「脳はミステリーと愛」パラレルワールド・ラブストーリー 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
脳はミステリーと愛
サスペンスやミステリー、哀しみ纏う重厚な人間ドラマの印象強いベストセラー作家、東野圭吾。
そんな中でも本作は珍しい作品に感じた。ラブストーリー×SF…?
複雑な構成の同名小説の映画化に、東野氏も唸ったという。
脳の研究機関“バイテック社”で働く崇史。
彼の友人で超エリートの智彦。
崇史が今付き合っている恋人・麻由子は智彦から紹介され、学生時代から電車越しに想いを寄せていた相手だった。
仕事も友人関係も交際も順調。
しかし、時々おかしな事が。
寝て起きる度に、麻由子が“自分の恋人”であったり、“智彦の恋人”であったり。それも、どちらもリアル。
どちらが現実か、非現実か。崇史は境が曖昧になっていく…。
二つの異なる世界が交錯し、見るこちらも翻弄されていく。
この手のジャンルのあるあるで、最初こそは本当にSFかパラレルワールドのファンタジーと思っていたが、東野圭吾の作品がそうだったら何だか拍子抜け。
“脳の研究”や“記憶”がミソ。
あんな研究、現実的に出来るか否かは別として、段々と核心や驚きの真実に迫るにつれ、結構引き込まれた。
葛藤する主人公、玉森裕太も悪くないが、やはり染谷将太のクセのある存在感は圧倒的。
ミューズ的でもありファム・ファタール的でもあり、濡れ場にも挑み、吉岡里帆も光る。
実は公開時もレンタル時もさほど興味惹かれなかったのだが…
パラレルSFの要素を纏いつつ、構成の巧みさ、“脳”というミステリー、友人との友情、運命の相手とのラブストーリー…。
これらを絡め、まあ多少消化不良感もあるものの、思ってたよりかは悪くなかった。
最近、時間とか記憶とか二つの世界が交錯するなど、そういう類いで話題になった作品と言えば、クリストファー・ノーランの『TENET/テネット』。
さすがのスケール、迫力、オリジナリティーに唸ったが、大予算を掛けなくとも作れる。
他にもまだまだ。
藤子・F・不二雄の短編作品。
こちらは完全SF(すこし・ふしぎ)作品なのだが…、
タイムマシン開発に没頭する独り身の男と、彼を心配する漫画家の友人。漫画家は彼のいとこの女性と結婚していたが、男は昔から想いを寄せていたものの奥手な性格で先を越されてしまった。
するとある日、時空が歪んだようになり…
漫画家は家に帰ると独り身。友人はいとこと結婚していて…。
本作を見てたら何だか思い出してしまった。