「色んな意味で、“キング”」ライオン・キング 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
色んな意味で、“キング”
今年3本目となるディズニー・アニメの実写作。
『アラジン』が予想以上のメガヒットとなり、それだけでも充分だが、おそらくディズニーにとっても世界中の期待としても本作が真打ち。
公開当時、アニメ映画史上ナンバーワンのヒット。
雄大な生命の物語。
ミュージカルにもなり、日本では芸人のネタにも。
ディズニー・アニメ屈指の“キング”作。
良く言えばアニメに忠実、悪く言えばただなぞっているだけの焼き直し。
脚色や新解釈も無くオリジナリティーには欠けるが、変に色付けするよりこのお馴染み感がいい。
まだまだ未熟。それ故の失敗、犯してしまった取り返しの付かない悲劇。
過去を捨てる。全てを捨てる。
が、必ず己の運命と向き合う時が来る。
自分は何者か。
闘う。守る為に。
王の帰還。新たな王の誕生。偉大な王として。
『アクアマン』もそうだが、この手の王物語は個人的に大好物。
日本では兼ねてから『ジャングル大帝』に酷似してると度々指摘されているが、このエモーショナルな物語にはやはり心揺さぶられる。
当初は耳を疑った実写化。
でも再びジョン・ファヴローが手掛け、あの『ジャングル・ブック』の技術力を以てすれば、なるほど不可能ではない。
色々言われているが、この圧倒的超リアルな技術と映像を見せ付けられたら、何も言えない。
動物たちの毛並み一本に至るまで!
子供の頃のシンバのモフモフ感(とキュートさ)。
表情、細かな仕草、躍動感溢れるアクション…一挙一動に目が釘付け。
広大な大地、山々やジャングル、陽光や星空も全てCGだが、実景にしか見えない。サバンナのド真ん中に居る錯覚にさせられるほど。
まさに、“CG・キング”。
そんな中で、開幕シーンだけ実景で、ここは見逃せない。
実写になっても生き生きとした動物たち。
やんちゃな子供から勇ましい新王へと目覚めるシンバ。
威厳と人格たっぷりのムファサ。
アニメ以上に“THE悪役”なスカー。ありゃ誰がどう見たって何か陰謀企んでるって!(でもスカーは、個人的に特に好きなディズニー・ヴィラン)
そしてお馴染みプンバァとティモンは、変わらず愉快で楽しいコンビ。
アニメの名シーンも勿論。
代名詞とでも言うべき有名なOP。
ヌーの暴走。ムファサの死。
シンバが天上の父と対話する幻想的で荘厳なシーン。
そしてクライマックス、炎の海をバックに繰り広げられるシンバとスカーの闘い…。
超リアル映像で再現される名シーンの数々に、鳥肌・興奮・感動。
忘れていけない作品を彩る名曲の数々。
何と言っても、OPの雄大なサバンナをバックに流れる名曲『サークル・オブ・ライフ』。このシーンをこの曲を、再び劇場大スクリーンで見られただけでも価値あり!
オスカー受賞の『愛を感じて』や愉快な愉快な『ハクナ・マタタ』も。
でも惜しむらくは、新曲も書き下ろされたが、その新曲が『アラジン』のようにそれほど印象に残らなかった事。
監督ジョン・ファヴロー曰く、アニメーションでも実写でもない。
日本では専ら、“超実写”なんて宣伝で使われている。
『ジャングル・ブック』もそうだが、果たしてこれは実写なのか? 超リアルなアニメーションなのか?
ただ技術力を試し、金を稼ぎたいだけなのでは…?
あちらこちら批判的な声も。
これが(失礼ながら)『ダンボ』みたいに期待外れだったら仕方ないが、本作はさすがの面白さ。見て損は無いエンターテイメント。
今じゃ多くの方がご存知だが、実はライオンは動物界の頂点に君臨出来るほどそんなに強くはない。
ゾウやキリンは勿論、一対一なら時にシマウマにすら敗れる事も。
リアルに“アニマル・キング”なら、ゾウやラーテル、カバやワニ。
でもそれじゃあ、イマイチ様にならない。
やはりライオンには、王に相応しい風格がある。
それは、作品にも。
だからこそ皆、時が経とうとも、アニメでも実写になっても、偉大な“ライオン・キング”に魅せられるのだ。