「怒りと優しさと謝罪についてのイイ映画」判決、ふたつの希望 つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
怒りと優しさと謝罪についてのイイ映画
二人の男がちょっとしたことでトラブルになり法廷で争うことに。
初めは少々退屈かもしれない。そんなことでそこまで怒らなくても、とか思ったりね。だけど、その理由は徐々に明らかになっていくし、始まりの些細さからは想像できないほどの大きな物語に発展していくから大丈夫。
なんてったって、一番最初に、本作品はレバノン政府の見解を示すものではありませんと注意書きが出るくらいだからね。
お互いに弁護士がついたあたりから、トニーとヤーセルの思惑を超えた問題に発展していく。
内戦、難民、宗教対立、要するにレバノン国内におけるパレスチナ問題。ほじくり返せばかなり昔に端を発するこの問題は長い時間をかけてあらゆるところに分岐し、小さな問題も生み出してきた。
映画の中ではパレスチナ問題を色々な角度から取り込み、二人の些細な論争を、国を揺るがすほどにまで自然な感じで大きくした手法は素晴らしかったね。
パレスチナ問題とかよくわかんねーよ、レバノンとかほとんど知らないよ、とかいう人でも大丈夫。まあ、詳しければより楽しめるだろうし、ほんの少しの知識はあるべきだが、身構える必要はない。
なぜなら、この映画が真に素晴らしい理由なんだけど、あくまで二人の男の対立の物語であって、トニーとヤーセルがどうなるのか、この法廷劇によってどうモミクチャにされたか、そしてどのように変わり、変わらなかったのか、が観るべきポイントだからだ。
トニーとヤーセルの対立は、お互いに触れられたくない、触れてはならないものを刺激したために起きた。
それは、俺のアイデンティティーを踏み荒らすな!だったと思う。二人ともね。
理解し合えれば変化は訪れる。だって、基本的に人間は優しいものだろ?何度かホロッとさせられたからね。