「今見るべき作品」空母いぶき ガバチョさんの映画レビュー(感想・評価)
今見るべき作品
実に面白かった。エンタテインメントの基本が良く押えられている。平和主義を唱えるのは簡単だが、それを実践するのは非常に難しいことである。実際に他国から侵略を受けたらこんなことになるかもというテーマを分かりやすく見せてくれた。舞台は戦闘を実施する自衛隊と、政治的判断と外交交渉を担う政府の二面で、戦争を避けるための必死の努力が続けられる。その緊迫感あふれるやり取りが実によくできていて飽きさせない。自衛官達は全員凛々しくてかっこいい。秋津と新波との意見の対立はいい緊張感を与えている。ハイテクな戦闘シーンは臨場感にあふれている。
総理は原作ではリーダーシップのある強い人物だが、本作では周囲から責められながら苦渋の決断をするやや弱い人物に描かれている。これはこれで政治の苦労が伝わってきて良かったと思う。
コンビニのシーンはある意味とても重要な役割を果たしている。政府と自衛隊が必死で守るべきはこうした当たり前の庶民の日常であることが伝わる。中井貴一と深川麻衣のほのぼのとした演技が映画全体の安らぎになっている。
原作の基本の部分を大事にしながら、オリジナリティのある作品に仕上がった。この映画を楽しめなかった人は、心に何かバリアをかけているのでは。
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