「この半世界の片隅で」半世界 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
この半世界の片隅で
劇場時はこちらでは上映されず、レンタル時も阪本順治監督作ながら何となくスルーしていたのだが、国内映画賞で軒並み高い評価や受賞し、慌てて鑑賞。
当初は何となく見ていた感じだったが、見終わったら、じんわり心に残る良作だった。
ある地方都市。炭焼き職人の紘。
何となく父の後を継ぎ、家族は居るが、妻任せ。息子が学校でいじめに遭っている事も知らず…。
そんなある日、中学の同級生で自衛隊員の瑛介が退官し、帰郷して来て…。
紘と同じく地元暮らしの光彦も誘い、酒を飲み交わす。
談笑し、久々の再会を楽しむ同級生3人。
あの頃と変わらず…と言いたい所だが、彼ら一人一人、その周囲、大きく変わっていた。
紘は先述の通り。
光彦は一見明るいが、紘の事をよく気に掛け…。自身も妻との間に子供が居ない事を気にしている。
そして、瑛介。退官と離婚をして、突然の帰郷。しかし、それだけではない。何か、あったようだ…。
少年時代ならぬ“中年時代”。アラフォー目前の男たちのほろ苦い青春ドラマ。
それぞれ心に傷を抱え、何かしら背負っている。
友情を確かめ合い、家族との関係や自分の人生を見つめ直していく…。
世界は国家間の紛争と、もう“半分”の世界で出来ている。
市井の人々が営む“半世界”。
そんな視点から阪本監督が築き上げた半世界(=オリジナル脚本と演出)に、見ている内に自然と身が委ねられていく。その手腕はさすが。
役柄はキャストに当て書き。
稲垣吾郎の素のような等身大の好演。
渋川清彦のこんな友人いるいる感。
長谷川博己の複雑な巧演。
3人の味わい深い演技や個性派・実力派・ベテラン揃う中、紘の妻役の池脇千鶴が印象的。
母として息子を気遣い、妻として夫に“今日もおバカ弁当”を作るなど辛辣でもあり、田舎の良妻賢母をリアルに体現。紘もこんな出来た女房が居るからついつい何となく甘えてしまっているのかなぁ、と。また、終盤のあるシーンでは夫への愛情を滲ませ、感動させる。
内助の功。
息子はいじめに立ち向かう。
不器用ながらも再び家族と距離を縮める紘。
ある悲劇を自分のせいと責め続ける瑛介。
この半世界の片隅で、細々ながらもしっかりと…。
それはあまりにも突然の別れ。
自分は自分の人生を生きて来られたのか、これから自分の人生を行けるのか。
出会いと別れ、交流、再スタート…。
悩み、触れ合い、見つめ直し、見出だしながら、
この半世界を生きていく。
少々この場を借りて…
今日まさに、米アカデミー賞で『パラサイト』が史上初の大快挙を成し遂げた。
驚きと共に同じアジア人として嬉しく誇らしくもあるが、激しい嫉妬も。
これでまた日本映画は韓国映画に差を付けられた。
いや勿論、日本映画だって本作のように良作はたくさんある。
しかし、日本映画全体に訴えたい。
日本映画、何やってんだ!
本当にこのままでいいのか!?
本作の台詞を借りるなら、甘ったれるんじゃねぇ!
邦画の歴史からして衰退する一方なんですよね。
もう日本はアニメしか評価されていないし、そのアニメを実写化するとか訳のわからんことばかり。
頑張ってるこのような映画が埋もれてしまってかわいそうなくらいです(^-^;