「さようなら、チワワちゃん… そして、ありがとう!」チワワちゃん 野々原 ポコタさんの映画レビュー(感想・評価)
さようなら、チワワちゃん… そして、ありがとう!
故人の残影を追った巡礼の物語。
わたしは、以前お世話になったヒトが
よく足を運んだと生前におっしゃっていたお店や
お気に入りだったという場所を巡って
歩き渡ったことがありました。
巡っていくにつれ、故人への愛情や感謝の念が
より強くなっていくのを感じましたし
いっそう身近に思い、そして再度
涙したりもしました…
さて、本作『チワワちゃん』は
《千脇 “チワワちゃん” 良子》と接点のあった
知人の述懐を、ひとつ、ひとつ、〈数珠繋ぎ〉していく
【対話による巡礼】のお話でした。
自分がまだ、
「何者であるか?何者になろうとしているのか?」
判らない若者たち…
「時間はあるが、やりたいことは見つからない…」
でも体力だけは有り余っているもんだから夜毎
その鬱屈した思いを込めて力いっぱい
バカ騒ぎを繰り返してしまう…
門脇 麦さん演じるミキはそんな最中に
身を置きながらも、俯瞰してどこか冷めた様子で
眺めていました。そうしてストーリーテイラーであり
インタビュアーでもある“ミキ”の視点で物語が進みます。
この作品は、そんな若者たちのエモーショナル表現を
近年よく言い回わされる【プロモーションビデオみたい】な
奇抜でケレン味のある映像で
(そこがこの作品の評価が分かれるポイントかな?)
終始、飽きさせない構成でなされていますが
急にストンと静寂が訪れる…
そのメリハリが、わたしには心地良く
観賞に浸れました。
「結局犯人、分かる思たら分からへんのかーいっ!」
とモヤっとされた鑑賞者もいると思いますが
本作の主題はそこではありません。
劇中の冒頭と末尾での印象的な【モノローグ】。。。
その【モノローグ】がすでに主題を述べている訳で
あとはそれをなぞっていくだけの
実に、潔いよい作りでした。
それは何よりルック(画作り)に
自信があったからなのでしょう。
それで副題と言いますか
この作品にメッセージを見出すならば
《バラバラ殺人事件》
《シンガポール爆破事件》が象徴するような…
テロや内戦、自然災害から殺人に至るまで
昨今起こる様々な出来事…
それをわたしたちは、どこか遠い場所で起こる
よもや 《 自分たちには関係ない事 》 と冷めた
視点で傍観者になってしまってはいないだろうか?
若者が集まって騒いでいるダンスシーンは
【現実のなかの非現実】である象徴の現われであり
「現実で起こっている問題は、
地続きで自分たちにも繋がっているんだぞッ!」
「いつまでも無関係でいられる訳じゃぁないんだよッ!」
という警鐘の音が…
わたしには聞こえたような気がしました。
成田 凌さん、最ッ低!そして最ッ高!
村上虹郎さん、今回わたし一番注目して観てた!
劇中でかぶってた帽子が欲しい!(似たの買いました♪)
浅野忠信さんの存在感たるや!
いっぺんに空気が変わった!
しかも作品におけるキラーワードを口にしてました。
門脇 麦さん、前主演作『止め俺』の役柄と同じく、
繊細な表現で、揺れ動く女性の心情を見事に
演じていました。タバコ吸う所作、前から好きよ!
そしてなにより吉田志織さん!
チワワちゃんさながら天真爛漫な彼女の今後に期待!
評価が別れそうな作品は、星☆を多めに献上しがち…
それはわたしの自意識 ≒ 美意識がそうさせるのですが、
今回は、元より原作者《岡崎京子センセイ》信者であり
(麦さん、センセイに似てる!?)
そして同じくお慕いしている
「性と暴力そして革命」のスローガンを掲げた
《故・若松孝二 監督》に畏敬の念を捧げると共に
そしてなにより、この両雄を、わたしの中で融合し
結びつけてくれた門脇 麦さん、二宮 監督に
感謝の意を込めまして…
よって、“ R指定 ”も必要悪の範囲内!
文句無し!新年早々わたしの中でのベスト級!
星☆5つを捧げます!!
いろんなサブカル作品を自分の中で関連付け
〈数珠繋ぎ〉していく作業は楽しいものです!
そして【新コーナー】
チワワちゃん名言プレイバック!!
「男同士は価値観を共有する。
男と女は距離感を共有する」
「女同士は気を使って疲れる。
男といるのは楽だけど何かを消耗する」