劇場公開日 2019年1月11日

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「日本の言語感覚と大衆歌謡に影響与えた白秋を再認識」この道 AuVisさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0日本の言語感覚と大衆歌謡に影響与えた白秋を再認識

2019年1月17日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

楽しい

知的

雨の音を「ぴっちぴっち ちゃっぷちゃっぷ」と表現する。その独創性。小学校で教わるか、親から聴かされるか、いずれにしろ様々な語彙に触れ吸収する幼少期に「あめふり」などの北原白秋作詞の童謡を歌うのだから、彼の言語センスに私たちが大いに影響されているのは間違いない。すでに確立した表現として当たり前のように慣れ親しんできたが、白秋が日本語詞の開拓者であることに改めて気づかされた。

山田耕筰と共作した「からたちの花」のエピソードも示唆に富む。ドイツ留学で学んだクラシックの楽典にのっとったメロディーを、白秋は「子供が歌うには難しい」と指摘する。そうした才人同士のぶつかり合いがあって、「この道」のような歌いやすく心に染みる童謡が生まれ、のちの大衆歌謡にも影響を及ぼしていったのだろう。

映画は白秋の人間的魅力と耕筰との交流を中心に描くが、白秋の功績を再認識させてくれる点も見逃せない。

高森 郁哉