「実は、"あなたに危険が迫っています!"とは言っていない」九月の恋と出会うまで Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
実は、"あなたに危険が迫っています!"とは言っていない
人と人の出会いの多くは偶然である。"運命"と信じるのは勝手だが、不思議な偶然が続くと、そう思いたくもなる。
"恋人になるかもしれない人"と距離を縮めていくドキドキ感から始まり、失恋による喪失感、そして奇跡的な再会といったアゲサゲがたまらない作品である。
川口春奈の主演は、「一週間フレンズ。」(2017)から2年ぶり。川口ファンには、かなりの"おあずけ"である。かといってTVドラマも年1ペースなので、作品を選んでいるのか、"旬の女優"使いこなしとしては、かなり抑えぎみ。ファンのリミッターは破裂寸前である。
満を持しての王道ラブストーリー。W主演の相手は高橋一生。実年齢38歳と24歳というキャスティングは、画的には疑問だが、妙にありそうで現実的だったりもする。
設定はいわゆるタイムリープの一種だ。ただし、登場人物自身が時間跳躍をするわけではなく、起きてしまった事件を、"声"によって未然に防ぐことによって発生する事実矛盾(タイムパラドックス)をどう取り戻すか、という話。
未来から過去を修正しよう行動すると、修正し終わった未来は、過去を正す動機がなくなる。すると修正できなくなる…という矛盾だ。
オチはわかっちゃいるけど、やめられない。クライマックス展開のスピード感がたまらない。オチへの伏線は、芸術家をめざす住人たちが暮らすアパートメントという設定。小説家志望の平野(高橋一生)もそのひとりである。
実は、"こちらは1年後の未来です。あなたに危険が迫っています!"とは一言も言っていない(笑)。これは映画の宣伝文句だけだ。よーく考えてみよう。
志織(川口春奈)は写真を趣味としているが、使っているカメラはオリンパスのPEN Lite E-PL1s。2010年のモデルであり、設定において旧機種を選ぶ必要性はあまりないように思うが、こだわりだろう。電子ビューファインダー(VF-3 ?)を装着しているから、そこそこのマニアである。
脇役がおもしろい。志織の元カレ・真一役の古舘佑太郎は、フリーアナウンサー古舘伊知郎の息子である。ハマケン(浜野謙太)も出ているし、アパートメントのオーナーとして、80歳のミッキー・カーチスが頑張っている。いまなお毎年出演作がある現役だ。
ここにも川栄李奈がいる。あんまり主役を食うのはよくないが、志織の同僚役ながら、職場での会話ひとつで存在感がある。さすが。
(2019/3/2/ユナイテッドシネマ豊洲/ビスタ)