「親への警告映画」来る MAPLEさんの映画レビュー(感想・評価)
親への警告映画
原作を読まずに、どういう話なのかカケラも知らず、怖いというキーワード以外わからずに見た。
山にいる凶悪な得体の知れない化け物が、愛されていない子供を呼び寄せ、その子供を使って、弱い心を持つ人間を襲いに来る。これが大筋?
そして、子供は、虫を殺したりと言った無意識に生と死の境目に惹かれる一面を持つから、化け物「あれ」に狙われるのか?
かつては大人による口減らしの言い訳に、架空の化け物の存在を作り出し子供に言い聞かせていたが、架空ではなく本当に「あれ」はいるという事はわかった。
よく分からないのは、妻夫木扮する秀樹がいつから「あれ」に狙われていたのか。
小学生くらいの頃、酷い母親を持つ幼馴染みが「あれ」に呼ばれていなくなり、自身も幼い頃に家の玄関口に「あれ」が来て祖父母が生死を不気味に彷徨う様子を目撃した経験を持つ。どうしてその時に餌食にならず大人になるまで生き長らえたのか?なぜ、電話越しでの琴子によるお祓いは失敗して、秀樹は死んだの?
嘘つきは幼馴染みが連れ去られるより以前からのようだけど、幼少期の経験がもとで、からっぽの人気者キャラに自分を仕立て上げるようになったのだろうか?
幼馴染み同様、親から愛されなかった香奈に惹かれ結婚したのは「あれ」のせい?香奈との子供に、幼馴染みと同じ千紗という名前を無意識に付けてしまったのも「あれ」のせい?千紗に「あれ」が乗り移ったのは、産まれて両親に愛されなくなってから?それとも、産まれる前から「あれ」が影響しているから泣き止まず手がかかる子だったの?
妻の香奈は生い立ちのせいか暗いから「あれ」に付け込まれたの?「あれ」が絡む前から、秀樹のかりそめのイクメンブログにかき回されて実際は1人で全てを背追い込み、育児鬱気味だったのか、とっちらかった汚部屋。秀樹の友達の津田と浮気をしている。それは、津田が実は、見栄っ張りでからっぽの秀樹から様々奪うのが昔から好きで、秀樹と香奈の家に悪いお札まで置いて一家を崩壊させ、香奈を秀樹から奪うのを狙っていたせい?
その津田が死んだのは、お札を燃やされたから跳ね返りで死んだの?秀樹の同僚は何が悪くて死んだの?
色々と疑問が残る構成なのだが、あえてのオムライスシーンで、千紗本人の中身はいたって無垢で邪念がない事を示している。
彼女との子を中絶させて子供を殺した経験を持つ岡田准一と、破茶滅茶な生き方で自傷行為により子供を産めなくなったマコトが、かえって一見真面目でまともに見える秀樹や香奈や津田よりも、真実を見る目を持ち、子供を大切にしようとする意思も強かった。
SNSに垂れ流して築いている自己イメージと実際のギャップ、人に見せている顔と本音の中身が違うギャップ。人は様々な2面性を持つが、心の弱さはおかしなものに付け入られて不幸を呼び込むもと。そして、虐待されて育つとバランスの取れた心が育たず、無意識に不安定な情緒となり、そこに付け入るような心の弱い人間が周りに寄ってしまい、また虐待を繰り返してしまう。
だからこそ、
命を、子供を、見かけだけでなく本当の意味で大切にしていますか?
と、中絶やSNSが横行する社会を風刺し警告を与えるような作品だったと捉えた。