「ジョンコルトレーンは宇宙船をもっていて、何処へでも行けた。」ジョン・コルトレーン チェイシング・トレーン 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
ジョンコルトレーンは宇宙船をもっていて、何処へでも行けた。
実像をほぼ知らず、「薬物」、「短命」、それだけのワードで他の多くのミュージシャンのようにクスリに溺れて転落した人生、と思い込んでいた。それは大きな間違いだった。
若いころ、あまり体裁の上がらない風貌のコルトレーン。そこに差し込まれる、賞賛ばかりのインタビューの数々。そのギャップに少々戸惑った。しかし、薬物を克服してからの彼の表情の精悍さったらまさにカリスマ。そしてそれは音楽だけにとどまらず、平和の使者でもあった。彼が長崎を訪れ、被爆者たちに暖かいまなざしを捧げてくれていたことに感銘を受けた。それはかつて迫害を受けた黒人社会に身を置いていた彼ゆえの共感だったのだろうか。映画のなかでも、さらにはクレジットに連なった名前にも、多くの日本人が関わっていた映画だった。
鑑賞後、車でも部屋でもずっとかけ流しのままのコルトレーンは、彼の人物の輪郭を伴って、今までと全然違って聴こえてくる。
コメントする