「時代の先駆者の苦悩に共感」止められるか、俺たちを ホワイトベアさんの映画レビュー(感想・評価)
時代の先駆者の苦悩に共感
一歩時代の先を行く社会派作品で名を馳せた若松孝二監督率いる独立系の若松プロダクションの黎明期を、助監督として入所した女性・吉積めぐみの目線で描く。正直なところ、若松監督の作品は鑑賞したことが無く、特段ノスタルジーは湧かないのだが、高度経済成長を謳歌する一方、よど号ハイジャック事件や石油危機勃発などとても騒々しかったあの頃を思い出した。最初は社会派を謳いながら、その一方で糊口を凌ぐためピンク映画も撮ると言う、ある意味とても現実的な路線を進んでいた彼らであったが、徐々に過激な政治集団と交わって変質して行く様は、生活が日に日に豊かになる一方で、その波に上手く乗り切れなかった人々の鬱屈した心理を映すようで興味深い。そしてまだ今のように女性の社会進出が進んでいなかったあの時代、男社会の映画プロダクションに飛び込んで、下積みに耐えながら短い青春を駆け抜けた吉積のぞみも、やはり時代の先駆者であったように思う。そんな彼女を生き生きと演じ切った門脇麦がとても光っていたように思いました。
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