グッド・ヴァイブレーションズ
劇場公開日:2019年8月3日
解説
「THE UNDERTONES」などのパンクバンドを世に送り出した北アイルランドのレコード店&音楽レーベル「グッド・ヴァイブレーションズ」の創設者テリー・フーリーの実話をもとに描いた音楽ドラマ。1970年代。紛争の真っただ中にある北アイルランドでは、ツアーにやって来るミュージシャンが激減し、音楽産業は衰退の途をたどっていた。そんな中、客の来ないナイトクラブでDJを続けるテリーは、運命の女性ルースと出会って結婚を決意し、生計を立てるためベルファストにレコード店「GOOD VIBRATIONS」を開店する。ある日、パンクロックに夢中な若者たちが夜な夜なライブハウスで演奏していることを知ったテリーは、興味本位で見に行ってみることに。理不尽な国家権力にパンクロックで団結・抵抗する若者たちの姿に感動と興奮を覚えたテリーは、そこで出会ったバンド「RUDI」の演奏にほれ込み、自らレーベルを立ち上げて彼らのレコードをリリースする。「GOOD VIBRATIONS」の名は瞬く間に北アイルランドのパンクスの間に広まり、テリーの元には様々なバンドが集うようになるが……。主演は「ベルファスト71」のリチャード・ドーマー。
2012年製作/103分/PG12/イギリス・アイルランド合作
原題:Good Vibrations
配給:SPACE SHOWER FILMS
スタッフ・キャスト
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2022年7月13日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
アイルランド紛争渦を駆け抜けた、パンクムーブの物語。
チャートを駆け登ったバンドや楽曲が流れる訳でもなければ、主人公も少し丸い中年。舞台も紛争下のベルファストなので街も砕けているし影がある。
だけど実に輝きに満ちているんです。
実在した“ベルファストパンクのゴッドファーザー”テリー・フーリーがモデルで、とにかくその熱量がものすごい。
当時のフィルムも差し込まれるのですが、これが実に凄惨です。
幼少期の失明。宗教や政治思想による対立。
マイアミショーバンド事件も絡めるなど、常に先の見えない緊張下にありながらもまるで下を向かない。
それら全部“ロックとは全く関係ない”とばかりに突っ走るんですね。
レコード店を作り、パンクに夢中になり、レーベルまで立ち上げてしまう。
年齢や思想や立場も関係なく同じ音を愛する。
それはもう気持良いほどに、最初から最後までロックンロールなんです。
エンドロールではボウイを始めとした歌たちと、それと数々の写真がすごいマッチしてるんですよ。
何というか、10代の自分がうすうずして顔を出してくるようでした。
音楽、ロックンロール、パンクが好きな人には是非観てほしい作品です。
グッドヴァイブレーションズ それは生き方なんだ
2022年4月2日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD
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情熱は伝わってきた。
奥さんとの出会いは漫画みたいだったけど(笑)
先日観た「ベルファスト」はまさにこの頃の紛争がテーマだった。
隣人から突然襲われる、というのは本当に日常的にあったようだ。
それにしても紛争ストリート?でレコード店を開くとか、怖いもの知らずというか、無茶苦茶で子供みたいなテリー。
どんな時代でも音楽には不思議な力があるらしい。
いつも全てを否定する父親だけど、暴漢に襲われて怪我をしたテリーに「本当の勝利は他人が決めることじゃない」とサラッと励ますかのようにかけた言葉が沁みた。
なんだかんだ言いながらも貫き通したことを否定しなかったのは良かったな。
身重の奥さんを放っておいたり、産院で赤ちゃんを抱かなかったりしたのはひどいなと思ったけど、奥さんの方が数倍大人で、大きな子供と思えば怒りもないのかな。
結局最後まで子供と接するテリーは見られなかった。
長引く紛争の中、ベルファストの若者は果たして音楽から希望を持てたのだろうか。
※マイアミ・ショウバンドの悲劇を知らなかったので、遅ればせながらネトフリで配信中の「リマスター:マイアミ・ショウバンド」も観てみようと思う
2019年9月26日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館
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1966年のアルスター義勇軍 (UVF)によるテロ行為の開始から、1998年のベルファスト合意までの間を「北アイルランド紛争」と、勝手に俺的に定義すると。映画の終わりにテロップで紹介された紛争による犠牲者数は3,000人。大凡30年間の間に3,000人の命が、あの、狭い狭い北アイルランドの中で奪われていただなんて、知りませんでした。本当の戦争だったんですね。
途中挿し込まれる当時のニュース映像と音声は衝撃です。メインストリートが「爆弾通り」と呼ばれ、イギリス正規軍が警察に替わって治安維持に就く、このベルファストの街で。どんなに小さい若者文化でも良い。みんなの心に希望の灯りをともし、この街につなぎ留め、他所の人々の目をこの街に向けさせる。そのためにレコード店を開き、パンクバンドのドーナツを作る。
「Good Vibrationsは生き方だ」
北アイルランドパンクのゴッドファーザー、 テリー・フーリーはステージ上で叫びます。俺の生き方だ、俺たちの生き方だ、と。何か、観終わってからジワジワ来てます、来てます、来てるって!逃げない男の、いや、逃げ方を知らなかった男の成功物語。
「成功ってヤツは、誰かが決めるもんじゃない」。選挙に12回落選した、マルクス主義の父親の言葉が、フーリーの背中を押す。パンクな生き方をするフーリーを、結局は理解し勇気づけ続けたのは、出会った最初の晩で恋に落ちた妻のルース。フーリーへの「愛」と、生き方への「共感」の合わせ技だもんね。強固。
I saw the light.
義眼の目にも、灯りは見えた。それが俺の成功だ。
ジワジワーーーーっと、良かった!
それとパンクも染めた金髪も、あんまし得意じゃない俺でも、使われていた音楽は良いなって思いました。
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観て後悔は無い映画です。ただの音楽系の映画ではなく、北アイルランドのベルファストでの紛争の陰に、若者達がやり場の無い怒りや社会への不信感をパンクロックと言う形にしてエネルギーを放出する生き様を描いている。社会への抗議や自由主義思想、社会主義思想、愛国思想などではなく、それこそ右も左も中も関係ない自分達は自由なんだ、自由に生きたいんだと言う60年代〜70年代のベルファストの社会背景によって誕生した生き方=パンクロックと言う考え方。それは音楽での成功や社会に認められる事などを目的としたものではなく、いかに自分達らしく生きているかの証明のようなものである。
久しぶりにこういう作品が観れて感動した。以上。