「強い絆」家(うち)へ帰ろう yukarinさんの映画レビュー(感想・評価)
強い絆
観て良かった
出会えて良かった
そう思える作品に出会えた
アブラハムは脚が不自由で、きちんと行程をプランニングしていないその旅はアクシデントなどにも見舞われる
それでも、アブラハムは出会う人、出会う人に助けられながら、ポーランドを目指す
正直、始めは、腹立つし面倒くさいし姑息なじいさんだな、という印象が否めないのだが、観ていくうちに、どこか憎めないし、本当はとても臆病でとても強くて優しい人柄を見ることになる
アブラハムは、ポーランドという言葉すら、自らの口から発することを拒み、メモにあるポーランドを見せて、行き先を告げる
ドイツにいたっては、足を踏み入れることすら拒む
陸路で行くにはそこを通らねばならないのにもかかわらず
そして手を差し伸べてきた相手がドイツ人だと分かると、その手を取ることも拒む
時が経ったにもかかわらず、もう今のドイツはあの頃とは違うにもかかわらず、彼の目の前に立つドイツ人はあの頃のドイツ人ではないにもかかわらず、それを拒むアブラハムは愚かなのだろうか
私にはそうは思えない
映画が進んでいくと、アブラハムが目にしたこと、されてきたこと、受けた心と身体の傷の一片を知ることになる
それは過去ではなく、今もアブラハムを苦しめる今
だからこそ、今がアブラハムを少しだけ変えたことにぐっとくる
ラストに表情と目だけですべてを語るシーンがあるのだけれど、ここで涙腺が崩壊した
ポーランドと口に出来ず、ドイツに足を踏み入れることさえ出来ないアブラハムが、それでも果たしたかった約束
思い出すだけで、目が潤んでしまう
観終わってから、いろいろ見てみた
この作品は、監督の祖父、そして、監督自身が見聞きした話などから作り上げられたと知った
完全な実話ではないながらも、実際に起きた事からインスパイアされた話
そして、末娘のタトゥーの意味も知った
実際にホロコーストを忘れないためにそうしている人々がいることも
この作品に出会えて、観に行けて、本当によかった