「あえてネタバレで伝えたい!」今日も嫌がらせ弁当 いくちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
あえてネタバレで伝えたい!
ネタバレをチェックすると一覧で内容が見れないのでなるべくネタバレなしでレビューを書いていますが、この作品に関してはあえてネタバレにして魅力を存分に伝えたい!
まず、主人公・双葉の思春期を怖いと思ったり嫌悪感を感じたりした人もいたようでしたが、こんなの養育現場で働いている私から見たら本当にかわいらしいもの!とつぜんのキャラ弁攻撃に「うざい!本当にうざい!」と言いながら毎日完食(笑)かわいいとしか言いようがない!卒業式の弁当なんて、縦50センチ、横1m、推定重量5㎏(もっとかな?)という不条理な弁当を渡されても「重い!」と悲鳴を上げながら持って行ったわけですよね。内心、最後のお弁当に期待しているのです。そんな姿がほんとうにかわいいですし、コミカル(この映画のおもしろさはわかっているのにやらかしてしまうところ)なわけで、そんな中、あの“卒業証書型弁当”にやられるわけです。何の前触れもなく見たら「はぁ!?」と思うしあるいは爆笑場面かとも思うのですが、今までのキャラ総出演か?とか予想していた双葉も観ていた私たちも虚を突かれ、なおかつ今まで完食していた娘をきちんと評価していた母の気持ちを知って私も双葉も号泣してしまうわけです。(映画で涙がにじむことは多々あれど、ぶわっと溢れたのは久しぶりのことでした)
この映画は八丈島という環境や母子を囲むまわりのキャラたちも感動へと導くすばらしいものになっています。長女・若葉は、自身も家庭を任されたりしてひょっとしたら反抗期を経たのかもしれず、それをくぐって母の思い、妹の思いを理解して、その間でお互いの気持ちを受け止めてひょうひょうと言葉を交わす、とても重要な役割をこなせているのでしょう。キャラ弁を見て盛り上がるクラスメイトや思わせぶりな幼馴染も、八丈島という限られた空間でずっとともに育ってきて、家庭環境とかも知っている間柄だからこそ、茶化したり、変に「親マジうざいよね」などと肩入れしたり、(妬みから)ディスったりされずに、一緒になって今日はどんなキャラ弁か期待して写メ撮って、書かれているメッセージに対して考えたり「食べた食器を片付けないのは良くないと思うぞ」と意見したり等、“こんなの楽しんじゃえよ”という雰囲気を出してくれているのでしょう。双葉の完食も、彼らの雰囲気作りがあってこそだと思います。なので彼らの勘違いからの告白失敗も、彼らのせいにはできず、自分の中で消化するしかなくてそこは苦しんでしまうのですが…。
そんなこともあって、双葉の最後の手紙は、ずっとそう思っていたことを知ってましたよ、という気持ちになっていて、ここは泣けるというより、ほっこりしていました。
子育てに人それぞれ悩むと思うし、やり方もわからず途方に暮れるかもしれませんが、大事なのは思い続けること、もっと距離を取って見守っていたとしても、全力でそれをすれば不正解ではないし、今回のようなウザい方法も、思いを切らさなかったことが良かったと思います。というか、そもそもこの子は母への感謝を切らせたことがなかったんじゃないでしょうか?
養育にかかわる仕事をするものとして、たくさんの思いを受け取ったので長文になりました。いい映画をありがとう!