劇場公開日 2019年11月22日

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「ある意味サーミ人にとっての『イングロリアス・バスターズ』」アナと雪の女王2 よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0ある意味サーミ人にとっての『イングロリアス・バスターズ』

2019年12月8日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

アレンデール王国で静かに暮らしていたエルサとアナ。ある日エルサは自分にしか聴こえない不思議な歌声が自分を呼んでいることに気付く。エルサはその歌声の誘うままに旅に出ることを決意するがそれは亡き父が子供の頃に起こった悲劇の真相を探す旅であり、なぜ自分が魔法の力を持つのかを知る旅だった。

エルサとアナの幼少期の思い出から始まる物語は期待を軽く凌駕する楽曲に彩られて貫禄十分。ただ全体の作品トーンはダークで重厚、オラフがボケてボケてボケ倒していた前作とのギャップに戸惑う人も多いかも。

エンドクレジットにもしっかり書かれていたので明白ですが今回の物語はサーミ人の民族運動をモチーフにしているので、忽然と消えた民族ノーサルドラ人の出で立ちはサーミ人の民族衣装そのもの。そして作品丸ごとサーミ人にとっての『イングロリアス・バスターズ』になっているというマニアックな仕様となっています。

エルサとアナの物語はミュージカル版『〜帝国の逆襲』&『〜ジェダイの帰還』みたいな血が滾るエモーショナルな展開、オラフのボケが鳴りを潜めた分各キャラクターの内面がグッと掘り下げられていて、特にクリストフが思いの丈を歌い上げる『恋の迷い子』は圧巻ですし、あろうことかオラフにもきっちり泣かされます。

台詞の端々に現代風刺をきっちり滲んでいて、何度も何度もコスられる「正しきこと」には深く考えさせられますし、恐怖心こそが諸悪の根源であるという言及は対テロリズムの決意表明であり侵略に怯えて虚勢を張る某国の態度を揶揄しています。

要するにビックリするくらいヘビーな作品なので、ひょっとするとお子様方はドン引きかも。とはいえどの曲もメチャクチャクオリティが高いのでサントラ購入は必至ですね。エンドクレジットにかかる別バージョンもグッときます。吹替版の上映が圧倒的に多いですがやっぱり最初は字幕版で観るべき、その後理解を深めるために吹替版で再鑑賞というのがいいと思います。

よね