止められるか、俺たちをのレビュー・感想・評価
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ぽっかり空いた穴に落ちる
門脇麦は存在感のある女優である。何を考えているのかわからない女、本当は何を考えているのか教えてほしいようなほしくないような、知りたいような知りたくないような女がいる。そういう女を演じるとピカイチだ。本作品の主人公はまさにそういう女で、自分でもよくわかっていないところにリアリティがある。
めぐみは、何をしたいのかよくわからないままに生きている。若松孝二という圧倒的なバイタリティに引きづられるように毎日を過ごすが、自分がどうしたいのか、何が出来るのかは、闇の中だ。闇は心にぽっかり空いた穴を埋め尽くし、やがて現実ににじみ出て、めぐみを苦しめる。周囲の男たちの言葉によって小さな幸せを感じたり、または怒りに顫えたりしながら、彼女なりの精一杯の青春を生きていた。門脇麦の渾身の演技である。
観ていてかなりしんどい映画だった。若い映画人がそれぞれに鬱屈を抱えつつ、殺人的なスケジュールをこなしていく。ときに飲みつぶれながら、ときに激しく議論しながら、それでも作品を作り続けるエネルギーが伝わってきて、観ている方も体力がいる。井浦新の若松孝二は映画監督というには少しスマートすぎる感があったが、反権力、反体制の人であり、感性の人であるという特徴はよく出ていたと思う。好演である。
映画が終わって外に出ると、日曜日の正午すぎの新宿三丁目は、微妙に怪しい雰囲気である。休みの店や準備中の店、営業しているのかわからない店がそこかしこにあって、気だるそうに道を往く東南アジア系の観光客、急停車した車から降りて走り出す黒人、腕組みをしてこちらを睨む女装の人、大声で電話をしているチンピラなど、凡そ日曜日の午後らしくない人々が闊歩している。なかなかいい感じである。
予告編を観たり、このアプリで
何となく、あらすじを読んで映画館に足を運ぶワタクシ。ハズレもあればアタリもある。今回はアタリの方でした。門脇麦さんが本当に良かったかな。紙を丸めて、ゴミ箱や壁に投げ付ける、というのは昭和な表現なんだと変な発見をしました。
興奮が止められない
最後のエンドロールが流れてきたとき、悲しいとも感動とも違うものを感じました。
興奮したが正解なのか、悔しいの気持ちもあるかも、自分でも説明できない気持ちだけど、やっぱり映画はすごいなぁ
60年代カッコいいなって思う。
白石監督作品初観賞
高評価作品を多数輩出されてる白石監督ですが今回監督作品初観賞しまして高評価の理由がわかる気がしました。演出テクニックの上手さも去ることながら人物描写の才能も非常に卓越した物をお持ちで、正直、井浦さん、山本さん、高岡さんしか知ってる役者さんがいない中で(門脇さんも初見でしたm(__)m)間違いなく全てのキャストの皆さんがその演じる役柄が印象に残る様な魅力的な演技をされていて、一つ一つのシーンが瞼の底に焼き付いて未だにドキドキで感動覚めやらずと言った感じです。白石監督の他作品も絶対観たいと思いましたし、若松監督の作品も又改めて魅力を再発見出来る観方が出来るんじゃないかなと楽しみが増えた感じです。
いやぁでも今頃、若松監督や恵さん、大島渚監督や赤塚不二夫先生たち、天国で私たちを見て「あいつらまだまだ[ぶち壊し]が足りないぞ。何やってんだ!」って言いながら煙草やお酒楽しんでらっしゃるんだろうな☆☆☆
映画に賭けた人々。
若松孝二監督の映画は、晩年の一般映画しか知らない。彼の映画は並んだタイトルだけ見ても先鋭的で、いまの時代、ちゃんと上映されるのかどうかわからないほどだ。
そのような映画の製作現場は、予想通りエネルギッシュで、なぜ吉積めぐみ(門脇麦)はそんなところへ迷い込んでしまったのか。
そう映画では、めぐみは迷い込んだように見える。
1960年代後半、男社会に身を投じた女性が、蔑まれることなく、他のスタッフと同じように扱われていることに驚く。女だから、というスタンスが誰にもなかった。
それでいてあのような映画を作っていたのだからますます驚く。
精力的に作品を発表し続けている白石和彌監督。自分のルーツを探るがごとくの演出は好感がもてた。
映画作りには憧れもあるが、やっぱり苦労は絶えない。
時代の先駆者の苦悩に共感
一歩時代の先を行く社会派作品で名を馳せた若松孝二監督率いる独立系の若松プロダクションの黎明期を、助監督として入所した女性・吉積めぐみの目線で描く。正直なところ、若松監督の作品は鑑賞したことが無く、特段ノスタルジーは湧かないのだが、高度経済成長を謳歌する一方、よど号ハイジャック事件や石油危機勃発などとても騒々しかったあの頃を思い出した。最初は社会派を謳いながら、その一方で糊口を凌ぐためピンク映画も撮ると言う、ある意味とても現実的な路線を進んでいた彼らであったが、徐々に過激な政治集団と交わって変質して行く様は、生活が日に日に豊かになる一方で、その波に上手く乗り切れなかった人々の鬱屈した心理を映すようで興味深い。そしてまだ今のように女性の社会進出が進んでいなかったあの時代、男社会の映画プロダクションに飛び込んで、下積みに耐えながら短い青春を駆け抜けた吉積のぞみも、やはり時代の先駆者であったように思う。そんな彼女を生き生きと演じ切った門脇麦がとても光っていたように思いました。
映画制作への情熱が伝わった!
知識0で観ましたが面白かった。
若松プロのファンとして観たらもっと面白かったのかな?
井浦新さん演じる監督ご本人に寄せてるであろう演技が、すごく面白くて、監督ご本人を知らなくても上手だと感じました。俳優さん皆さん上手いです!
門脇麦さん演じる恵の感情がなんだか見えづらくて、複雑で、切なくやりきれない気持ちは鑑賞後どうしても残る。けど、そこがこの作品の良さなんだと思った。
恵を始め、若松プロの皆さんに会いたくなる。
会社が今も残り、語り継がれるのは、作品を作りたいと思う恵さん、信頼ある監督始め、スタッフの熱き情熱と行動力。観てる側も熱くさせられる。
昭和な映画
星🌟🌟🌟🌟テンポよく最後まで楽しめました 狐狼の血の監督なんですね あの作品も面白かったです❗実話に基づいてるとの事ですが衝撃的なラストも事実なのでしょうか?本当ならちょっと悲し過ぎます😢作品的にはすごく面白かったです
止められない
誰にも止められない
これはクロニクルではない。
いつも何か敵を空想し、見えない敵と空回りするように戦っていた自分を思い出す。
自由は逆に、自分を不自由にする。
言葉は最大の武器だ。
だが、自分の言葉も自分自身を縛り付ける鎖のようだ。
雁字搦めで、いつ果てるともない戦いを続けるだけだ。
ただ、悲壮ではない。
その先に何かが待っていると信じているからだ。
こんな戦い、誰も止められないのだ。
止められるのは自分だけだ。
これはクロニクルではない。
今も昔も変わらない。
そして、明日もきっと同じなのだ。
めぐみの死は悲しくとも、何かに立ち向かう若者たちは爽やかだ。
笑える場面もあって楽しかった。
白石和彌監督が誰よりもこの時代と物語に憧れている
スクリーンから熱が迸る傑作青春映画。若松プロのことは何も知らない自分でも最高に楽しんだ。門脇麦を主演に据え、繰り返される「お前は何が撮りたいんだ?」という問い。女性神話のゴールとして、彼女が「自分=真に撮りたいもの」を見つけるのだと思っていたら…驚いた
若松プロにおける両親的な立場の井浦新と山本浩司が不在の時に、若手だけで語り合い、夜中のプールに潜る(『卒業』オマージュ?)一連のシークエンスが、門脇麦にとって子供でいることを無条件で許される最後の時間だった。結果的に大人になることを拒否する彼女が繊細に描かれる様に心を打たれた
井浦新が完コピで演じているという若松孝二の魅力もよく表現されていて、彼を中心に彼等の時代と物語が動いていたんだろうということが感じられる。それはきっと白石和彌監督自身が誰よりもこの作品で描かれるものへの憧れを抱いているからではないか?と思う。そりゃ面白くなるよな
エネルギーと凄い刺激をもらいました
若松監督の事も若松プロの事もよく知らなかったけれど、存分に楽しめ、刺激を受け、エネルギーをもらい、すぐにもう一度観たくなった。自分が知らなかった時代と世界。でもすんなりと入り込めた。井浦新さん目的で観たが、回りのあまり有名ではないキャストの方々も皆さん本当に素晴らしかった。若松監督、若松プロへの愛が溢れている白石和彌監督の傑作だと思う。
ピンクのクロサワ 若松作品を見直そう!!
戦後、映画界を疾風の如く駆け抜けて行った奴らがいた。ピンク映画界の黒澤明とその仲間たち若松プロ集団。
世の中何もかも、あけすけな時代に片手にたばこ、片手に酒で映画を肴に生きている奴らが羨ましくみえた。
作品中の門脇の踊りっぷり脱ぎっぷりには、感動した。
若松孝二、の、門下生の青春
というか、めぐみという助監督の青春の話なのがタイトルからまったく伝わらないのは惜しい。更に、この女の子が飛び込んできた初期衝動が描かれてないのが惜しい。白石監督は連続して映画自体が懐メロ回顧趣味みたいなのにのまれてる。
どんなに若松孝二が凄いのか、映画そのものをそのまま見せると訳にはいかないので観た側の興奮を伝える、その役はめぐみだったはず。受け手から送り手へ、そこから去ってく人々の話なのに、と。
めぐみが素晴らしかった
昔の雰囲気を醸し出しつつ、在りし日の情熱を現代に蘇らせようという映像的な目論見を感じた。無理に完全な昭和の日本を作り出そうとせずに、今ある中で過去を再現しているような印象─ひょっとしたら半端とか時代考証での違和感などを覚えかねないけれど、個人的には当時の熱気をダイレクトに感じるような気がして、凄くハマった。
あの時代を描いた映画というのは、とかく暗くて陰湿なものを感じるけれど(─偏見かもしれないけれど…)、この作品に関しては非常に清々しいものを感じたし、不思議と心から楽しめたような気がする。
ピンク映画の制作現場を扱い、裸も絡みもたくさん出てくるけれど、映画製作の情熱しか感じなかった。
その最たる要因は、井浦新と門脇麦の演技と演出だと思った。彼女たちの演技一つ一つに喜怒哀楽をくすぐられた。
めぐみで始まりめぐみで終わるこの作品は、まさに門脇麦の代表作になるのだろう。素晴らしいの一言。
描かれていることがどこまで本当のことか分からない。でも全てに真実味があり、いいことも悪いことも網羅されている全ての事柄に、作り手の熱い愛情を見て取れた。
凄く面白くていい映画だなーと心底思った。
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