「60-70年にあった熱量が青春に乗る、今に通ずる若者の痛み」止められるか、俺たちを たいよーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
60-70年にあった熱量が青春に乗る、今に通ずる若者の痛み
ずーっと温めていた作品。ネトフリでライン落ちする前に駆け込み鑑賞。エンドロールでブワッと涙が溢れた。嗚呼、青春の日々よ。
吉住めぐみは人生を"駆け抜けた"と言えば爽やかだが、死を迎えた彼女を形容するには、"全うした"と言うのが正しい気がする。時代は全共闘の真っ只中、かといって彼女は興味がなく、映画の熱狂に引きずりこまれるようにして若松プロダクションの門を叩いた。
有り余る程の情熱が映画づくりに精を出す。その青春はあまりにも大胆で敏感で儚い。プカプカと浮かぶタバコの煙に浴びるように交される酒。しかし、そこでかく汗が経験として素直に開くとは限らない。何者でもなれない、自分との葛藤が心を蝕んでいく。増してピンク映画から社会に問いかける立場のプロダクション。「女性を捨てた」と自らを例える程、生きにくい場に身を投じたが故の苦悩かと思うと苦しい。
そんな姿をありありと演じる門脇麦はやはり魅力的な女優さん。プールに身を投じたり、まっすぐに恋をする女性らしさもありつつ、不器用ながらに若松プロダクションの一端を担う姿が勇ましく思える。また、若松孝二を演じる井浦新も風格があってカッコいい。当時の姿を知らない自分でもその熱量に刺激され、夢中で何かを成し遂げたいと思った。
白石和彌監督が三島由紀夫を演じたり、藤原季節が『火口のふたり』を撮った荒井晴彦を演じたりと、実在する人を演じるリアリティも面白かった。これから定期的に観たい作品。
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