教誨師のレビュー・感想・評価
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漣さんの表情が頭から離れない
漣さんの最後の主演作という情報だけで観ました。
教誨師になってまだ半年という設定。
6人の死刑囚と向き合い、話に耳を傾け、心を安らげるはずが。
教誨師より死刑囚方が何枚も上手で。
その発言に喜怒哀楽する表情が、さすが「300の顔を持つ男」の漣さんです。
8割以上が面会室を舞台にしているのも興味深い。
限られた空間や時間の中で、話が進んでいくので。
教誨師と死刑囚の会話で、どんな罪を犯したのかなどを想像していくだけなのが、シンプル。
6人の死刑囚役の俳優さんたちが、実に個性的で渋い。
音楽もほとんどない。そういうのは最近少ないかも。
神の御心をもってして、人間は変われるのだろうか。
いやきっと変わることはできなくても、安らかな心を保てるよう。
一生懸命接しているのが、何とも複雑な気持ち。
ラストも「??!!」でびっくり。
いろんな場面での漣さんの表情が、頭から離れない作品でした。
健康相談員は見習ってね
受刑者に道徳心の育成や心の救済に努める職業:教誨師。6人の受刑者に接する教誨師のお話。
殆ど留置所内での2人の会話。
会話の内容に面白味を感じなければ、つまらなさ爆発だろう。
私にもちょっと荷が重過ぎました。
理由は、
私、神様を信じていない。
私、相談を主とする職業人が大嫌い。だから。
神様や死刑などの件は書きません。それは人間が考えた事だから。
相談員が嫌いな理由として、最近特に健康の事がうるさくなった世の中なので、健康相談員と言う人間がやたら存在する。
健康相談員も嫌い。その理由は最終的に行き着く先が決まっているから。
肝臓悪ければ、酒辞めなさい。
太っていれば、運動しなさい。
タバコ吸っているなら健康害するので辞めなさい。
決まり文句が決まってるし、早く決まり文句も出る為、親身になって相談役になっていないのも分かるし。
相手の立場を分かり、相談方法を考え、色々な方向性を考えるのが相談員ではないのか?
この映画は教誨師だけの話では無く、相談に関係する全ての人間に関連する映画だと感じた。
人に語りかけるとは何か?親身になるとは何か?
理由も色々あり、人の心を引き出すとは何か?
人によっては長い時間かけて接しなければならない。
相談に乗る自らも裸にならなければならない時もある。
ここは見習うものがあった。
大杉蓮さん最後の演技、しっかり拝見させて頂きました。
拘置所の中の群像劇
星🌟🌟🌟🌟大杉漣さん最後の主演作品だと言うので観たのですが… 前半はまったりしていてちょっとつまらなかったのですが後半大杉漣さん演じる主役の過去が明かされた所からストーリーも急展開で進んでいきラストまで釘付けでみてしまいました❗みんな登場人物が心に闇を持っている人たちで皆さん演技が上手くて全体的にみれば面白かったです❗前半つまらなかったのは教誨師と言うことでキリスト教の型にはまったことしか言わなかったからでたぶん後半への伏線になってたと思います❗あと死刑囚の高宮役で玉置玲央さんが出てましたがラスト間近凄くいい演技されてました❗舞台では黒木華さんと共演されてたりして有名だそうですが大杉漣さん見る目がいいですね❗これから映画やTVでも活躍しそうな俳優さんでした❗
生命の意義に深く切り込む
対話で紡ぐ物語、対話で導く真理
全編を通してほぼ、密室で繰り広げられる会話場面。
観た人の中には退屈だと思われた方もいらっしゃると思います。
ですがわたしはむしろ、「もの凄いものを観た」と思うほど、
演者たちの一挙手一投足に集中して観ることができました。
『ソクラテス式問答法』という対話法があります。
〈 対話によって相手の矛盾・無知を自覚させつつ、より高次の
認識、真理へと導いていく手法 〉の事を指すんだそうです。
対話によって、死刑囚たちの心の闇に、わずかでも一筋のひかりを灯せる事ができたなら、執行され魂となった彼らは等しく安らぎを得る事ができるだろうか?
そのことに尽力した牧師・佐伯(大杉漣さん)がそんな彼らの闇を見つめながら実は、佐伯自身が一番心に闇を抱えている事を認識し受け止めていったのではないのでしょうか?
わたしが今年観た映画のなかで一番、あとからじわっときました。
大杉漣さんが最期に私たちに出した『人生の宿題』みたいな
作品だと思いました。
見終わってキャッチコピーを見て、「んっ?」と。
斬り込んだ映画でした。
大杉さんがもう「死の側」にいらっしゃることで、また新たな意味合いが生まれてしまっているとも思います。いや、悪く言っているわけではありません。
大杉さん、なぜこの映画を作りたかったのでしょうか。本人からぜひ聞きたいのですが……。
ただ…、あのスペースだけの映画でここまで思わせることがあるとは、と感じていたのですが、キャッチコピーを見て、何を考えていたか忘れてしまったというのが本音。
「『なぜ生きるのか』という問題提起の解答を本文から探してね」という中学生の国語のテストの一問のようなものがメインテーマではないような気がします。強烈な生の物語……?
これは大杉さんの本望なのか………?
まぁいいや。
強烈な会話劇。ここから我々が何かを感じとるのです。
追伸:光石研さんのお気持ちを考えたら、開始早々涙が……ということで「泣ける」
深み
教誨室の外側へ
この映画のキーワードを挙げるならば「霊性」だろう。
6人の死刑囚たちと、大杉漣演じる教誨師の佐伯との密室の会話劇。
ほぼ全編で本作の舞台となる教誨室には霊の気配が漂う。
大杉漣(エグゼクティブ・プロデューサーとしても名を連ねる)が急逝した、ということも相まって、なのは事実だけど。それを差し引いても、本作には、いまはもうこの世にいない死者の存在が強く感じられるのだ。
死刑囚ということは、全員が人を殺している(はず。厳密には死刑となる犯罪は内乱罪などもある)。
誰かを殺したから、彼らはそこにいる。
そして佐伯にも事情があった。彼もまた、その事情により牧師を職業に選び、ここに来ている。
死者たちに招かれ、出逢った死刑囚と教誨師。
そこに死者の気配が漂うのは必然であろう。
そして、この映画に登場する教誨室は不自然な形をしている。なぜか長い三角形をしているのだ。そのため、佐伯を捉えるカメラの背後には、いつも暗がりが映る。奥行きのある暗い空間が、何かの存在を思わせる演出が効いている。
そして本作は、「国家による殺人」とも言える死刑制度についても、大いに考えさせられる。
物語のスタートでは密室劇だった本作だが、やがて少しずつ「部屋の外」が映画に登場してくる。
始めは外の天気。やがて、佐伯の過去。そして死者たちが、スクリーンを侵食してくる。
それとともに、教誨師を務める佐伯の言動も、徐々に制度や枠組みの中だけでは抑えきれなくなる。
ラストに、ようやくカメラは教誨室、そして拘置所さえも出て、外の景色を捉える。
命という人間の根源と、法という国家の基盤が交差するのは、拘置所の中だけではない。私たちの日常とも繋がっていると感じさせるラストである。
大杉漣さんだったから重みがあった。
死刑囚と教誨師ってこういう感じなのかと
きれいごとではない世界
重苦しさのなかに一筋の光も
希望
大杉さんの遺作に相応しく、生と死について深く考えさせられる作品!
私は、個人的に教誨師と言う職業に凄く興味が有ったので、この作品とても気に入りました!
ですが、本作を自分は好きだから、みなさんに、どうぞ観たら良いよとドンドン薦められる様な性質の作品でも当然無い訳です。
決して万人向けの作品ではないのですが、教誨師の行う仕事内容を判っていて、尚本作を観られた方々はおそらく、私同様にみなさん満足して、映画館を後にする事が出来たのではないだろうかと想像していますが、どうでしょうか?
主人公の職業上、映画の95%は教誨師と死刑囚との1対1の会話が続くわけです。
映画では、死刑囚が6人も登場するので、それぞれの受刑者に個性を持たせて描いていれば、観客は飽きずに楽しめるだろうと言う事でも決して無いです。
確かに本作では、なるべく観客が飽きない様な工夫は施されてはいましたし、多くの場面で笑いが出るように作られていました。でも所詮は塀の中の人々の言い分を描いている事なので、一般の観客である我々がそう簡単には、彼らの話に感情移入すると言う事も中々困難です。
そこで当然、観客の殆どの人達は自然と大杉さんの演じる教誨師に自己を投影する事になる。
そうするともう自然と劇中の話の総てが他人事ではなくて、自分に投げられた直球に変化して来るから不思議ですね。
作品の中で交わされた会話の総てが自分へ語られた言葉になる。
どんどん会話の世界に引き込まれていく事になるのです。
すると、カメラが固定されていて変化に乏しい筈の画面を観続けていても、決して飽きません。
更に、教誨師が対峙する様々な死刑囚との会話の中で生まれる彼の葛藤や心理的な変化、やがて明らかになる教誨師の抱える苦しみも、気が付くと観客も追体験しているような錯覚になります。
何だか、急逝された大杉さんが、初めてプロデュースしてまで、本作を撮りたかったと言う気持ちも迄も理解出来る気がしてくる。
本作は映画ではあるけれども、物語の性質上、舞台劇であっても全く不思議ではありません。
最近公開された「累」も舞台劇の様な要素が沢山有りましたが。本作には「累」の様な派手シーンは全くありません。あちらが仮に動の世界なら、本作は静の世界でしょう。
本作はあくまでも静かに会話だけが交わされていくのですが、きっと観客の心の内は静の世界から動の世界へと大きく揺さぶられる事になったと思います。
この秋じっくりと、自分の感情を見つめて過ごしてみようと考えておられる方には、本作は最高のプレゼントになるのではないでしょうか。
そしてこの作品のラストがとても効果的な終わり方で、とても気に入りました。
是非、御一人で過ごすお時間が有ったら本作観て欲しい気がします。「何だ、結局お前は本作を薦めているだけで、これはレビューでも何でもないじゃないか」と思われるでしょう。でもやはり私は本作の世界を堪能して欲しい!あなたにもこの死刑囚たちに出会って欲しい。それが本作に触れた私の正直な気持ちです。
大杉さんの早過ぎる死を悼み、ご冥福を心からお祈りします。
いやぁ,こういう趣旨での1人1人は難しいんとちゃうの⁉︎
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