劇場公開日 2019年3月8日

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「ワンカット的描写と先の見えない恐怖感が終始緊張を持続させる一作」ウトヤ島、7月22日 yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ワンカット的描写と先の見えない恐怖感が終始緊張を持続させる一作

2024年7月30日
PCから投稿

2011年にノルウェーで起きた連続テロ事件の舞台の一つ、ウトヤ島での襲撃事件を、その被害者の視点で描いた作品です。

一人称視点に近い画角のカメラワークと、ワンカット(おそらく適宜カットごとをつないでいるので、「ワンカット”風”」という表現のほうが妥当なんだろうけど)の映像が、観る側の緊張感を否が応でも高めます。

さらに日本では、ウトヤ島の事件がどのような結末となったか、詳細を知る人は少数でしょうから、この事件の帰結がどうなるのか、先行きの見えない不安がさらに恐怖感を高めます。

作品本編でも状況説明はごくわずか。ウトヤ島に滞在している若い男女(政治団体の党員たちなんだけど、単なるキャンパーたちの集まりのようにも見える)が、冒頭からいきなり銃声を浴び、逃げ惑います。

作中では断続的に続く銃声と悲鳴が聞こえたり、目の前を襲撃者から逃れる人々が通りすぎる描写が大半で、主人公のカヤ(アンドレア・バーンツェン)と同様、何が起きているのか観客にはほとんど理解できません。襲撃犯の姿も、ごくわずかに影らしいものが見えるのみ。

このように本作は、テロの背景を掘り起こす、というよりも、明らかに突然テロに巻き込まれることの恐ろしさを仮想体験させることに主眼を置いています。本作を踏まえてノルウェーの連続テロ事件の概要、そしてウトヤ島で実際に何が起きたのかを知りたい場合は、『7月22日』(2018・ドキュメンタリー)などの作品の鑑賞をおすすめします。

yui