「大満足‼」空母いぶき さわぽんさんの映画レビュー(感想・評価)
大満足‼
大変ドラスティックな内容で世間に物議を醸しておりますが、まず、決して武力礼賛の物語ではないことだけは誤解なきようお伝えしておきます。
この映画の原作者、かわぐちかいじの作品は常に現実に対する問題提起の為の思考装置なので、文字通り「右」往「左」往する浅薄なイデオロギーとは別の文脈で語られるべきと思います。
その原作のエッセンスを踏襲しつつ、四方八方に忖度しながら、エンターテインメントとして纏め上げ、かつ原作はまだ雑誌連載中なのにも関わらず2時間あまりの完結した作品にきっちり仕上げた企画・脚本の方々のご苦労たるや、察するに余りあります。
この作品について有象無象が枝葉末節をあーだのこーだのとあげつらって煩いですが、皆さん、ちゃんと観たのですかね?あるいは理解力が足らないのでしょうか?
某A首相を揶揄してるだの、こんなテロ国家なんてない、だの。
首相役はまったく架空のキャラクターでしたし、病気の方を軽んじているようなシーンは皆無。
また、全国公開の映画で、原作どおり敵は某大国とハッキリうたえるとは思えません。荒唐無稽な設定こそ、映画化するための落とし処ではなかったでしょうか。
少なくとも制約だらけの中にあって原作の意図だけはきっちり伝わっていたと思います。
さらに付け加えるなら、原作者は「武力対武力」がエスカレートした果てには人類の虚無しかないということを理解しつつも、今の世界情勢が核に依存したダモクレスの剣の下にしか存在し得ないという矛盾について、決して軽々な結論を出してはいません。
常に「それでいいのか?」と、世間に対して、その常識の枠組みを問い直し続け、時代のパラダイムの転換を促す役割を担う。
議論百出の現状はある意味、アーティストかわぐちかいじ(及びこの映画の制作陣)の術中に我々全員、いつの間にかはまりこんでいるのかもしれません。