「感謝」ラ みさんの映画レビュー(感想・評価)
感謝
想像を裏切られる映画でした。あらすじを見て予告編を見て、バンドが再結成してまた夢に向かっていくっていう映画なんだろうな〜なんて思って本編を見たら全く違いました。
桜田さん演じる主人公・慎平が、笠松さん演じる慎平の親友・黒やんと一緒にバンドを続けたいと強く願い前に進みたいと思うその気持ち。また、福田さん演じる慎平の彼女・ゆかりが慎平に注ぎ続ける異常に傾いた愛。それから黒やんもバンド解散をした後も夢を追い続けているけど未来に向かって進もうとする希望。
そんな共感できてしまうような少し歪んだ人間の良い部分を、演者の皆さんが汚れてドロドロになりながら演じている姿がとても印象的でした。泥に塗れた慎平と黒やんの喧嘩のシーンは決してかっこよくはないけど、大人になりきれない二人が見せてくれるまっすぐな思いの衝突が返ってリアルでした。
そして、そんな汚くなりながらも、愛情や未来や希望や友情という人生においてプラスな部分を直に感じられる綺麗な映像です。
慎平、黒やん、ゆかりはそれぞれ内に秘めている大きなものがあって私はそれぞれ共感できる部分がありました。全く共感できない感情だけで作られた所謂「綺麗事」を詰め込んだ映画ではなく、自分がまだ経験したことのない思いがあり、現実味がないファンタジーのような、けれどリアリティ溢れる映画だと思います。
「ラ」から全てが始まり、「ラ」から崩れまた始まりの音である「ラ」から「ラ」へ続いていくストーリーです。
正直見終わった後はどっと疲れが来るくらい120分でラの世界観に引き込まれてしまうし、心は晴れないです。でももっと軽い気持ちで見て笑えるところは笑って、自分の心に任せて大いに楽しむことのできる作品だと思っています。むしろその感情が答えだと思います。
この作品を世に出してくれた全ての方々に感謝しています。