劇場公開日 2021年3月26日

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「ちょ、待てよ!」騙し絵の牙 pipiさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5ちょ、待てよ!

2021年4月2日
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鑑賞方法:映画館

笑える

楽しい

知的

と、エンドロールを呆然と眺めながら思った。
映画、序盤は面白かった。
(太宰とチャンドラーのMIX、是非読みたい(笑))
半ばも小気味良く、面白かった。
全113分、100分超えた辺りも面白かった。
でもね?何これ〜?
これで終わりなの?
起承転、の転に差し掛かった辺りでブツッと終わって、転のメインと結が無いじゃん!
あとは観客のご想像にお任せします、ってか?
こっから、速水の真骨頂が展開されるんじゃないのかい!

「ちょ、待てよ!」もしくは
「なんじゃ、こりゃあああ!」と叫びたくなった。
「罪の声」に続いて、このままでは塩田武士という作家を嫌いになってしまう。すぐにシアターを出て、書店で原作を購入し、一気に読了した。
そして、本日2回目の
「なんじゃ、こりゃあああ!」を胸中で叫ぶ羽目になる。

だってね?
だって、あまりにも!
あまりにも「原作と違い過ぎる」んだもの!
一体、どこが「原作」なのよ?
一致してるのは主人公・速水。
あとはトリニティ編集部員の名前と二階堂先生の名前くらいじゃない?
(「名前」だけであって、速水以外のキャラクターは別人。特に高野恵。完全に別人)
もう、全っ然違う話じゃん、これ。
原作、面白いよ?なかなか。

特にね。「エピローグ」が実に良い。
「ちょ、待てよ。結がないよ(ややドスを効かせるギリ手前の低声で)」
と不完全燃焼だった想いが、無事に昇華致しました。
全然、違うストーリーだけど。速水という魅力的な人物を深掘り出来たから、まぁいいや。
(原作ラストの速水の勝利は、洋ちゃんはもちろんのこと、ロバート・ダウニーjrが演じても似合いそう。)

とゆーわけで、本作は吉田大八&楠野一郎バージョンの「アナザーワールド騙し絵の牙」でした。

結論。
吉田KIBAは、大衆娯楽大作。(ストーリーがタイトルと全然関係ないから、タイトル絡めるために、KIBA計画を無理矢理取ってつけただけ、って感じ)

塩田「騙し絵の牙」は、原作通りに撮ったら単館系ニッチ層向け作品になるだろね。(こちらはちゃんとタイトルの意味、あります。)
文壇&出版業界には思い入れがある。
個人的には非常に好みの作品であった。
原作ではきちんと、速水の行動原理、人格形成の基盤、守りたかったもの、40代男性の切なさ、やるせなさ、いじましさ、哀切、葛藤など共感を呼ぶ人間心理が描かれていて良かった。

映画も面白かったけど、コース料理のメインに一口、手をつけたところで皿を取り上げられちゃった感じなので大幅減点しちゃおうかな。
今回は原作に軍配を上げたいと思います。
(って、4階(映画)と5階(原作)で何やってんだかねぇ。惜しいなぁ。
数字取りに行く為には、こういう作風にするしかないのかなぁ・・・)

追記
二階堂先生は筒井先生ですよね(笑)
パーティーで山積みになってた、高野チェックの本は「聖痕」だろうし、ワインでも確定。(原作にはワインは登場せず、ヘネシーになってましたからw)

薫風社は角川オンリーではなく新潮社を足して2で割ったのかな?と。だから速水はFOCUSも自由に利用出来た。
トリニティはダ・ヴィンチ、なんとかオンライン(アップターンでしたっけ?)はフォーサイト、小説薫風は小説新潮+野生時代。
でも、なんとなく5階=新潮社、4階=角川でしたね(笑)
(最後、5階潰してるしw角川の本だから仕方ないか)

pipi
kazzさんのコメント
2021年7月6日

pipiさん、コメントありがとうありがとうございます。
原作未読のままなので、すみません。
まぁ、エンタメとしては及第点の映画だとは思いました。面白くはあったので。
原作からどの要素を抽出して、いかにオリジナリティのある映画に仕上げるか、が脚色の力。プロデューサー・監督・脚本家のコンセプトが反映するはずのところです。
米アカデミー賞では脚色(Adapted)と脚本(Original)を明確に分けて評価しています。
日本では脚色という仕事への評価が弱いですから、注目もされきゃ脚本家も力入らないですよね。
日本アカデミー賞で原作があって脚本賞を受賞したのは、原作者か監督が脚本を担当した場合が多いように思います。(統計とってませんが)
ただ、『罪の声』の野木亜紀子さんは、私は評価します。

kazz
Lucky!さんのコメント
2021年4月8日

やっぱり原作を台無しにしていましたか。なんか作品タイトルに合わない内容だったので違和感がありましたけど、まさか原型をとどめないほどだとは。とっても参考になるレビューをありがとうございました。

Lucky!
バリカタさんのコメント
2021年4月3日

pipiさん、コメントありがとうございました。なるほど!そうなんですね!レビュー拝見し、いただいたコメント内容の意味がさらにわかりました。早速原作読んでみようと思います。
ありがとうございました!

バリカタ
NOBUさんのコメント
2021年4月2日

度々・・。
 ”原作無しのオリジナル作品として「監督の創作作品」を名乗ってくれた方がスッキリします。”
 全く、同意ですね。
 商業ベースに乗せるには、格好のネタなのでしょうが・・、
 海外の映画に良くある”Inspired・・by ・・”では、駄目なのかなあ・・。
 では、又。

NOBU
NOBUさんのコメント
2021年4月2日

今晩は
 原作ありきの映画を観る際に心がけていることは、原作の世界観が生かされていないとか考えずに、監督がどのように原作を換骨奪胎して映像化したかを重視しているNOBUです。
 今作は、その点では今や大御所になりつつある吉田監督なりの解釈が上手く反映された小品ではないかと思いました。
 私は映画と原作は全く別物であるというスタンスで映画を観るので、御免なさいね・・。
 一番応援したいのは、原作なしのオリジナル脚本で勝負する若手、中堅の、中野量太監督や、吉田康弘監督や、橋口亮輔監督や、内田けんじ監督です。山田洋次監督は別格として、巷間に流布している漫画もしくは小説の作品の映画化って、その時点でプラスのアドバンテージがある訳で・・。
 創作って、そういうものではないでしょうか・・。
 商業ベースで戦うには、”売れた、話題になった”原作ありきの方が、有利なのは重々承知していますが・・。
 なので、わざわざミニシアターに時折、足を運んでおります・・。

NOBU
ちゆうさんのコメント
2021年4月2日

さっそく原作を買ってみます、書店ではなくAmazonで(笑)。よく、原作を超える映画はないと言いますが、果たしてどうなのかな・・楽しみです。

ちゆう