劇場公開日 2018年8月31日

  • 予告編を見る

「面白くてタメになる」判決、ふたつの希望 CBさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5面白くてタメになる

2018年10月12日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

極東の地にいて、遥か彼方の中東のことを知る。映画を観る大きな価値の一つだよなあ。おまけにその話が面白ければ、言うことなしだ。
些細な喧嘩に見えた諍いなのに、主人公二人は意地を張り合うかのように、どちらも折れない。
一人は「水をかけておいて謝らない」と怒り、相手は「"侮辱"という言葉では済まないほどのひどい言葉で罵られた」と言って、決して謝らない。
観ている側は「それなりのところに落ち着けようという気持ちはないの?」「まるで子供じゃん」と失笑しかねないシチュエーションなのだが、話が進むにつれて、ヨルダン国民とPLO難民キャンプの軋轢というものの深さ、やるせなさがわかってきて、お互いの辛く悲しい胸の内を感じ始められる。
すると、その中で見る二人の依怙地さ、張り合いが、あたかもハードボイルドかのように感じ始められる。
ちょっとした謎解きはあるものの、二人がどうしても折れることができなかった理由というか心情を、スッキリ理解できるわけではない。しかし、かえってそのわからなさによって、中東を少し理解できたような気になるから不思議だ。
PLO難民を受け入れるキャンプを設けることは当然のことと思われるが、PLO敗残兵や民兵による略奪や虐殺もあり、さらにそれらの悲劇はなかったかのように黙殺されているという事実。それを知った自分には、主人公ふたりの折れない姿勢にも、それぞれの理由があると感じることはできた。その真の辛さは、経験している本人たちにしかわからないもので、自分はこうやって映画を観て、少しでもわかろう、感じようとすることだけだ。

映画としてもうまくまとまっている。押しつけがましく説明するのではなく、なぜ依怙地なまでの姿勢を貫くのか、をサスペンスのように謎解きしていく展開は心地よい。
本人の苦悩みたいなものを極力描かなかったのもよかったのではないか。その分、クールに、ハードボイルドになったと思う。
多くを盛り込まず、削ぎ落とすって難しいと思うが、流石だ。

奥さん役の女優、きれいだったな。

2020/2/22追記
「いいね」をもらったのを機会に、あらためてこの映画の背景、レバノン内戦について、Wikipedia を見てみた。そこには、1970年代後半からつい最近まで続いた、レバノンの悲劇が描かれていた。もともとキリスト教徒が多かった旧レバノン(小レバノン)内のアラブ教徒による独立気運を鎮静化しようと、当時の宗主国であるフランスが行った国境線の拡大(大レバノン)から始まる悲劇の歴史は、この映画を観るという経験がなかったら、知らないままだっただろう。みなさんも機会があれば、Wikipedia でレバノン内戦を読んでみてください。

CB
marさんのコメント
2020年6月3日

コメントありがとうございました!
レバノン内戦について、しっかり勉強してみます!

mar
marさんのコメント
2020年6月2日

映画がきっかけで色んな事への理解が深まるって良いですよね!

mar