「空席目立ったが、役者のせいではない」空母いぶき 猫空さんの映画レビュー(感想・評価)
空席目立ったが、役者のせいではない
すべての俳優の方々は、与えられた役を情熱をこめて演じていた。その熱は確かに伝わってくる。しかし。本作品のテーマである「専守防衛」を旨とした自衛隊が、どのように戦うのか。戦わないのか。その法的、戦術的リアリティが全く感じられない。政治家同士や自衛官同士の会話内容も、おそらく自衛隊と関連法のメカニズムをきちんと知らない方による脚本である。情念としての平和を語るのはいいが、それであれば、この原作を使用する意味はない。漫画原作者の意図とはかけ離れているはずだ。それはCGの出来云々以前の問題である。
ネットにこうした意見を書き込むのは嫌だったが、あまりにあまりだったので、書いた。制作の方々の努力を思うと申し訳ないが、エールをこめて書かせていただいた。
私自身は自衛隊基地が在る横須賀出身の一般サラリーマン人生を歩んできた62歳を重ねて来た者ですが、かくいう父親は旧帝国海軍予科練の教官でしたが、戦後生まれの自分に父親から一度足りも戦時中や予科練の話やエピソードを語る事は一切ありませんでした。しかし記憶が正しければ一言だけ『平和とは必ずしも保証される保険などは一切無くて、必ず防衛に備える準備が無ければ平和を保つことは叶わないと!』幼少期から父親の姿との触れ合いは戦後船乗りとして生きていた為に半年間の航海を終えてからごとに帰宅する生計であったのでほぼ母子家庭の様でしたが、父親の拳がまるで野球グローブぐらいのサイズを垣間見てどれだけの海軍軍人をその拳で送り出したのか?語らずしも悟ることが出来た記憶があります。平和を語る事は難しい事ですが、生きた時代で本人の意に反して余儀なく対応せざるを得ない状況は存在します。だから、先の太平洋対戦に於いて貴重な命を引き替えに祖国日本を守ろうとして亡くなられた多くの英霊の方々が居られた事を後世に生まれた我々日本人一人一人が忘れない為にも、今回の映画の論議は別にして『喉元過ぎても暑さを忘れずに戦争の功罪を訴え続ける』意義は大きい。