「【”きっと、世界はもっと広い。”女子高生同士の苛め、生きる儚さ、残酷さ、女子高生が大人の女性に変容する様を可視化した作品。多様な見方を許容するアーティスティックな作品でもある。】」少女邂逅 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”きっと、世界はもっと広い。”女子高生同士の苛め、生きる儚さ、残酷さ、女子高生が大人の女性に変容する様を可視化した作品。多様な見方を許容するアーティスティックな作品でもある。】
■いじめをきっかけに声が出なくなった小原ミユリ(保紫萌香)。
自己主張もできず、周囲にSOSを発信するためのリストカットをする勇気もない。
そんなミユリの唯一の友達は、山の中で拾った紬と名付けた蚕だったが、ある日、昔は仲が良かった、いじめっ子の清水に蚕の存在がバレて捨てられてしまう。
そんなある日、ミユリのクラスに富田紬(モトーラ世理奈)という不思議な雰囲気を漂わせた少女が転校してくる。
紬は前日、苛められて居たミユリを助けてくれた少女だった。
二人は急速に仲良くなり、紬は可なり強引に沖縄旅行に行こうとミユリを誘う。
◆感想<Caution! 内容に触れています。>
・個人的な感想だが、富田紬はミユリの唯一の友達で、山の中で拾った紬と名付けた蚕(で、苛めっ子に捨てられる。)の生まれ変わりであると思う。
ー 劇中、生まれ変わりの石があるという沖縄の大石林山に行きたいという言葉や、実験で蚕を湯に入れるシーンでその湯をひっくり返す紬の姿。-
・蚕は、劇中で紬が言っているように、他者の為に糸を出すが自らは2日しか生きられない弱き虫である。
だが、蚕のお陰で人は布を古代から織って来た。
養蚕業が盛んな時代もあったくらいである。
自らを犠牲にして、他者に尽くす、貴重な生き物なのである。
<今作のラストは残酷だ。
苛めっ子から(この女子高生自身、実はミユリの事が好きだと思う。)”あの子死んだよ。部屋の隅で。餓死だって。親から性暴力を振るわれて、売春もしていたみたい・・。”と淡々と伝えられる。
実は、一番苦しんでいたのは富田紬だったことが分かるシーンである。
紬は自分を大切にしてくれたミユリを助け、自身は死んでいったのである。
そして、それを知ったミユリは列車の中で、手首にカミソリの刃を当てる。
鮮血が白い肌を流れていくのである。
今作は、観る側に様々な解釈を許容する、印象に残る作品だと私は思う。>