「クララ・イン・四つ国物語」くるみ割り人形と秘密の王国 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
クララ・イン・四つ国物語
名作童話を基に、チャイコフスキー作曲のバレエ劇としても知られる『くるみ割り人形』をディズニーが映画化。
こりゃまたディズニーから魅力的なファンタジーが生まれたと思いきや…。
聡明で好奇心旺盛な少女、クララ。
一番の理解者だった母を亡くし、父との関係はぎこちない。
名付け親主宰のクリスマス・パーティーに出席した際、母の遺した卵型の入れ物をプレゼントされるも、それを開ける鍵をネズミに盗まれ、探す内に不思議な世界に迷い込む。
お菓子と花と雪と、もう一つ。4つの王国。
そこは、母が創造した世界。母はその世界の良き女王であった。
が、今、もう一つの国=遊びの国が反乱を起こし、危機に瀕している。
クララは母が創造したこの世界を救う事が出来るのか…?
少女の冒険。
異世界で出会った友情。
成長。
母の愛。
父との和解。
イマジネーション溢れる世界観。
豪華絢爛な映像、美術、衣装…。
THEディズニー・ファンタジー!
ディズニー印で無難に楽しめるのは楽しめる。
…のだが、
何だか今一つ心満たされない。
何処かで見た話、世界観の繋ぎ合わせ。
スバリ言ってしまうと、『アリス・イン・ワンダーランド』×『ナルニア国物語』。
物語は豊富な要素を詰め込んでいるが、その一つ一つが薄味。
行動力があって意志が強そうに見えて、実は結構自己チューなクララ。
不思議の王国で母の秘密と真実を知る…なんて大層に謳われているが、それって単にこの世界の事…?
ラストの父との和解なんて、取って付けたようなもの。
展開も早過ぎ。
クライマックスの見せ場であろう闘いも盛り上がりに欠ける。
ヴィランとの決着も呆気ない。
王国では実はある人物が陰謀を企み…という“捻り”もすぐ察しが付く。
そもそも、元の『くるみ割り人形』(正確には童話の『くるみ割り人形とねずみの王様』)の話をよく知らないから惹かれないのかもしれない。
ちと調べてみたら、大分話は脚色。
元が云々より、本作の演出と脚本にオリジナリティーと面白味が欠如しているだけ。
ラッセ・ハルストレムとジョー・ジョンストンのW監督でありながら…。
クララ役のマッケンジー・フォイの美少女ぶりは見てみる価値あり。
クララに仕える…というより友情を育むくるみ割り人形の姿をしたキャプテンはナイスキャラ。
“ヴィラン”ヘレン・ミレン、“良き妖精”キーラ・ナイトレイらが一見ステレオタイプのようにも思える奇抜なキャラを演じているが、本領発揮とは言えず。
また、バレエでも有名なのだから、圧巻のバレエ・シーンも用意されているかと思ったら、肩透かし。
序盤にちょっとと、EDシーンだけじゃねぇ…。
巧みに物語に織り込めなかったものか。
尺は100分ほど。
見易く、先にも述べた通り無難には楽しめるが、う~ん…全体的に物足りない。
知名度のある作品を基にしたディズニー・ファンタジーでありながら、日米共に不発も何だか納得。
劇場で観に行こうか迷ったが、結果、レンタルで充分であった。
…どーでもいい事だけど、
最後は勿論王国を救い、ハッピーエンド。
きっと王国中、こう喜んでいるだろう。
クララが立った!
…あ、じゃなくて、
クララが救った!
…なんてね。