「観客をナメていませんか」劇場版シティーハンター 新宿プライベート・アイズ キレンジャーさんの映画レビュー(感想・評価)
観客をナメていませんか
確かに劇場は中年世代を中心に混雑してた。今のところ、評価の高い方も多くいらっしゃる様子。
実際、私の右隣に座ってた50歳くらいの女性(私と同じく独りで鑑賞)はオープニングとエンディングでしっかり涙を流しておられた。
だったらその分、私も好きなことを言わせてもらえる。映画に満足された方もこれは「少数意見」ってことでお気になさらず…
ネタバレするつもりはないけど、ストーリーは序盤で全容が想像できる(左隣に座ってた高校生男子2人組は、冒頭20分で物語のオチまでをほぼ看破してた)し、大きな影響ないと思うのでそのまま書きます。未見の方は少しだけご注意を。
「シティーハンター」って、極端なギャグが差し込まれる分、戦闘シーンなどでのリアリティ表現とのバランスが難しい作品だとは思うんだけど、今回の作り手にはそういう意識さえも初めからなく、「コミックだし」「アニメだし」「昭和の作品だし」「40代前後がターゲットだし」「口うるさい映画好きは観ないだろうし」「『懐かしい』って何回思わせたかが勝負だし」
…と、「どうせ客は〇〇」と根本から観客を見くびって作ってるとしか思えなかった。
いや、キャッツ・アイの三姉妹、必要でしたか?
登場させるなら、ちゃんとある程度の必然性と彼女たちならではの活躍の場を用意しないと。
香をビルの屋上に下ろすためにわざわざ3人揃ってヘリで向かい、三女の愛がタンデムでダイビングさせたあとはそれっきり。あんな危険な場所へ単身丸腰で乗り込ませる?
つまり、明らかに彼女達は「登場」のみが目的。ファンサービスと言えば聞こえは良いが「キャッツ・アイ」を知らない人はどう思うだろうか。結局、「観客が知っているだろう」という前提に全体重でぶら下がっているだけ。登場させた側(作り手)が責任を放棄していると言ってもいい。
で、香は独りですんなり会議室に行けちゃうけどあのビルの中のセキュリティはどうなってるの?
※ここ、余りにも雑な展開なので、もしかするとその辺りが大幅カットになったのかも…とフォローもしてみたりして…
キャッツ・アイの件はその特徴的な部分として挙げたけど、私は決して「あら探し」をするつもりはなくて、この作品は一事が万事こうなんだ。すべての要素が「シティーハンター世代なら・シティーハンター好きならこういうモノを見せとけば喜ぶ」という前提ありきで構成されていて、そういう喜びそうなシーンを作るために、登場人物はあまりに非合理的な行動をとり、状況も不条理に、でもゴールに対しては都合よく誘導されていく。
ストーリーは非常に薄っぺらで「軍需産業」「死の商人」といった、いかにも!な善悪感を押し通す。
「メビウス」…あんな古臭いシステムを、この時代に命がけで奪い合うとか本気で考えているの?
意見の別れる後半の海坊主の決闘シーン。
私としてはアレ自体に文句はない…というか、きっと作り手にとっては観客にツッコまれる事を見込んでの「確信犯的『シティーハンターっぽいハチャメチャ』入れてみました。」ということなんだと思う。
こういうところこそ、そんな小細工を仕込む暇があったら本編のストーリーをしっかり磨き上げろって言いたいんだ。
とてもじゃないけど、いい歳の大人がわざわざ劇場へ足を運び、時間と安くはないお金を払って観るレベルの作品にはなっていない。
テレビ特番じゃないんだから。
本当に金を取って見せる覚悟はあったんだろうか。
これもあまり言いたくはないけど、特に女性キャストの「声のツヤ感」の無さは否めなかったし、会話のテンポも全体的に悪かった。(飯豊まりえが一番上手く感じたのは、やはり年齢が大事ってこと?)
これみよがしの商品CMにも苦笑い。
全体通して、観客に対しても「シティーハンター」という作品そのものに対しても、この映画からは「敬意」がまったく感じられなかった。
ここ数年の映画界の世界的傾向として、ターゲット世代にとって「懐かしい曲で高揚感を煽る」が徹底されるのはいい。
岡村ちゃん、小比類巻、大沢誉志幸、もちろんTM…みんな私の青春時代のスターたちだ。
私の今回の2.5 個の「★」はアーティスト達に捧げているつもり。
ま、隣席の女性の様に「懐かしい!」の徹底で涙まで引き出させているなら(私にはピンと来ないが)「★」1個って訳にもいかないし。
現在、他のレビューにあるとおり、作品に対して評価の「★」を4つも5つも付けている人が結構いるのだとすれば、それは本当にありがたい事だし、その人達の感想にケチをつける気はないけど、最近は毎年話題作が登場して、日本でも映画市場に光が見えてきた気もするこの時期に、作り手がこの程度の作品を送り出して満足している様だと危険だな…とイチ映画ファンの立場として心配してしまう。
連載時から見てきた私(我々?)としては、今だからこそ、数十年ぶりだからこそ、オッサンオバサンたちのノスタルジーに媚びる映画ではなく、むしろ「シティーハンター」を知らない人達に「こんなすげぇのがあったんだ」と思わせる作品を作って欲しかった。
…という、ま、あくまで少数意見です…
コメントありがとうございます。
もちろん「あれでいいんだ」「あれがいいんだ」と思われる方がいてもいいとは思います。
ただ、同じお金を払う消費者として「あの程度でも仕方がないよね」という観客と、「もっと良い作品作ってよ!」という観客なら、私は後者でありたいのです。
『〇〇さんがいなくなったらもうあの頃のレベルはムリ』と思う様になったら、アニメーションに未来がないじゃないですか。
おっしゃることはわかります、がアニメーションディレクターだった北原健雄さん(ルパン三世第二期とシティハンターで有名な方です)が他界されてるので、当時のキレそのままというのは無理なんですよ…
あの方は安彦良和さんに匹敵する天才的アニメーターでしたので
後進の方が頑張っておられても模倣にしかならないのは仕方ない(崩すなという部分もあるでしょうし)
来生三姉妹に関してはカメオ出演みたいなものなのであんなもんじゃないですか…
言いたいこと言ってくださり感謝。神谷明さんの声がどうしてもゆっくり目で、おじさん感が否めない。仕方ないが、出来ればリョウちゃんの年齢も香の年齢も上げて演じるべきだった。キャッツアイの下りは主様の仰る通り最悪な展開。テレビで十分じゃねーかのオンパレード。DVDに特典付けまくって買わせようとしてますが、買わないよこんなん。テレビシリーズの方がずっと見ごたえあった。
個人的にはヒット映画こそ賛否両論が激しく分かれるべきだと思っているので、キレンジャー氏の意見も有りだなと感じました。
あるネットニュースではこの作品がヒットしてる要因は「ラーメン屋でラーメンを注文したら普通にラーメンが出てきたから。」と評してました。私も本日見てきましたが、なるほどその通りだと思いました。
長年寝かしていたからこその現在のクオリティと懐かしさを融合して欲しかった。どうして昭和作品のリバイバルは懐かしさメインの内容薄しの傾向なのか。全くの同意見です。
昨今の映画が見直されてるときにこのクオリティかというところまで同意見で、代弁してくれた気がしてスカッとしました。
自分も★3一応付けましたが、あれはシティハンターというコンテンツ自体の素晴らしさへの妥協点です。映画作品自体ではなく。
まさか映画の途中で、辺りの観客の様子を見渡してみたり、来る場所間違えたかなと感じてしまうとは思いもしなかっただけに、やるせなくなっちゃいましたね。
私もところどころ似たような意見のレビューを書きました。
私はいわゆる「再放送世代」で、リアルタイムで見れなかったながらも凄く放送日を楽しみにしていた者です。
それだけに今回の出来栄えにはお世辞にも満足できたとは言えませんでした。
多分キレンジャーさんのレビューは決して少数意見じゃないと思います。
(レビューってどうしても言いたい事がある時に書くことが多いので、つまんなくて興味の失せた映画に対しては書こうと思わないですしね)
例え少数でもネガティブなレビューを書くことが悪い事とは思えません。
思い入れがあるからこそ「今回は不満点がある」と言えるんだと思いますので、色々言われても堂々としていていいと思います!
長文失礼しました。
若い方からのコメント、とても嬉しいです。
…そうなんですね。
もしかすると、ヒデさんの様な今の世代の方々のほうが、いろんかジャンルの多くの作品に出会っている分、視野が広く解釈も柔軟、ってこともあるのかも知れません。
むしろ我々世代にはホッとするご意見です。
ありがとうございました。
21歳の学生です。
連載とアニメ放送には被っていないですが、以前漫画を全巻読む機会があって(父が保有)、今回映画をやるということで楽しみに観に行きました。個人的な感想としては純粋に面白かったです。現代のアニメを見て育ってきていますが、特に違和感を覚えることなくシティーハンターらしいな、と思ってとても満足できました。
現代のシティーハンターを見れた!という感じで嬉しくもなりましたが、声優の方々には違和感を感じてしまい、私も「飯豊まりえ上手いな」と思ってしまいました(笑)
なんにせよこういった昔の作品が自分の中のリアルタイムで新作という形で見れる機会があるのは若いファン層にも嬉しいことだと思いました!!
私個人(旧CHの劇場版とTVSPを思い出※比較対象として見た人間)としてですが、
こちらにかかれたレビューの感想については強く共感しました。
昔ながらのアニメシティーハンターがどの程度のものかわかりませんが、
劇場版とTVSP、原作漫画に限れば、これほどふざけた脚本などなかったし、
これを「昔ながらのシティーハンター」といわれると寡聞の身ながら困惑するばかりです。
特に漫画原作を切り貼りした露骨なキメラ脚本,
原作と乖離した登場人物の行動,過度にデフォルメされた冴羽遼と香の姿は、
あきらかに、「こうやっとけばファンは喜ぶだろ」という意図を感じ,
人物の性格と話の流れを無視したモノに、少し不快な気分になりました。
それでも、ファンムービーとしてなら許容できるのは分かるのですが、
これをのいつも通りのシティーハンターという評については、
やはり、違和感が強くなってしまうのです。
そういう評価をされる方も多いのは承知しているのですけど、どうしても。
> というかvsルパンはほぼ確定でしょう
コナン君とキャッキャしてるTV版ルパンならまだしも、
昨今の劇場版ルパンは明らかに世代交代を意識してますので
今作のCHと共演させた場合、かなりアチャーな事になりますね…。
それはそれで見たいけど。
私は★5つけましたが、仰っしゃりたいことはよくわかります。
ストーリーも陳腐だし、キャラも平凡、キャッツ・アイの必要性、昭和ノリのサムさ、新規性の無さ。
今作を普通のアニメ映画とだけ捉えれば正直たいした評価は得られないでしょう。
そこそこ見ている人なら、きっとそう思うはずです。
ではなぜ★5つけたの?となりますが、逆説的になりますが上記欠陥こそが「シティーハンター(特にアニメ版)」の当時の空気を忠実に再現しており、オールドファンに強烈に刺さったからと言えると思います。
おそらくですが、完全に現代にリビルドされた格好よくて面白いシティーハンターを制作していたら、面白いとは思うかもしれないけどここまで私には刺さらなかったと思います。
37歳にもなると、楽しかった昔を思い出したいものなのです…。
昨今昔の作品が「今風」にアレンジされたり、原作より面白くしてやるよ〜的に作られた作品に辟易している中、古参ファンが(全員は無理にしろ)求めていたものをのきちんと世に送り出せた功績は大であると感じます。
リメイク作品はこうあるべきだと、私は思います。
今回のシティーハンターは、受口を多くするためあえてコメディ要素8割ほどにしたとパンフにはありました。
私はガッツリハードボイルド系が好きなのですが、それが一般的でないことは良くわかっています。
20年ぶりで失敗するわけにもいかなかったのもあるでしょうし、それで正解だったと思います。
まず間違いなく次作が出来る状況なので(というかvsルパンはほぼ確定でしょう)、次作はハードボイルド多めのシティーハンターを作ってほしいなと私は思います。
皆さんお年ですので……オリジナルキャストで何作もやって頂きたいです。
3行くらいにしようと思いましたが、長くなってしまいました。
すみません。
いろいろなご意見が聞ける場になって私も嬉しいです。
ディスり合いにならないのはさすがみんな大人ですね(笑)
例えば、我々が小中学生当時の給食を再現して提供する飲食店ってたまにありますよね。
私達はそれを食べて、「ソフトめん懐かしい!」「ミルメーク!そうそう、こんな味だった」「これみんなで休みのコの分を取り合ったよね」と盛り上がったりします。私を含め、きっとそこまでは(興奮するポイントは様々でも)みんな同じく楽しめるんです。今作について、私も少なくとも「音楽」という部分では楽しんだわけです。
その上で「でも…これ『美味い』か?』と考えた時に、「これはこれで美味いじゃんか」「懐かしいってだけで十分ご馳走だよ」という意見と、私の様に「でも正直、今、金払ってまで食べたいレベルとは思えない」「外国人の友人を連れて来て(日本文化の紹介ではなく)『美味いから食ってみろ』とは言えないよな」という意見があるということだと思うんです。
映画の感想なんて「主観」ですから、きっとどちらも正しい。
多くの共感を頂き、なんだか対立構造を作った急先鋒みたいになってしまいましたが、私はむしろ「シティーハンター」をネタに同窓会をしてる気分になっています。
テーブルによってはケンカしてる席もあるのかも知れませんね(苦笑)
また長くなってしまいました。
こんな私の素人レビューに皆さんがご意見を頂き、楽しく拝見しています。
本当にありがとうございます!
原作はともかく、シティーハンターのアニメって放送当時からこんな感じでしたね^^;
確かに現在のアニメや映画ではあり得ない雑で大味な作りなのでそこはシティーハンターならではというか、この作品をアニメでカッチリ作ったらなんかそれはそれでらしくないかな…って感じもしますね
でもレビューに書かれてる事は正論ですね
「エヴァ」「まどか」や「千と千尋」、もっと言えば
「カウボーイビバップ」を既に体験してしまった平成生まれに対して
コレを提供してしまったのは、完全にスタッフの怠慢でしょう。
興味本位で今作を見て、CHを好きになる若者がいるとは思えません。
数年前の聖闘士CG星矢みたいなリビルド感が欲しかった。
おお、(あんな事書いた私が言えた義理ではありませんが)そういう方もいてくれるのは過去のジャンプ世代としては嬉しいです。
私のレビューが「かおりー」さんのせっかくの良い印象に水を挿してしまっていたらゴメンなさい。
アニメ、コミックス、あとは「キャッツ・アイ」「エンジェル・ハート」なんかも一応関連作品なので、興味を持ってもらえたら是非。
こちらこそありがとうございました。
20代後半、名前しかシティーハンターを知らなかったものです。
予告をみて面白そうだな〜と思って見に行きましたが、今まで知らなかったことを後悔しました。
凄く凄く面白かったしかっこよかったです。
先週みてから1週間。頭から離れず、公開記念で無料配信してるアニメを見て、そこから先はレンタル購入して見進め始めました。
往年のファンの方からすると疑問の残るものだったのかもしれませんが、新規その1を増やすきっかけになってくれたこの劇場版にわたしは感謝しています。
この根強い人気を持つシティーハンターはアニメや原作もっともっと面白いんですよね。
このレビューをみて参考になりましたし、さらに楽しみになりました。ありがとうございました。
当初、サイト内では否定派は完全に少数意見だったので「これは言っておかねば」と、要らぬ正義感から書き込んだのでが、共感頂けた方が想像以上に多くて戸惑っています…
自分が書いたとかと思う程、同意見でした。
一緒に観に行った、当時のアニメやジャンプファンの友人は
僕はこんな物に喜んでいたのか?とガックリ来ていました。
新作というか昔の名場面を焼き直して継ぎ接ぎした印象です。
私もこのレビューと同じことを感じました。
確かに懐かしさからエンディングにはグッと来ましたが、ストーリーや途中の音楽の使い方などにはあまり魅力を感じませんでした。
ひとつだけ言うなら、この評価の高さを聞きつけた「シティハンター」を知らない、加えてアニメに対して非常に目の肥えた今の若い世代が観て、「何コレ、『シティハンター』全然面白くない」って思われるのはやっぱり嫌なんですよね。
我々ジャンプ全盛期世代のセンチメンタリズムだけでこの作品を「面白い映画だ」と評する声ばかりなのは、(あくまで個人的には)ナシだと思ったので。
数十年ぶりに映画化してくれただけで十分でしょ?内容に関して、いちいち酷評しなくても良くない?
20~30年経って大人になってるんだし、とりあえず久々に新作が観れて若い頃が懐かしく、楽しい気持ちにさせられたのは事実だしね🎵