未来を乗り換えた男のレビュー・感想・評価
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日本人には理解し難い向かないね
『東ベルリンから来た女』などのクリスティアン・ペッツォルト監督作品なので大変に楽しみにしていたんだけど・・・・
まずは、何の説明もなく始まったので、本作品「何時の時代の話?」第二次世界大戦の話にしては、建物が現代ぽいし、しかし、現代かと思うと、携帯電話などは出てこない・・・・
どうも、原題である「トランジット」と言う小説が、1940年代(第二次世界大戦)のユダヤ人迫害と現代の難民問題などを現在に舞台を変えてその人間模様や恋愛を描いた作品・・・・
しかし、日本人には、ユダヤ人迫害や難民問題もあまり身近ではないので、ピンとこないかな・・・・
もう少しスリリングに描いてくれるのなら、侵攻してくる軍隊の恐怖や亡命の難しさだけでも伝わるけど、結構お話が淡々として、作りも淡々としているので、「う~ん」、日本人にはなかなか理解しにくいかな・・・・
もう少しスリリングに出来ていればね・・・・
昔も今も、人が人を排斥する現実
今、ヨーロッパで起きている難民排斥問題について、いろいろと考えさせられた作品だった
1942年の第二次世界大戦下のドイツで、迫害に遭った小説家アンナ・セーガースが亡命先のマルセイユで執筆した小説「トランジット」を、現代を舞台に置き換えて映画化した作品
その「トランジット」が書かれた1942年当時、迫害と言えば、ナチスドイツがユダヤ人を迫害していたことを思い浮かべる
そして、誰もが、ユダヤ人迫害なんて、二度としてはいけないことだと思うし、ナチスドイツは悪だと思うはずだ
しかし、その話を現代に置き換え、迫害されているのは誰かと考えると、それはヨーロッパに入ってくる難民であり、移民なのである
しかし、そのことに対して、誰もファシストだとは言わないし
(言っている人がいても、大きな声にはならない)
難民や移民が連行されても、当然だと思っている人もいる
この映画は、時代設定や、迫害されている対象を曖昧にし、
さらに、主人公を国を追われてフランスに逃げ込んだドイツ人にしている
そうすることで
現在のヨーロッパでは、いつ、どこで、誰が迫害され、住む場所を追われるかわからない状況にあることを表している
そして、その言葉通り、主人公ゲオルグが出会った人にたちは、次々と姿を消していくのだ
そこで思う
国家や、国境というのは何のためにあるのか
もしも、ドイツ人が、フランス人のIDを盗んでフランス人になりすますことができるなら、そもそも、そんなIDなんて必要ないのではないか
フランス人になりたい人がいて、密入国をした上で、自分と近い年頃のフランス人を殺して、その人なりすますことも可能ではないのか
それよりも、その国で暮らしている人たちが、そこで生活をしていられるのであれば、排斥する必要はないのではないか
生まれた国を追われたり、生活していくことが大変になってしまった人が
他の国で暮らすことに居心地の良さを感じているなら、そこで暮らせるのが一番良い
しかし、今のヨーロッパでは、それが許されず
何も罪を犯していないのに、連行され、中には命を落とす人もいるのだ
そんなヨーロッパの現実をヒシヒシと感じた作品だった
そして、これまで「どんな人も受け入れる」と言っていたアメリカまで、その門を閉じることになれば、移民や難民は、行くあてを失ってしまう…
とても抽象的な作品で、観る人によって受け取り方が変わる作品だと思うけど
「人が人を排斥する現実」について、考えずにはいられない作品だった
決して、他人ごとでなく「それが自分の身に起きたら…」という目線で観たい作品だった
今だからこそ
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