「Television Romance」チワワちゃん KinAさんの映画レビュー(感想・評価)
Television Romance
スマホやテレビや雑誌やポスターに沢山溢れている、可愛くて華やかでキラキラして見える女の子たちの中のとある一人のほんの一面。
自分とはジャンルが違いすぎて何考えているのか、何を求めているのか、何がそんなに楽しいのか、全然分からない。
ただ男に寄って意味もなくゲラゲラ笑うチワワちゃんに若干引きつつ、猛烈に羨ましくて妬ましかった。
すごく空っぽに見えても必ず中身はあるもので、満たされたり傷ついたりしてなぜかこうなってしまったんだろうなとボンヤリ思う。
結局彼女に何が起こったのか全然分からないのがもどかしいんだけど。気になって仕方ないな。
ラストシーンの全力疾走はチワワちゃんのイメージに合っていて好き。
人と人の関係って案外希薄なもので、彼女がどんな人間だったのか話を繋ぎ合わせても謎が謎を呼んでピンと来ない。
ただ色々な人の話を聞いているだけで「イマドキの軽薄な若者」だったチワワちゃんの意外な面が知れたり、逆に彼女と関わった人の新たな面も見えたりするのが面白い。
どれだけ人と繋がってもたまに空虚な気持ちになるのはチワワちゃんだけじゃなく誰にも当てはまることなのでは。
カツオだのキキだのとずっとニックネームで呼ばれて何かのアイコンのように動いていた登場人物たち、最後に本名と出身地とエピソードを語るムービー撮影のシーンが非常に良かった。
一人の人間としてようやく姿を見せてくれたような気がして少し心が軽くなり、なぜか泣いてしまった。
もし自分が死んだら友達や知り合いの中で誰がどう私のことを話すのか、もし友達が死んだらその人のことを私はどう話すのかなんて考えてみたり。
想像もつかないけどそれまでに少しだけ破天荒なことをしてみたい気もするな。
「お前だけなんか違う」なんて喧騒の中言われたら100%惚れてしまうわそんなの。
ガンガン鳴り響く音楽にネオンにダンス、フィルム映像にアダムとイブ、サイケデリックでハイな演出がとても好き。
体感として最高に楽しくストーリーとして最高に虚しい映画だった。
薄いといえば薄いし、これが若者のリアルと言われても困ってしまうけどなかなか楽しかった。