「女子高生版『カメラを止めるな!』」たまえのスーパーはらわた HALU6700さんの映画レビュー(感想・評価)
女子高生版『カメラを止めるな!』
吉本興業企画が2011年から全国各地で制作している「地域発信型映画」の一環であり、本作『たまえのスーパーはらわた』は、埼玉県さいたま市を舞台にし、さいたま市の魅力をPRする中編青春コメディ映画となっています。
2018年4月、第10回沖縄国際映画祭に出品されたのち、本作の上田慎一郎監督が製作された長編映画『カメラを止めるな!』の大ヒットを受け、「女子高生版『カメラを止めるな!』」との呼び声もあったことから一般上映を期待する声が高まり、2018年10月20日からの劇場公開が決定し、イオンシネマを皮切りに全国順次公開予定とされ、「地域発信型映画」としての全国上映は本作が初めての試みとなったようです。
その際には、本作と同じく「地域発信型映画」として2017年に制作された『耳かきランデブー』(群馬県前橋市が舞台)が同時上映されました。
※尚、『耳かきランデブー』は、上田慎一郎監督の妻のふくだみゆきさんが脚本・監督を務め、上田慎一郎さんも助監督として参加しています。
劇場公開終了後、2019年8月28日発売のDVD『上田慎一郎ショートムービーコレクション』の<DISC2>の収録タイトルの1つとしてソフト化されることとなった作品です。
私の場合には、あいにくと劇場公開時には、鑑賞する機会が取れず終いだったので、昨年(2019年)の夏に発売され購入しておいた『上田慎一郎ショートムービーコレクション』のDVDの中のDISC2の一篇として、今回が初鑑賞でした。
率直な感想としましては、
期待をせずに観たためか、思いの外、面白かったです。
先ず、脚本がしっかり練られていている点が良かったですね。
今回の作品も、トリッキーな演出に頼ることもなく、正攻法の中編映画である点も、私は評価したいですね。
安っぽい自主制作のスプラッター映画を撮ってる埼玉県さいたま市浦和区に住む映画監督志望の女子高生のお話しなのですが、主人公の浦野玉恵(白石優愛さん)に埼玉県さいたま市のPR映像制作の依頼が舞い込むのでしたが、最初は全く乗り気でなかった玉恵でしたが、内容は何でもいいと言われたことから俄然やる気になり、「さいたまスーパーはらわた」という、さいたま市のスプラッター的な血まみれの映像を撮ろうと画策するのですが当然ながらあえなくボツ。
そんなスプラッター大好き少女監督の彼女の映画への拘りが強過ぎて、自分勝手過ぎるために、周りの人が次第に離れていって、最後まで付いてきてくれていた親友の栞(工藤綾乃さん)にまで見放されて、ドン底の境地に突き落とされてしまう。
そこからある人を介して「これじゃ駄目だ」って主人公が気付いて、まず親友との関係を修復して、そして色んなことが上手く回っていくという基本的なお話しの流れがしっかりしてるのが良かったですね。
その上で、さいたま市の合併した3地域同士が、制作の話し合いの場では、「浦和のウナギ」、「大宮の盆栽」、「岩槻の人形」といったPRする特産品を巡り、いがみ合っている中、さいたま市の3地域の特産品の良いところを紹介するべく様々な業種とディスカッションする中で、お話しが好転して、少しずつ彼女も次第に成長していくという王道中の王道の青春コメディ映画である点も良かったでしたね。
そして、各地域の職人同士が互いに打ち解けて、上手くいくところも「これなら上手くいくわ」という案で進められていく点も、実際の監督である上田慎一郎監督と主人公の女子高生・浦野玉恵とを重ね合わせて脚本立てられているようで、感情移入してしまう点が良かったでした。
流石に、かなりのチープ感は否めなかったですが、ラストは、主人公の浦野玉恵が大好きなホラー&スプラッターを絡めながら、楽しく特産品のPR映像をまとめていて、なかなか上手い仕上がりで感心しました。
私的な評価と致しましては、
あの『カメラを止めるな!』ほどの爆笑するポイントなどは、ほぼ皆無といっていいほどなかったのですが、巷間で「女子高生版『カメラを止めるな!』」との呼び声もあったのも理解できるほど、よくまとまった青春コメディ映画として平均点以上には、よく仕上がっていて良かったと思いました。
従いまして、あくまでも個人的な見解としましては、五つ星評価的には★★★★(4.0)の四つ星の高評価も相応しい作品かと思いました。
※ところで映画のタイトルは「死霊のはらわた」と「さいたまスーパーアリーナ」とで名前を掛けたタイトルなのかなと思うと、また何だか面白いですね。