「ジレンマが緊張感を高める」空母いぶき aMacleanさんの映画レビュー(感想・評価)
ジレンマが緊張感を高める
武器を持ちながら使うことをためらう。相手を傷つけることをためらう事に加え、日本の社会がずっと抱えながら悩み苦悩してきた自衛の仕方を、いざ現実となったらどうなるかという、ひとつの形を描いている。
先日観た「ハンターキラー」でも潜水艦艦長が、戦端を開くか否かギリギリの選択を迫られたが、こちらも同様。さらに、原則こちらから戦端を開けない枷がはめられながら、部下を守るという最難関の課題に向き合う現場の覚悟と緊迫感が、緊張感を高める。前線で敵に撃たれながらも、最後の最後まで敵の死傷者をも最低限にすることを考える、まさにプロフェッショナルの仕事だ。
現代戦の、ミサイルの打ち合いで、モニタの上での戦いもイメージどおりに表現されていて、リアリティを感じる。欲を言えば、もう少し艦船、兵器に重厚感を演出しても良かったのではなかろうか。
西島秀俊は、かわぐちかいじ原作の冷静沈着で不敵なヒーローの感じがよく出ていた。副長役の佐々木蔵之介も、堅物の自衛官を好演。佐藤浩市も決断を迫られる総理役が人間味あって良かった。
現実の世界では難しい問題が絡み合い、たやすく結論は出せないが、そうした課題は認識しながらも、映画の中ではスリルと戦場の男の在りようを楽しめれば良いのだ。
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