劇場公開日 2018年8月31日

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「普遍的な差別と偏見の物語」判決、ふたつの希望 コージィ日本犬さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0普遍的な差別と偏見の物語

2018年9月20日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

社会派の法廷劇であるものの、わかりやすく丁寧に作られていました。
そしてなにより、鑑賞後、自分はどうやって生きていくべきかと自問自答するほど、我が身にも関係の深い問題であると意識せざるを得ませんでした。

物語は、レバノンの首都ベイルートで起きた、水漏れを発端とした些細な小競り合いから始まる。
それぞれが謝罪を口にすれば良いだけの個人の話のはずが
、二人はそれぞれ、パレスチナ難民と、キリスト教徒のレバノン人だった。
売り言葉に買い言葉でついた悪態が、各々の人種、民族、政治、宗教、紛争や歴史的な侮辱につながる言葉<ヘイト>だったことが事態を悪化させ、舞台を法廷に移し、国を二つに割る政治的な大事件に発展してしまう…

これは、レバノン、パレスチナだけの話ではなく、国際的に普遍的な問題だ。

偏見、ヘイトはどの国にも、何らかの形で存在している。
そして、事態をややこしくするのはいつも、歴史として積み重なった、個人の持つ過去への「怒り」と「差別に偏見」。
偏見の原因は、相手を知らず理解していないことや、お互いを尊重する気持ちがないこと。

我が国にも、出身国(国籍)、出身地域、男女性差、LGBT、病気、趣味嗜好、貧富、学歴etcといった、差別と偏見の歴史と現実があります。

映画冒頭に「この映画の見解は、監督と脚本家の考えを基にし、レバノン政府は認めていない」と注意書きが出ることからいって、作品の示す方向は創作であり、収斂していく結末は、ある種の理想論でしかないものの。

全世界では移民が大きな問題として存在し。
我が国でもこの先、移民受け入れや、国際結婚による二重国籍の子供の存在から目を背けることはできない中で。

邦題が示す「ふたつの希望」が、ありとあらゆる国や人との間に生まれたらいいのに、と願わずにいられませんでした。

こういう気持ちにさせてくれた本作を、傑作だと思った次第です。

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コージィ日本犬