「もったいない挑戦」空母いぶき 梅さんの映画レビュー(感想・評価)
もったいない挑戦
今まで避けられてきただろうテーマ「自国防衛と戦争」について、かなり果敢に挑戦している映画。
役者陣の揃え方やCG等の映像を見ても、本気で勝負してきたのは窺える。
実際、自衛の線引きにおける日本の葛藤や対ミサイル方法等、なるほどと勉強になった場面は多数。
予算や映像スキルの水準は、邦画としては上位に位置する作品だと思う。
それだけにもったいない。
何故ラストの方向を日本の願望、理想に流してしまったのか。
国連軍の介入で難を逃れて痛み分けのお開き、そして漏出した映像により世界の人々がそれを見て何かを感じとる……?
いやいやいや。せっかく果敢に挑戦したのなら甘ったれないで欲しかった、もったいない。
むしろラストの攻撃が被弾した後の話こそをメインとして見たかった。
逃げのラストも要らなけりゃ、船乗りと戦闘機乗りの対立も要らない。
あのようにドラマ盛りされた隊員の死のエピソードも要らない。
漫画の原作がどんな物かは知らないが、一映画として見た限り、くっつけた事で邪魔になってしまった装飾が多い気がする。
もっと淡々と、もっとシビアに。
なんだったら綺麗に終われず「で?この後どうするんだ日本!」という所で観客に放り投げても良かった。
そのほうがテーマをより切実に考えさせられる物になったと思う。
攻撃をためらう日本の在り方にもどかしさも覚え、その一方で、そのもどかしさを失くしたら日本が日本じゃなくなると感じた。
だからこそ、攻撃され甚大な被害を受けた場合をリアルに覗いて見たかった。
そこを逃げずにリアルに描いてこそ、海外の人達にも日本の立場の奇妙さと葛藤、しかしその中にこそある小さな誇りが伝わるものになっただろう。
残念ながらこのラストでは、日本は結局グズグズともどかしく、甘ったれた事を夢見ている…と笑われるだけだと思う。
もったいないついでに言えば、中井貴一。
彼が何よりもったいないのだがww