「タイトルなし」教誨師 マルホランドさんの映画レビュー(感想・評価)
タイトルなし
この映画はひとりの死刑囚がグラビアページの裏に書いたある一言で幕を下ろす。
「あなたがたのうち だれがわたしに罪があると責めうる のか」
この映画で伝えたいことはそれなのだと思った。
死刑囚ということははっきりしているが、彼らが具体的にどんな罪を犯したのかはぼんやりとした描き方だと感じた。
もしかしたらボタンの掛け違いで、誰の身にも犯罪に関わってしまうかもしれないという警鐘を想像してしまうし、いつ何処で起きても不思議ではないと思った。
作品内では6人の死刑囚と対話するシーンで進行していく。
ここで興味深いのは、相手の犯した罪を掘り下げて断罪するのではなく、粛々と己の役割をこなす牧師の姿だけにフォーカスを当てて描いていくところが無駄なものがなくて良かったと思う。
また、一人の牧師が今まで信じていた価値観が、罪を犯したものに諭されて、自分の信仰心が揺らいでいくところも見応えがある。
今まで教えられたことをそのまま言うことを職務としてきたのに、実はその言葉の中で矛盾が生まれて、次第に悩むところも繊細な人間像が描かれていて良かった。
作品の展開もドライに進んでいくので緊張感を感じるし、拘置所内の冷たいコンクリートの肌触りがカメラを通して感じられる作りになっていて、見応えがある1本になっている、
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