「最後に必要なのは冷静の先にある冷徹さ」空母いぶき 琥珀さんの映画レビュー(感想・評価)
最後に必要なのは冷静の先にある冷徹さ
【ビッグコミック 5/25号のP7のインタビューより一部を抜粋しました】5月27日追記の追記になります。
※近くの本屋さんで返品前の在庫があったので読むことが出来ました。昔ながらの個人経営の書店があって助かりました。
私は、原作との比較とか中国に対しての向かい方等について、何かを語るだけの知識も見解もありません。ただ、佐藤浩市さんのインタビュー記事についての多くの批判的なご意見について、色々な意味合いで恐怖心が拭えません。
最たる恐怖は、真実は誰もわからないのに、ある筋の解釈が一定数の総意となって、防御機能を持たない特定個人への過激で一方的な攻撃となることです。
私という書き手の恣意性(意図的な解釈)が疑われるかもしれないので、余分なコメント抜きで著作権に触れないと思われる範囲で、記事からの一部引用を記します。
「安部首相への揶揄(笑い物にする)」「ある難病を患っておられる方がたへの差別」にあたるような内容なのか、ご意見をいただけたら幸いです。
❶『ーー総理大臣は初めてですね。
佐藤 最初は絶対やりたくないと思いました(笑)。いわゆる体制側の立場を演じることに対する抵抗感が、まだ僕らの世代の役者には残ってるんですね。でも、監督やプロデューサーと「僕がやるんだったらこの垂水総理をどういうふうにアレンジできるか」という話し合いをしながら引き受けました。そしてこの映画での少し優柔不断な、どこかクジ運の悪さみたいなものを感じながらも最終的にはこの国の形を考える総理、自分にとっても国にとっても民にとっても、何が正解なのかを彼の中で導き出せるような総理にしたいと思ったんです。』
❷『ーー総理は漢方ドリンクの入った水筒を持ち歩いていますね。
佐藤 彼はストレスに弱くて、すぐにお腹を下してしまうって設定にしてもらったんです。だからトイレのシーンでは個室から出てきます。』
❸『ーー劇中では名実ともに「総理」になっていく過程がえがかれます。
佐藤 これはある政治家の人から聞いたのですが、どんな人でも総理になると決まった瞬間に人が変わるっていうんです。それぐらい背負っていくものに対する責任を感じる、人間というものはそういうものなんですね。』
以上❶❷❸の順でインタビュー前半を終え、後半は映画を観る人へのメッセージだけです。
私にはこれらのくだりから、現首相や特定の難病患者を揶揄する(笑い物にする)、という意図は窺えなかったのですが、感覚的におかしいでしょうか。
お腹が弱いこと、漢方ドリンクを服していること、現首相。
この3つの要素が揃うと、その難病のことを指す、というのが世間知として一般的なのかどうか私には分からないのですが、仮に常識と言えるほどの関連性があるのだとしても、映画の中での描かれ方において、笑い物にしている、ということはなくて、寧ろ、ストレスフルな状況の象徴的な意味合いで描かれていました(少なくとも私にはそう見えました)。
もしかしたら、この難病の方にとっては、頻繁にトイレに行くことなどを大げさに騒ぎ立てられたりして、学校でいじめられた経験などがあり、不快な思いや辛い経験を想起させられることもあるのかもしれません。そのことに関して何かを語る資格は私にはありませんが、映画を見る限り、病気や患者の方を揶揄する意図は制作スタッフにも佐藤氏にもなかったと思います。
垂水総理は、体質的なストレス耐性の弱さを克服して(症状が治ったわけではありませんが精神的に、という意味です)最後は自衛隊の最高指揮官(法令上の名称として正しくないかもしれませんがご容赦ください)としての責務を果たし、国民の平和と安全を確保した自負に溢れていたわけで、先入観なく映画をご覧になった方にとっては「現総理への揶揄」という意味がなんのことかよく分からないと思います。しかも、最後にはあと3年この国の舵取りを総理に負託する、とまでこの映画は宣言しているのです。もし、現総理のことを模しているのなら、積極的な支持の表明ということになりませんか?
インタビューの中で佐藤氏は、総理というものを語る一面について、ある政治家の人に聞いた、と言ってますから、もしかしたら、現首相が漢方ドリンクの水筒を持ち歩いていることをその政治家から聞いて、リスペクトの思いからこの映画にも取り入れた可能性もあるのではないでしょうか。
いずれにしろ、ビックコミックのインタビュー記事の部分的な印象、或いは誰かの解釈を真に受けてしまった方が、佐藤氏に関する批判をあれこれ〝断定的〟に語るのは決して褒められたことではないと思います。
以上、5月27日追記➕5月29日一部加筆削除。
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なんだか一般的な映画レビューに比べて随分感情的なコメントが多いのでびっくりしました。
私は原作も佐藤浩市さんの発言のことも知らぬままに鑑賞、単に映画から受けた印象だけですので、お断りしておきます。
最近観たばかりの『ハンターキラー』とつい比べてしまいますが、アクションヒーローものではない分、状況設定や起こり得ることについてのリアリティはこちらの方があったと思います。ただし、ミサイル迎撃の精度などがどこまで事実に近いのかは判断しようがないので、現役の自衛官の皆さんのご意見などをお伺いすることができれば嬉しいのですが、どなたか投稿していただけないでしょうか。
この映画が一番訴えたかったことは、国民の命を守るために必要なのは、何よりも冷徹で合理的な判断だということなのではないでしょうか。
戦闘現場の自衛官も、外交交渉に臨む政治家も、正義や理念や熱い感情の昂りもモチベーションとしては大事だが、国民の命を守る方法としては交渉相手のこと、次の展開のことなとすべてを総合的に判断したうえでの最適な選択肢を選ぶことが必要だということなのだと思います。
総理の病気のことを揶揄しているというご意見も多いようですが、本当にそうだとしたらとんでもないことですが、それだけのプレッシャーの中でさまざまなことを判断していることへのシンパシーという可能性はまったくないのでしょうか。真実は分かりようもないですが。
とってつけたような青臭くて、ある意味ベタな正論的内容の会話も確かに多いように感じましたが、我々が普段の生活の中では気恥ずかしくてとてもじゃないが言葉にしないことを敢えて言語化して聞かせるために仕組んだのだとしたら、なかなか技巧に優れた脚本ということですね。
生半可でもいいから、たまには憲法や平和や戦争における人命(憎たらしい敵の命だからといって、単純に攻撃していいのか?)について考えてみようではないか‼️
そう問われていると思って観れば、なかなかに味わい深い作品です。
コメントありがとうございます。お返事はこちらにさせていただきます。佐藤浩市さんの件の発言は政治的意図は別として難病患者さんを揶揄したものではなかったと信じています。鑑賞時も先入観がなければ気になるシーンではなかったと思いました。しかしあれだけ知名度のある俳優さん(私も好きです)ならば発言の真意よりも他者がどう感じるかを熟慮すべき内容だったように感じます。
第一報から『面白そう』と期待していた映画が公開直前に映画の内容ではなく感情論の激突やネタバレが多々目についたのが映画好きとしては少し残念でした。
長文乱文失礼しました。これからも共にたくさん映画を楽しんでいきたいです
仰る通り、理論が通じないと言いつつ理論的に考えた対抗措置だったり、以降の東亜連邦の立場を考えると戦闘についではあの終わり方でも、簡単に行き過ぎという感じがしました。
艦長秋津の戦争の定義。戦争を回避するために必要な戦闘。専守防衛の原則は、前線の自衛隊員の命との天秤。言葉で説明しても伝わらないことを、リアルに見せてくれる作品だったと思います。戦争と言う、デタラメに広い意味を持つ言葉に捕らわれ、考える事をやめてしまった人々に見て欲しい作品でしたね!