「まさに現在日本の出来る限界点」空母いぶき アンテナピクトさんの映画レビュー(感想・評価)
まさに現在日本の出来る限界点
酷評が散見され、原作ファンの自分としては見るか見ないか迷いましたが、結果としては見て良かった。
原作からの大きな変更点は、①当事国が中国からフィリピン沖の架空の共和国に変更。②相手国側の描写が一切なく視点が日本側に限定されていること。③国連軍が参戦をして紛争が終結すること。ここが大きな変更点で、小さなものは戦闘の描写だと思います。
なぜこの大きな変更点があったのかを自分なりに原作を踏まえて考えましたが、今回の制作意図は日本人に今の憲法9条のもとで実際の防衛出動になったら、どこまでが可能なのかをリアリティを持って示したかったのではないでしょうか。そのためには相手国がどこであっても日本の対応は変わらず、中国に限定する必要はなかった。そして戦闘描写も原作より抑制的に描写されてたことを考えると、一般国民は本当に今の防衛環境で良いのかを考えるいい機会になったと思います。本来はもっと安全に戦闘が出来る能力も戦力も持っているが、専守防衛の9条があることでせっかくの能力を封印し相手の何倍も困難な戦闘を余儀なくされ、結果、自衛隊員の尊い命が失われていた。本当に憲法9条が今のままで良いのかを考えさせられました。
佐藤さん演じる総理の描写も、腹が弱いのは最初のみで、戦後初の防衛出動を指示することに対する苦悩、決断後は国民と気持ちを一つにする、自衛隊員を信じる心情が伝わる演技だったと思います。
よく必要がないと言われているコンビニシーンですが、日常と同じ時間軸でまさに非日常の戦闘が行われていると言うのがよく伝わりました。
以上から、原作のいぶきより映画版は、更に現在に近い設定で今後の日本の防衛環境に一石を投じる作品だと思いました。