「緻密な余計な一言」来る ドラゴンミズホさんの映画レビュー(感想・評価)
緻密な余計な一言
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その一言が人を傷つける。その何気ない考え無さが誤解と憤懣を生む。緻密に人間の裏表を描く中島節は健在で、前半のドラマは引きこまれた。しかし、いかんせんホラーとしての面白さや怖さに欠ける。
●原作は不気味な「ぼぎわん」が迫っている事が恐ろしかった。「ぼぎわん」という固有名詞を与えた事で、モンスター性が高まった気がする。映画はあまりそこを取り上げない。タイトルが「来る」なのだから。だから不気味さや危険性を感じない。
●お化けの出し方も怖くない。固有の形が無く、それでいて影だの音だの騒がしい。ある種、子供の肝試しのような脅かし方だ。原作はまるで違う。戸の向こうにぼんやりと立って「ごめんください」と言う。人か?人にしてはおかしい…。訪ねてくるのが人でなかったらって恐怖は誰でも想像したことがあるんじゃないかな?
●最後の対決は原作にはない盛り上がり方で、工夫が見られた。が、やはり怪物の出し方がつまらない。いや、そもそも原作の口が襲ってくる怪物もそのまま映像化したらマヌケに見えるかもだが。でも観客としては怪物の姿がどのような物か期待していると思う。最後まで「来る」が何なのかわからず消化不良、といったところか。
ホラーとしては不満だが、裏表のある人間ドラマとしては楽しめた。
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