「様々な解釈を容認する美しくもグロテスクなSF」アナイアレイション 全滅領域 よねさんの映画レビュー(感想・評価)
様々な解釈を容認する美しくもグロテスクなSF
元従軍科学者のレナは詳細不明の長期任務に就いていた夫、ケイン軍曹の突然の帰宅を喜ぶが、どこか様子がおかしいケインは吐血。救急車を呼んだレナは搬送中に武装した男達にケインとともに拘束されて連れていかれた先はブラックウォーター国立公園、そこには3年前に飛来した隕石によって出現した正体不明の光シマーで囲まれた謎の領域エリアXがあった。シマーは少しずつ領域を広げており、ケインはそこに送り込まれた調査隊の唯一の生存者だった。レナは危篤状態となったケインに何が起こったのかを突き止めるため調査隊に志願しエリアXに足を踏み入れる。
SFサスペンスの傑作『エクス・マキナ』で監督デビューしたアレックス・ガーランドの2作目。生態系がランダムに変異した異世界での冒険譚ながらアクション要素は殆どなく、時制を前後する映像と登場人物達の断片的な会話でレナの深層心理を掘り下げていくかなり哲学的な物語。星野之宣が描いたSF諸作のような美しくもグロテスクな世界で翻弄された登場人物達を待ち受ける宿命の向こうにぼんやりと浮かぶ命題と様々な解釈を容認するオチが深い余韻を残す冷たくも美しい一品でした。
コメントする