「「責任と誠実が問われる時──映画『来る』が経営者に突きつける真実」」来る 林文臣さんの映画レビュー(感想・評価)
「責任と誠実が問われる時──映画『来る』が経営者に突きつける真実」
映画『来る』は、人間の内面に潜む恐怖と絆のもろさを描いた異色のホラー作品である。ただの心霊現象や怪異を描くホラーにとどまらず、登場人物それぞれの“逃げたい現実”や“隠したい本音”をえぐる描写が印象的だった。
経営者としてこの作品を観ると、見えてくるのは「人の弱さが周囲に与える影響」である。物語の中心にいる主人公・田原は一見、家庭も仕事も順調そうに見えるが、内面には責任感のなさと逃げ癖がある。その不誠実さが、家族や周囲の人間関係を壊し、結果的に大きな「悪意」を引き寄せていくのだ。
これは経営においても言える。組織やチームを束ねる立場である経営者が、表面上だけ整っていても、内側にある未熟さや利己心を見て見ぬふりをしていれば、やがてそれは組織全体のほころびとなって表れる。とくに「独立支援」など、誰かの人生を左右する支援事業に携わる場合、自分自身の在り方がそのまま支援の質に反映される。中途半端な覚悟では、人を導くことなどできないという重みをこの作品は突きつけてくる。
また、終盤に向かって複数の霊媒師や専門家たちが協力して“見えない力”に立ち向かっていく場面は、まさに異業種連携・共同プロジェクトのようだった。孤立ではなく、信頼関係と役割分担が危機を乗り越える鍵となる。
『来る』はホラーという枠を超えて、経営にも人生にも通じる「責任」と「誠実さ」の重要性を教えてくれる。怖いのは幽霊よりも、自分の中にある見たくない本心かもしれない──そう気づかされる作品だった。
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