ペンギン・ハイウェイのレビュー・感想・評価
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海とお姉さんの起源がわかるサイドストーリーほしい
あおやまくんが小賢しいムカつく少年そのままで嫌な主人公でした(笑
それでもムカつくあおやま少年を優しく包み込んでくれるお姉さんの優しさとデカパイが作品の癒しでした(笑
そしてハマモトさんの海の発見とか、あおやまくんへの恋心とか全て上手くいっていなくて、報われないキャラっぷりは半端じゃない(笑
ストーリーの方はまあまあ。
お姉さんが海を生み出した元凶だったのか、海がお姉さんを生み出したのか、もしくはお姉さん=海だったのかわからない。
それがわからないせいか、海とかお姉さんが誕生してしまった理由がわからず少しもやもやした結末になってしまっている感じが。
原作読んだり作者のインタビュー見ればわかるのかな?
サイドストーリーとかの小説でそのあたりを補完してくれないかなぁ。
世界は不思議なことだらけ。
現実社会とパラレルワールドが同居する不思議な世界。
この物語のタイトルにもなっているペンギンは、増殖し、まるで濁流のように画面を覆いつくす。それを、???のままで納得できないままで終わるか、それはそれで可愛いとかの単純な理由で受け入れるかで、この映画を楽しめるかどうかがかかっているようで、自分はちょっと馴染めない方だった。
小学生にして理論立てて物事を冷静に思考するアオヤマ君。彼は、歯科クリニックのお姉さんのおっぱいさえも、取り乱すことなく理知的に分析する学究肌だ。「海」の研究に関して彼はハマモトさんとウチダ君と一緒になって、その存在を調べていくのだが、これまた摩訶不思議な「海」の存在に違和感を持ってしまってはこの物語を楽しめない。だいたい、お姉さんの正体だって異次元である。さすが、森見登美彦ワールドだ。
だからこの映画、常識に縛られている大人にとって、結構ハードルは多くて高い。子供に見える世界は、大人になってしまうと見えなくなる世界、なのかもしれないな。だから、彼らの恐れることのない研究心にエールを送ろう。そう、彼らこそ、未開の世界を切り拓こうとするファースト・ペンギンなのだから。
最初はペンギンの存在が意味不明だったが、、
主人公と歯医者のお姉さんが夏体験する物語。
海が側にある訳でも無いのに、街にペンギンが登場。
なんで?と現実主体のアニメなのか、それともファンタジーアニメなのか不明のまま中盤まで視聴していた。
色々起こる不思議な出来事。
判明する奇怪な現象。
ネタバレまでほんと、後半まで焦らす焦らすw
(椅子でお尻が痛かった。少し時間長い。)
ラストは凄かったですよ。見所でもあり、宮崎アニメ・「崖の上のポニョ」の名シーンポニョお魚波渡りを思い出す。ペンギンも可愛い。
残念なのは公開が8月中旬だった事。
子供には7月に観せたいね。これから夏休みって時に。
一部、交響詩編エウレカセブンに似た要素を感じるアニメ。
手間もかかってます。
興味ある方、是非ご鑑賞下さい。
森見登美彦ワールド
予告で気になってはいたけど公開日知らず。
ツイッターで話題になってたのを見て思い出したので鑑賞、原作未読です。
映画が始まるまで知らなかったのですが、森見登美彦さん原作の様で、
彼の持つ独特な世界観がそのまんまスクリーンに現れているような印象。
四畳半神話大系とか夜は短し歩けよ乙女とか、よくアニメ化できるなぁと関心したものですがこの映画も負けておりません。
アニメの表現力ってすごい。
物語としては序盤からよくわからない展開で、
中盤もよくわからない展開、さらに終盤までもよくわからない展開で、
全体的に何が起こってるのかわかる部分のほうが少ない印象なのですが
物語のテンポの良さやキャラクターの魅力、世界観の表現等でグイグイ引き込まれてしまう映画でした。
訳がわからないけど何か面白い、そんな世界観にっぷりと浸かれる映画。おすすめです。
少年とお姉さんと一緒に楽しむ不思議な夏
序盤からいきなり不思議な謎を突きつけられます。そして、解明するためのヒントもないまま、新たな謎が次々に提示されるわけですが、このあたりのテンポが実によかったです。そこに、主人公の少年の小学生らしからぬ科学的な目と思考と落ち着いた語りが加わり、ぐいぐいと物語世界へ引き込まれていきます。少年の声を当てている北香那さんは声優初挑戦らしく、明らかにプロ声優さんには劣る演技だったとは思いますが、本作においてはそれが少年のキャラにマッチし、良い方向に働いていたと感じます。
また、謎を研究する子供たちがとてもいきいきと描かれ、少年がまとめているノートもたいへん興味深く、大人である自分も童心に帰って夏休みの自由研究に取り組んでいるような気分になりました。加えて、少年と深く関わるお姉さんが、蒼井優さんの演技と相まって、不思議な魅力を放つキャラとして印象的に描かれていました。もちろん、物語のカギを握るペンギンも、見た目も動きも愛くるしく描かれ、その行動はまさに謎でした。
こうして不思議な謎が増すばかりなのですが、やがてそれらが結びつき、少年の立てた仮説へと収束していきます。これで謎に対する答えが与えられたわけですが、それでも解明されない謎が残ります。しかし、その答えは観客の一人一人が自由に想像すればよく、なんなら答えなんかわからなくてもよく、そこにモヤモヤした思いはまったくありません。むしろ、すがすがしささえ感じましたし、心が温かくなりました。でも同時に、大切なものを失った切なさや寂しさのようなものも感じました。それはきっと少年も同じでしょう。そして、その思いが少年を少しだけ成長させてくれたのではないでしょうか。
過ぎ行く夏を惜しむ今の時期にぴったりの作品でした。
おっぱいお姉さん
賢く探究心に溢れる秀才だか、それ故に背伸びして自分を大人っぽく見せようと頑張る小学生4年生の主人公。こういう主人公は決まって下ネタには疎いと相場が決まってる。しかし、このペンギン・ハイウェイなんと最初の5分で見事に裏切ってくれる。なんとこの主人公秀才の頭を使っておっぱいの研究をしているのである。
しかも華麗な分析と共に。この一幕だけで単純男子頭の私はこの話に惹かれてしまった。
しかもヒロインのお姉さんのおっぱいがまた素敵でお姉さんが出てくるたびにおっぱいを一度は見てしまうし、お姉さんが出てくるのを楽しみにしてしまう。
おっぱいについてひたすら語ったが内容も終始わくわくさせてくれるので是非おっぱい好き男子には見ていただきたい。
SF? 冒険もの? 成長もの? 全部です
自分は「評価が高い」「森見登美彦原作」という前情報のみを仕入れて見に行きました。
そのおかげか、原作も読んでいませんし展開が予想できず最初から最後までワクワクさせてくれました。
この映画のいいところは、ジャンルとして的を絞らせていないことでしょう。
子供向けの冒険譚であり、SFものであり、また主人公の成長を描いた物語でもあります。
人によって「良いな」「おもしろいな」と感じるポイントが違い、また様々なジャンルを”上手く”混ぜることでお祭り感覚で楽しめます。
一歩間違えば何を言いたいのかしたいのかわからない作品になりえましたが、この映画はよくバランスをとっていたと思います。
登場人物も不要だと思われるキャラがおらず、みなそれぞれが役割を担っていてイライラしませんでした。
個人的にお父さんが一番ツボでしたが、まぁこんな素晴らしいお父さん現実にはなかなかいないですね(笑)
あと個人的にこの作品は様々なポストジブリたちより、最もジブリに近い作品だなと感じました。
それは子供はもちろん大人も、純粋に楽しめ、考えさせられる作品だからです。
細田監督も新海監督も米林監督も、みな良い作品を出していますが、監督のメッセージや個性が出すぎていて子供には理解しにくかったり、逆に子供向けすぎる作品が多かったような気がします。(あくまで個人的感想です)
しかしこの作品は子供視点では映像が多彩で冒険心がくすぐられ、大人視点としてもストーリーの作り込みに感心させられます。
主人公が子供でありながら、子供らしからぬ知性、品格を有していたことも大人が見て楽しめる要因になったと思います。
これが年齢通りの性格だとちょっと……となった可能性があります。
もちろん、突っ込みどころがあるのも理解できます。
SFものとしてはその原理にほぼ触れないまま、「不思議なものは不思議なもので良いんだよ!」と言わんばかりに投げっぱなしジャーマンです。
大抵のSFものはとんでも理論であっても一応の答えは出すものですが、この作品においてはほぼ主人公の推測の域を出ません。
でも自分はそれでいいと思います。
この作品におけるSF要素とは映画を彩る装飾に過ぎないからです。
メインではありません。
いろいろ無駄に書きましたが、この作品はすごく楽しめました。
方向性は違いますが、個人的にはこの世界の片隅に並みにお気に入りです。
BD出たら買います!
摩訶不思議でふわっとしたファンタジー
摩訶不思議だがほっこり、ちょっとしんみりする森見登美彦原作らしい世界観を良く表したアニメ映画のお手本。
単なるドタバタ映画に終始した夜は短し歩けよ乙女に比べ何と完成度の高いことか。
(但し摩訶不思議なファンタジーが持ち味であるからして、合理的なストーリーしか受け入れられない人には苦痛だろう。仕方ない。)
子どもの純真無垢さ・ファンタジー・恋愛・死生観・ペンギンの可愛さの無敵感など、幅広い年齢層に対し全方位的に網羅したスーパーアニメ映画だ。
蒼井優って女優としてはかなり個性的なイメージだけど、声優だとこんなにナチュラルな役が似合うのですね。
小学生に戻ってもう一度観たい
作品に関しては素晴らしいのひとこと。
夏のアニメ映画のお気に入りラインナップに文句なしのランクイン。
展開や論理は飛躍する場面もかなり多いけれど、それが森見登美彦さん、そして映画の魅力だと思う。
みんなにわかるように一つ一つ細かく説明立てて進むのではなく、詩的な雰囲気が常に漂いながら進む、主人公の男の子の抒情詩的な物語。
理由や論理で構築されている、もしくは構築しようとばかりする日常を忘れさせてくれました。
アニメ以前に芸術作品
ペンギン好きの小5の息子のリクエストで観賞。が、不覚にも声出しこらえ号泣。そんな自分に面食らう。お姉さんが映画版メーテルとダブってしまう。先の読めないストーリーにワクワク。どんどんこちらの思惑を裏切ってくれる噛みごたえ感がたまらない。この世の謎に感謝。空の雲のこだわり。細部まで意味のあるカット。阿部海太郎さんの音楽。今日、子供と一緒に出会えた事に感謝です。
結局わからない
内容が難しいと聞いていたので、しっかり話を追って考えながら見ていたのですが、結局のところ、わかったようなわからないような、う~ん・・・ちょっとわかった気になってはいるものの、正直よくわからずに終わってしまった作品でした。
でも、わからない領域があって良い、そんな物語でもあります。が、それじゃやっぱりスッキリしないよね。なので残念でした。
少年の心。すごい
12 自分はすごーく好き!
多少まだるっこしく感じた前半も、後半一気に引っ張り込まれるために必要だったんだろうと、終わってみれば思えてしまうほど、後半は心地よいリズムだった。
これを小説に書いた森見登美彦の才能には、あらためて頭が下がる。変な人なんだろうな。よくこんな話を思いつくよなぁ。
アニメ的な面で自分が気に入ったことは、全編を貫くペンギンを(もちろん愛らしくもあるのだが) 記号のように描いたこと。「人」という柔らかいというか、感情をもち、刻々変化するものと、「世界」という記号化されたもの。それは「海」であり「ペンギン」であるわけだが、その対比を自分は感じた。
そして変な言い方かもしれないが、記号化された「世界」が「人」に憧れというか興味を抱いているような感覚を覚えた。
ここらへんが、何人かの人が「海」を「惑星ソラリス」の海と似ている、と評している理由なのかな。
そして登場人物の魅力。兎にも角にも一貫している「僕」の姿勢。嫌味を感じずに見られるのは、自分も理系だからなのだろうか。
彼ならきっと「海」を解明しお姉さんと会うだろう。…って書いても、観てない人には何が何やらだよね。お姉さんの声の蒼井優にも感心しました。
今年「バケモノの子」的な少年の成長物語の部分を期待して細田守「未来のミライ」を観に行った人は、満たされなかった面を、この映画で堪能してほしいな。
ただし、話はわけわかんないです。でも、最後にはきっとわかった気になれるから、ちゃんと最後まで観ることをお勧めします。
温かく、そしてワクワクする映画だった。一緒に劇場で観てた人の9割が男性だったのも、なんだかうなづける。
やはり暗い館内の明るいスクリーンで観る映画は最高だ
2019/10/21追記
原作者 森見さんだったのか。知らなかった。
理系小説家の面目躍如ってわけですね。
2022/10/6追記
森見さんがこの話を書く上で重要なインパクトになったけいはんなの思い出が、下記で読めることを教えてもらった。いい感じ。
国立国会図書館月報 737/738号 2022年9/10月
「学研都市の思い出」森見登美彦
(リンクは禁止なので、検索してみてください)
昨今のアニメーション映画の黎明期たる作品かと
『ペンギン・ハイウェイ』を観てきた!
絵は気に入っていたがどうだろう🤔
と思っていたが、私的当たりである!
見解難儀な所あれど、とても面白く観覧有意義なり!!
ただ言うなら
「良いおっぱい」であった!
人物から風景の描写に至るまで透明感があり
重く暗い話でも、ストーリー性も合いまりどこか突き抜ける爽快なものがあった
タイトルにもある通り、話の鍵はペンギンであった
作中にも細くはあるが、あのペンギンの在りようをどう判断するかで、この映画は見所が変わる気がした
主人公が年齢若き小学生というところで思うところはあるが
それゆえの
荒々しさや純粋さ、素直になれなさがこの作品の良きスパイスであるように私は感じた。
詳しくはブログにてhttps://ameblo.jp/diana69/entry-12399876035.html
Boy meets Wonder (ボーイ・ミーツ・ワンダー)
※コメント欄に「〈海〉とは何か」「ペンギンとお姉さんの役割」「作中で明らかにされていないこと(人間に理解できない領域)」を追記しました。(2018/08/26)
個人的には細田守監督の『時をかける少女』を初めて観たとき以上の衝撃を受け、大いに感動いたしました。レビューにもついつい熱が入り、かなりの長文になってしまっています。
そこで、なんとか少しでも読みやすいレビューになればと思い、ここに各章の表題とキーワードを一覧にしてまとめました。
➀『ペンギン・ハイウェイ』はよく分からない?
──人間が理解できる領域と、人間に理解できない領域
➁アオヤマ君は“謎”とどう向き合うか
──アオヤマ君は「科学の子」
➂物語終盤、アオヤマ君は何を決断したか
──理解することの悲しみを知る
➃ラストシーンをあらためて見る
──「ぼくは会いに行きます」
元々は「原作小説との比較:『映像化』と『再構成』」という章をレビュー本文に含めるつもりだったのですが、独立して読める内容になっていますし、何より本文があまりに長くなっていますので、そちらはコメント欄の方に載せています。
また、みなさんのレビューを読んでいて、「結局、〈海〉とかペンギンとかお姉さんって何なの?」とか「謎が残ったままでモヤモヤする」といった感想が多いように感じましたので、映画と小説から読み取れることと、作中で明らかにされていないことを、私なりに整理してまとめ、コメント欄に追記しました。全編ネタバレ全開ですので、コメント欄をご覧になる際はご注意ください。
➀『ペンギン・ハイウェイ』はよく分からない?
まずは、「よく分からない」とか「難解」とも評される、本作の“分かりにくさ”について考えてみたいと思います。
この映画の内容をひとことで言い表すなら「小学4年生の男の子が、人智を超えた不思議に出会う話」です。ここで言う“人智を超えた不思議”とは、住宅地に突如として現れたペンギンたちであり、森を抜けた先の平原に浮かぶ謎の球体〈海〉であり、そして、歯科医院で働くおっぱいの大きなお姉さんです。
また、本作は子どもたちの胸躍るような冒険を描いたジュブナイルでもありますし、主人公アオヤマ君の初恋の物語(ボーイ・ミーツ・ガール(?))でもあります。言ってしまえば、この作品自体が作中に登場するペンギンのような存在なのだと思います。つまり、見た目は可愛らしいジュブナイルのようであっても、その中身は一筋縄ではいかないSFなのです。
ペンギンや〈海〉やお姉さんが投げかける謎は、作中で全てが解き明かされる訳ではありません。アオヤマ君がいくら聡明であるとは言っても、小学生の男の子にあっさり全貌を解明されてしまうようでは、本当の意味での“人智を超えた不思議”ではありませんから。
原作者の森見登美彦さんがおっしゃっているように、本作は「人間が理解できる領域と、人間に理解できない領域の境界線を描いて」います。つまり作中には「人間に理解できない領域」が明確に出てくるのです。そこに戸惑いを感じる方もたくさんいらっしゃるようですが、本来理解しようがないものにこだわっても仕方がありません。
重要なのは、「アオヤマ君がそれらの謎とどう向き合い、その果てにどのような決断をしたか」です。そこに注目することで、本作を少なくとも“物語として”読み解くことはできると思います。
➁アオヤマ君は“謎”とどう向き合うか
お姉さんの言葉を借りるならば、アオヤマ君は「科学の子」です。ペンギンや〈海〉やお姉さんが投げかける謎に対して、彼は科学者として、対象をよく観察し、集めた情報を元に仮説を立て、実験を行い、それらをノートに記録しながら、一歩ずつ着実に謎の核心に迫っていきます。つまり、どれだけ問題が大きく深遠なものであっても、決して思考を止めずに、科学的に探究し続けるのです。
例えば、お姉さんの投げたコーラの缶がペンギンに“変身”するという不可思議な現象を目にしても、アオヤマ君は冷静にその発生条件を調べようと実験を行い、その結果、日光がペンギンの発生条件であることを突きとめます。このような謎を解明していくプロセスこそ、SFの醍醐味だと思いますし、そこにはアオヤマ君の科学的な態度がよく表れていると思います。
※これ以降、物語終盤や結末部分の内容にふれています。重要なネタバレを含みますので、ご注意ください。
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➂物語終盤、アオヤマ君は何を決断したか
物語の終盤、アオヤマ君はついに“エウレカ”に至りますが、この瞬間に彼は、〈海〉とは何か、ペンギンとお姉さんの役割、そして自分が何をすべきかを理解したのでしょう。おそらく、その行動の結果、“お姉さんを失うことになる”ということも含めて。
お姉さんが“人間ではない”ということを反証するため、自らの身体を犠牲にして断食実験を行ったことからも、アオヤマ君にとってそれが到底受け入れられない事実だったということは想像に難くありません。しかし、最終的に彼は決断し、限りなく拡大を続ける〈海〉を消すため、喫茶店にいるお姉さんに会いに行きます。それは、自らの手でお姉さんを消してしまうことと等しいのです。
パンフレット内のレビューで、SF翻訳家の大森望さんが、序盤に出てくる抜歯の場面は身体的な痛みを伴うイニシエーションであると指摘されていますが、ここでのアオヤマ君の決断は、喪失という痛みを伴う精神的なイニシエーションであると言えます。アオヤマ君は、お姉さんを自らの選択によって失うことで、「理解することの悲しみ」を知るのです。
本作のエピローグに「世界の果てを見るのはかなしいことかもしれない」というアオヤマ君のセリフが出てきます。これまで、「探究し、理解し、知ることの喜びと可能性」を描いてきた本作ですが、その果てにアオヤマ君が理解することの悲しみを知るというのは、なんとも皮肉な結末だと思います。
➃ラストシーンをあらためて見る
ここまで、アオヤマ君が「人智を超えた不思議とどう向き合い、その果てにどのような決断をしたか」を詳しく見てきました。それを踏まえた上で、あらためてラストシーンを見てみましょう。
「ぼくが大人になるまでに……」という冒頭とほぼ同じ内容のモノローグにはじまり、彼が世界の果てを目指していること、世界の果てに通じている道はペンギン・ハイウェイであること、もう一度お姉さんに会えると信じていることなどが語られます。
──そう、彼はまだ探究することを止めていない。探究することに絶望していないのです。むしろ、お姉さんにもう一度会うため、以前よりもずっと大きな目標に向かって探究を続ける決意を語っているのです。
「ぼくは会いに行きます」
お姉さんとの別れ際にアオヤマ君が言ったこの言葉を、私は信じたいと思います。彼なら本当に世界の果てまで行き、お姉さんに会えるはずだと。人智を超えた不思議に対しても科学的な態度を貫き、理解することの悲しみを知ってもなお、それを乗り越えて探究を続けようとする彼なら、きっと。
ラストカットでアオヤマ君の目に映る探査船「ペンギン号」が、彼を後押ししているようで、彼が進む道(ペンギン・ハイウェイ)の正しさを証明しているようで、胸に熱いものがこみ上げてきます。なんと希望に満ちた結末なのでしょうか。
ペンギン・ハイウェイを見つけに行こ
森見登美彦さんの作品は、何冊か読んでいるのですが、本作は未読で、映画化を楽しみにしてました。
一言では、言い表せない、友情、初恋、学園、SF、ファンタジーなどのいろんな要素がてんこ盛りの作品。森見作品ならそれもあり。
でも、一番のテーマは少年アオヤマ君の成長…、それがペンギンハイウェイなのかな…。
どちらかといえば、大人向けの内容だと思いますが、それでも、
ペンギンは何だったの❓
うみは何を表してたの❓
お姉さんの正体は❓
などなど、観終わっても❓が残り、スッキリとはしませんでした。
その分、アオヤマ君のひと夏の成長は、とても爽やかに伝わってきました。
お姉さんのオッパイは、アオヤマ君でなくても、男の子ならみんな憧れます(笑)
原作、また読んでみようと思います。
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