「すべてが調度良い塩梅」家(うち)へ帰ろう ケイさんの映画レビュー(感想・評価)
すべてが調度良い塩梅
観る前は出演者も知らないので、戦争の悲しい過去を辿る暗くて長い映画だと勝手に思っていただけに余計に感動した。仕立屋だけにお洒落だが自己顕示欲も強く、顔も汚い偏屈なジジイが娘たちに家を売られ、老人ホームに追いやられたことから、人生でやり残した、命の恩人である友人にアルゼンチンから遠路遥々生まれ故郷のポーランドにたった一人で行く話。しかし、前から考えていたのだろうが、手塩にかけた娘たち、孫たちには求めているほど大事にされないからといって、相談もせず、老人ホームに入れられる前日に黙って単身ポーランドに向かってしまうという無謀さが凄い。しかも、友人に70年連絡を取っていないのに約束の仕立てたスーツを届けに行くという。足も相当悪いのに。連絡しなかったのは後で考えるに戦後ポーランドから叔母のいるアルゼンチンに行って生きるのに必死だったろうし、思い出したくない過去でもあったのだろう。暗い映画にならないのは、ジジイの茶目っ気と行先ざきで偶然出会う人々の親切さ。一期一会なのに。ジジイには人を引き付ける憎めなさがある。ラスト、遥々来たのに、会えなかったら、会っても怖いと言うジジイの台詞が良い。本当に会えて良かった、幻終わりかとも思ったが、現実でハッピーエンドが救い。しかし、途中ポーランドに行くにはパリからドイツの地に行かなければならず、強烈に反対するシーン、助けた女性がドイツ人と分かるとあからさまに嫌な顔。挙げ句には一歩も踏みたくないがために、ドイツ人女性に踏ませないよう布を敷かせるなどのドイツ嫌悪の徹底感。父親、叔父、妹の虐殺話は心が締め付けられたが、それをドイツ女性に話した後、ドイツ女性を認め、地に足を付け、一歩踏み出し、列車に乗るシーンも良い。映画全体通して、戦争の闇の部分あり、茶目っ気あり、ほっこりするところありと、調度良い塩梅で深い。長くなくまとまっている。世代は明らかに違うし、国も変化しているが、戦時中に虐待を受けた人々はその国を、人々を決して忘れないし、思っていて当然だと改めて感じ、日本においても、アジア諸国は未だにそう感じている人々もいることを改めて自覚させる映画だった
ケイさんありがとうございます。
この作品はあ茶目なお爺ちゃんが魅力的でした。戦争の傷跡があった為になかなか生まれ故郷に帰ることが出来ずに老人ホームに行くこ事を切っ掛けに恩人に会いに行った。凄いエネルギーですね。
ケイさま
ありがとうございます。
私も今の日本に置き換えて色々と考えてしまったのですが、ふと思い至りゾッとしたのは、親の虐待やネグレクトでそもそも〝家(うち)〟がない子どもがたくさん存在していることです。
『糸』の小松菜奈さんの半生は〝家(うち)〟を探すためのものでした。
ごめんなさい❗️この映画からはまったく離れた話になってしまいました。
人生が終わりに差し掛かっている人ほど過去のことを気になりだすものです。
俺もそろそろ何かをしなくては・・・と、しみじみ深いストーリーに感慨できる作品でした。