、今作品は誤解されてしまう危険性を孕むような印象です。

いぱねま