劇場公開日 2019年1月11日

  • 予告編を見る

「守ろうとすればするほど壊れてゆく・・・」この道 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0守ろうとすればするほど壊れてゆく・・・

2020年1月15日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 かなり創作が入ってるらしいけど、二人の信念だけは永遠のもの。特に響いてしまったのは、自分の故郷にこだわらず聞いた人がそれぞれの故郷を思い出せばいいと言ったことだろうか。私事になるが、「北原白秋詩集」を高校の図書館から借りて、未だに返せずにいる罪悪感に苛まれてしまいました。あぁ、そうだよ。しかも読んでないよ。この場合の“よ”は終助詞です。ピアニッシモでお願いします。

 日本語には英語のようなリズムがないと今まで思っていたのですが、ちょっと考えが変わりました。日本語独特のリズム、特に擬音語、擬態語など、ぴっちぴっちちゃっぷちゃっぷなんてそのままリズムです。いや、もう北原白秋と山田耕筰の友情そのものがリズムを表してます!などと、頭の中にはすでに「この道」のメロディが流れてきます。あぁ、そうだよ。また、この“あ”がすでに裏拍となっていて、ブレスしようとすると咳き込んでしまいそうになります。この天才!山田耕筰。てな感じです。

 序盤で有名な小説家、詩人が集まっていたり、与謝野晶子との関係や鈴木三重吉との繋がりにも興味津々。白秋が軍歌に抵抗があるなんてのはやはり晶子との交遊から培われたものなのでしょう。そのくだりも興味深いし、生活のために軍に協力してしまった耕筰の悔しさも伝わってきます。詩集に載っていた歌に抗議するところなんて涙が出てきましたわ。

 やはり美しい童謡を聞かされると幼き頃を思い出して涙が出てくるものです。安田姉妹の歌声にも泣けるのですが、ラストのEXILE ATSUSHIの「この道」にも涙。この曲をジャズアレンジした編曲者にも感服です。また、「赤とんぼ」のエピソードも笑えるし、泣ける。

 後半は治安維持法成立に嘆く晶子、白秋も耕筰も反戦派だったりするのだが、とにかく戦争が終わるまで生き抜いて、新しい世に永遠に残るような創作活動を再開することを夢見ていたのに、現実はきびしい。今のように糖尿病も生活習慣から改善するなんて考えはなかったのでしょうね。この“ね”は終助詞です。

kossy