「篠原涼子の愛らしさと、芳根京子の意外な可愛らしさ」今日も嫌がらせ弁当 Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
篠原涼子の愛らしさと、芳根京子の意外な可愛らしさ
篠原涼子(45歳)。アイドル出身で、この歳まで主役を張れる稀有な女優のひとりである(多くは20代で使い捨て)。実年齢より若く見える美貌と、愛される親しみやすい空気感が魅力である。
日本レコード大賞(ミリオンセラー歌手)だけでなく、昨年の作品「SUNNY 強い気持ち・強い愛」(2018)、「人魚の眠る家」(2018)などで、日本アカデミー賞(優秀主演女優賞/優秀助演女優)の栄誉も加えた。
シングルマザーの母親と、まともに口もきかない反抗期の娘。同級生の前でクールに振る舞う娘に、子供っぽいキャラクター弁当を持たせるという、"嫌がらせ"で始まった。
食べ残したら負けを認めることになると考える娘の意地との張り合いは、高校3年間を通して繰り広げられる。やがてキャラ弁そのものが、母娘の会話の代わりとして、コミュニケーションツールになっていく。
キャラ弁をめぐるブログ・エッセイからよくぞここまで話をドラマティックに膨らませた。脚本を原作者に持ち込んで映画化交渉をしたというエピソードも納得である。
娘の卒業式と、八丈島から本土就職への旅立ちの2段階泣かせという、圧巻のクライマックス。
篠原涼子の主演で良かったという印象と同時に、長女役を松井玲奈、そして反抗する次女・双葉を芳根京子が演じ、しっかりと支えている。
芳根京子は「累」(2018)のオトナっぽいイメージがあったが、まだ22歳。高校生役は結果オーライどころか、むしろ可愛い。ちなみに篠原涼子のドラマ代表作「ラスト♡シンデレラ」(2013)に、実は芳根京子は出演している(親友の娘役)。
監督の塚本連平は、知英(ジヨン=元KARA)主演のコメディ「レオン」で軽快な笑いを演出している。今回もキャラ弁のCGアニメーションや、弁当キャラクターとなる少し懐かしいお笑い芸人のギャグを絡めて、コミカルなノリを持ち込みながら、ドラマティックなエンディングでメリハリをつけている。
映像は、八丈島の大自然をとらえているものの、アスペクトはビスタ、音声がフロント3chのみ(またはサラウンド感がまったくない)。製作費の関係かもしれないが、ロケーションをもう少し活かしてほしい気もする。
(2019/7/5/TOHOシネマズ日比谷/ビスタ)