教誨師のレビュー・感想・評価
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【心に染み入る作品。静かなトーンでの会話劇でここまで魅せる作品を作り上げ、演じられた大杉漣さんに頭を垂れるしかない。】
 教誨師:矯正施設にて、被収容者の宗教上の希望に応じ、宗教教誨活動(礼拝・面接・講和等)を行う民間の篤志の宗教家(一部、パンフレットより)
 大杉さん演じる、牧師の佐伯が教誨室で向き合い、対話を繰り返す相手は皆死刑囚。
 派手な場面はなく、映像は教誨室での教誨師佐伯と複数の死刑囚との会話が続く。
 このシーンの死刑囚役の熟達の役者さんと、大杉さんとの圧倒的演技の遣り取りに引き込まれる。
 死刑囚を演じるのは、
・烏丸せつこ(あの、カレー事件の犯人を想起させる、饒舌なおばさん、人格が破綻している風を実にリアルに演じられている)
・五頭岳夫(知能が低い感を醸し出したら比類なし)
・小川登(酒向監督の友人で普段は会社員という異色の方:逆に凄さを感じる)
・古館寛治(情緒不安定な男を演じる:安定)
・光石研(ヤクザの親分の虚勢と脆さを巧みに演じる:安定)
・玉置玲央(秋葉原の事件犯を想起させるが、この方の演技にはとにかく驚いた。必見の演技である。)
 を相手にした、密室劇と言っても良い作品。
 教誨室内のほぼ固定ショットと死刑囚達との会話と所作のみで映画を成立させた大杉さんの力量に今更ながら惜しい俳優が亡くなられたという事実に愕然とする。
 大杉さん、有難うございました。ゆっくり休んで下さい。
<2018年10月7日 劇場にて鑑賞>
ポイントは死刑囚じゃないよ
漣さんの表情が頭から離れない
漣さんの最後の主演作という情報だけで観ました。
教誨師になってまだ半年という設定。
6人の死刑囚と向き合い、話に耳を傾け、心を安らげるはずが。
教誨師より死刑囚方が何枚も上手で。
その発言に喜怒哀楽する表情が、さすが「300の顔を持つ男」の漣さんです。
8割以上が面会室を舞台にしているのも興味深い。
限られた空間や時間の中で、話が進んでいくので。
教誨師と死刑囚の会話で、どんな罪を犯したのかなどを想像していくだけなのが、シンプル。
6人の死刑囚役の俳優さんたちが、実に個性的で渋い。
音楽もほとんどない。そういうのは最近少ないかも。
神の御心をもってして、人間は変われるのだろうか。
いやきっと変わることはできなくても、安らかな心を保てるよう。
一生懸命接しているのが、何とも複雑な気持ち。
ラストも「??!!」でびっくり。
いろんな場面での漣さんの表情が、頭から離れない作品でした。
健康相談員は見習ってね
受刑者に道徳心の育成や心の救済に努める職業:教誨師。6人の受刑者に接する教誨師のお話。
殆ど留置所内での2人の会話。
会話の内容に面白味を感じなければ、つまらなさ爆発だろう。
私にもちょっと荷が重過ぎました。
理由は、
私、神様を信じていない。
私、相談を主とする職業人が大嫌い。だから。
神様や死刑などの件は書きません。それは人間が考えた事だから。
相談員が嫌いな理由として、最近特に健康の事がうるさくなった世の中なので、健康相談員と言う人間がやたら存在する。
健康相談員も嫌い。その理由は最終的に行き着く先が決まっているから。
肝臓悪ければ、酒辞めなさい。
太っていれば、運動しなさい。
タバコ吸っているなら健康害するので辞めなさい。
決まり文句が決まってるし、早く決まり文句も出る為、親身になって相談役になっていないのも分かるし。
相手の立場を分かり、相談方法を考え、色々な方向性を考えるのが相談員ではないのか?
この映画は教誨師だけの話では無く、相談に関係する全ての人間に関連する映画だと感じた。
人に語りかけるとは何か?親身になるとは何か?
理由も色々あり、人の心を引き出すとは何か?
人によっては長い時間かけて接しなければならない。
相談に乗る自らも裸にならなければならない時もある。
ここは見習うものがあった。
大杉蓮さん最後の演技、しっかり拝見させて頂きました。
拘置所の中の群像劇
星🌟🌟🌟🌟大杉漣さん最後の主演作品だと言うので観たのですが… 前半はまったりしていてちょっとつまらなかったのですが後半大杉漣さん演じる主役の過去が明かされた所からストーリーも急展開で進んでいきラストまで釘付けでみてしまいました❗みんな登場人物が心に闇を持っている人たちで皆さん演技が上手くて全体的にみれば面白かったです❗前半つまらなかったのは教誨師と言うことでキリスト教の型にはまったことしか言わなかったからでたぶん後半への伏線になってたと思います❗あと死刑囚の高宮役で玉置玲央さんが出てましたがラスト間近凄くいい演技されてました❗舞台では黒木華さんと共演されてたりして有名だそうですが大杉漣さん見る目がいいですね❗これから映画やTVでも活躍しそうな俳優さんでした❗
生命の意義に深く切り込む
対話で紡ぐ物語、対話で導く真理
全編を通してほぼ、密室で繰り広げられる会話場面。
観た人の中には退屈だと思われた方もいらっしゃると思います。
ですがわたしはむしろ、「もの凄いものを観た」と思うほど、
演者たちの一挙手一投足に集中して観ることができました。
『ソクラテス式問答法』という対話法があります。
〈 対話によって相手の矛盾・無知を自覚させつつ、より高次の
認識、真理へと導いていく手法 〉の事を指すんだそうです。
対話によって、死刑囚たちの心の闇に、わずかでも一筋のひかりを灯せる事ができたなら、執行され魂となった彼らは等しく安らぎを得る事ができるだろうか?
そのことに尽力した牧師・佐伯(大杉漣さん)がそんな彼らの闇を見つめながら実は、佐伯自身が一番心に闇を抱えている事を認識し受け止めていったのではないのでしょうか?
わたしが今年観た映画のなかで一番、あとからじわっときました。
大杉漣さんが最期に私たちに出した『人生の宿題』みたいな
作品だと思いました。
見終わってキャッチコピーを見て、「んっ?」と。
斬り込んだ映画でした。
大杉さんがもう「死の側」にいらっしゃることで、また新たな意味合いが生まれてしまっているとも思います。いや、悪く言っているわけではありません。
大杉さん、なぜこの映画を作りたかったのでしょうか。本人からぜひ聞きたいのですが……。
ただ…、あのスペースだけの映画でここまで思わせることがあるとは、と感じていたのですが、キャッチコピーを見て、何を考えていたか忘れてしまったというのが本音。
「『なぜ生きるのか』という問題提起の解答を本文から探してね」という中学生の国語のテストの一問のようなものがメインテーマではないような気がします。強烈な生の物語……?
これは大杉さんの本望なのか………?
まぁいいや。
強烈な会話劇。ここから我々が何かを感じとるのです。
追伸:光石研さんのお気持ちを考えたら、開始早々涙が……ということで「泣ける」
深み
教誨室の外側へ
この映画のキーワードを挙げるならば「霊性」だろう。
6人の死刑囚たちと、大杉漣演じる教誨師の佐伯との密室の会話劇。
ほぼ全編で本作の舞台となる教誨室には霊の気配が漂う。
大杉漣(エグゼクティブ・プロデューサーとしても名を連ねる)が急逝した、ということも相まって、なのは事実だけど。それを差し引いても、本作には、いまはもうこの世にいない死者の存在が強く感じられるのだ。
死刑囚ということは、全員が人を殺している(はず。厳密には死刑となる犯罪は内乱罪などもある)。
誰かを殺したから、彼らはそこにいる。
そして佐伯にも事情があった。彼もまた、その事情により牧師を職業に選び、ここに来ている。
死者たちに招かれ、出逢った死刑囚と教誨師。
そこに死者の気配が漂うのは必然であろう。
そして、この映画に登場する教誨室は不自然な形をしている。なぜか長い三角形をしているのだ。そのため、佐伯を捉えるカメラの背後には、いつも暗がりが映る。奥行きのある暗い空間が、何かの存在を思わせる演出が効いている。
そして本作は、「国家による殺人」とも言える死刑制度についても、大いに考えさせられる。
物語のスタートでは密室劇だった本作だが、やがて少しずつ「部屋の外」が映画に登場してくる。
始めは外の天気。やがて、佐伯の過去。そして死者たちが、スクリーンを侵食してくる。
それとともに、教誨師を務める佐伯の言動も、徐々に制度や枠組みの中だけでは抑えきれなくなる。
ラストに、ようやくカメラは教誨室、そして拘置所さえも出て、外の景色を捉える。
命という人間の根源と、法という国家の基盤が交差するのは、拘置所の中だけではない。私たちの日常とも繋がっていると感じさせるラストである。
大杉漣さんだったから重みがあった。
死刑囚と教誨師ってこういう感じなのかと
きれいごとではない世界
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