劇場公開日 2019年5月24日

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「日本の軍備力は何の為にあるのか」空母いぶき 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

2.5日本の軍備力は何の為にあるのか

2019年12月15日
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鑑賞方法:DVD/BD

怖い

興奮

知的

今年の邦画で色んな意味で話題と問題を提供した一本。

20XX年12月23日未明。日本最南端沖で、国籍不明の漁船20隻が発砲。沖ノ鳥島西方450㎞に位置する波留間群島初島を占領し、海上保安庁の隊員が拘束される未曾有の事件が発生。航空機搭載型護衛艦“いぶき”を中心に現場に派遣され、やがて“戦闘”へと発展していく…。

大ベストセラーである原作コミックは未読。なので、邦画の一つのミリタリー・アクションとして鑑賞と感想を。

日本で『エンド・オブ・ホワイトハウス』や『レッド・ドーン』を目指した意欲的なミリタリー・アクション。
護衛艦や戦闘機の攻防戦。要所要所に手に汗握る見せ場を設け、スケールも大きなポリティカル・エンターテイメント。
交戦中極力音楽を廃し、ミサイル、魚雷、爆撃などの臨場感ある音。
また、数多くの護衛艦や潜水艦、戦闘機の登場にはミリタリー・ファンには堪らないかも。
それでいて、
実戦が交えられたという事は、被害は被る。炎上する護衛艦、撃墜する戦闘機…。
時には避けられない犠牲者。重軽傷者に死者も…。
日本の一部が不当に占領され、相手に交戦の意思ありとされた場合、その時日本が下す決断は…?
もし、今の日本で“戦争”の危機に直面したら…?
もし、本当に起こったら…?
絵空事であるような、決してそうとは言い切れないような、恐ろしさと共に考えずにもいられない。

エンタメと題材的に見応えはあったが、残念ながら秀でた作品にはなれなかった。
それなりに手に汗握る見せ場やCGを駆使した戦闘シーンはあるが、もっとハラハラドキドキの緊迫感や迫力には欠けた。
一番の難は、敵国が不明。一応“東亜連邦”なる軍事勢力とされているが、詳細や設定はあやふや。原作では実際のある国を名指しリアリティーをもたらしているのに、日本の良く言えば配慮、悪く言えば弱腰が垣間見えてしまった。そのせいで一体何と戦っているのか、リアリティーに欠けてもしまった。
メインは“いぶき”に乗る自衛官や総理ら政界の人々。と共に、一般人も描かれるのだが…、
“いぶき”に乗艦して未曾有の事件に巻き込まれるネット・ニュースの記者はいいとして、その呑気なオフィスの面々や完全蚊帳の外のコンビニ店長やバイトは何なの…? 映画オリジナルとしてまで描く必要あったの…?
おそらく、一般人の目線としてなのだろうが、何か場違いと言うか作風違いのような、ねぇ…。
これらは原作改変らしく、原作ファンから凄まじく叩かれたらしいが、まあ分からんでもない。

艦長役の西島秀俊、副長役の佐々木蔵之介ら豪華キャスト陣は熱演。
キャストと言えば、発言が物議を起こしたベテランが。
演じた総理大臣は、戦争を回避しようとする苦悩の様を、抑えたさすがの名演だったと思う。
問題なのは、アノ発言をしちゃった事。
直接的な描写は無く、アノ発言も無ければただの用足しだったろう。
それが言っちゃった事により、某総理大臣を揶揄する発言や描写と受け止められ、これはその本人の責任。
でもそれ以上に、自分らの世代は権力者に抵抗があるからと言って、設定を変えさせて貰った事だろう。
ならば引き受けるべきではなく、そもそも役者はどんな役であれその役を演じる事が役者としての仕事であり、幾らベテランとは言えそんなワガママ通用するとは驚愕であると共に、身の程を知れ!

本作の最たる物議はやはり、本作は日本の戦争への介入を誘発する作品ではなかろうか、という事。
フィクションではあるが単なるそれとは言い切れず、空母を有し、交戦したりと、日本の軍事や戦力が確かに色濃く描かれている。
劇中で何度も言う、“戦争”ではなく“戦闘”。ただの言葉の言い換えに過ぎないかもしれない。
“自衛”や“防衛”という言葉も美化されてるような気もする。
見た人それぞれで受け止めてしまうだろう。
…しかし、
“日本”という“国”がある以上、武器はあって当然。
勿論それは、相手に喧嘩を吹っ掛ける為ではなく、あくまで守る為。
守るのは、国そのものも大事だが、何より、国民。
国民が居て、初めて“国”が成り立つ。
劇中で何度も言われていた“戦闘”だが、これに偽りは無いと思う。
日本は絶対に戦争をしない。これからも日本という国が続く限り。
先の戦争中、最も苦しんだのは、国民。
戦争に勝つ事がまず何よりも優先。国民は二の次。思想も生活も自由すらも抑圧され…。
そんな事を再び、国民に強いてはならない。
“戦争”は勿論、出来れば“戦闘”も起こしたくはない。
だがもし、国民の安全が脅かされる“戦争”が忍び寄った時、仕掛けるのではなく、盾となる防衛と備えの構えは…。
絶対にあってはならない事は大前提だが。

今年本サイトで最も賛否吹き荒れたと言って過言ではない。
原作ファンの意見は分かるとして、先日見た『新聞記者』同様、悪質なレビューやおそらく見てもいないだろうに単なる悪口、自分の勝手な過激な思想も…。
こういうのには言いたい事は一つだけ。
余所でやれ!

近大
アンディぴっとさんのコメント
2020年7月9日

いつも自分のレビューを投稿してから皆さんのレビューを拝見するのですが、ビックリでした‼️こんなに酷評が多いとは。あの人の発言も知らなかったので、、、こんなに荒れてるなんて、驚きました。

アンディぴっと
近大さんのコメント
2019年12月25日

地蔵菩薩さん
コメントありがとうございます♪

確かにクリスマスの出来事でしたね。
日本版『ダイ・ハード』を狙ったんでしょうか…??

『ゴジラ』と『アルキメデス』の間に挟まれちゃあ見劣りしますね…。

福島県民としては『Fukushima50』は見逃せない一本ですが、このチームで、地元の映画館では見飽きたくらい予告編流れて、もう見る前から自分もちょっと期待薄れてます…(^^;

近大
2019年12月25日

MerryX'mas🎅Mr.近大🎄

そういえば本作もX'mas中の出来事でしたね…レビュー全面的に賛同します。

高評価の方には悪いけど、今年一番「観なきゃ良かった」映画でした…本作の前に「ゴジラ/キング・オブ・モンスターズ」、本作の後に「アルキメデスの大戦」を観てたのもありますが…

来年公開で期待していた「Fukushima50」…監督同じで不安になって来ました…

NIRVANA