「心地好い時間を過ごせる作品。」半世界 マツマルさんの映画レビュー(感想・評価)
心地好い時間を過ごせる作品。
BSの映画紹介番組で紹介されて興味が出たのと、観た人の評価が高い事もあり、鑑賞しました。
感想はと言うと、良い。
面白いと言うか、こういう作品は割と好きなんですよね。
40代に手が届こうかと言う同級生の男3人の物語で、お話は割と淡々と進んでいきます。
所謂、作品の世界観や雰囲気を楽しむ作品ですが良いんですよね〜。
稲垣吾郎さんが見た目はカッコいいけど、普通の等身大の中年に差し掛かって、家族も抱えて、仕事を黙々とこなしながらも不器用な男性を演じてますが、今までの稲垣吾郎さんのイメージと違って、こんなにも普遍的な役柄を演じられるとはとちょっとビックリ。
この作品って、稲垣吾郎さんの役者としてのターニングポイントになるんではないでしょうか?
主人公は稲垣吾郎さん演じる紘ですが、物語の起伏を生むのは長谷川博己さん演じる瑛介と息子の明。
ラストのオチは正直ビックリしましたが、それ以外はホント淡々と進んでいきます。
田舎に住んでいながら、自身の仕事の先行きや現状に思い悩むのはホントよく解ります。
家族に気持ちが回りきらないのも、無関心と言うよりかはそこまで余裕が無いのもよく解る。
多分、30代後半から40代の男性なら共感出来る所が多々有るんではないでしょうか。
炭焼き作りの仕事、観ているだけでも大変そうと言うのが解ります。親の仕事を継いで昔ながらの良い物を作ろうにも時代の流れから徐々に排他されていく感じ。黙々としながらもやるせなさを感じます。
生まれ故郷に瑛介が帰ってきても、そこには様々な苦労があります。
都会には都会での仕事の苦労はあるし、田舎には田舎での仕事の苦労がある。
何処にいてもそれぞれの世界はあるけど、それだけが全てではないし、かと言って自分の知らない世界はやはり何処か知らない世界な訳ですから、タイトルの「半世界」と言うのは、絶妙な題名かと思います。
いろんな思いに馳せながらも共感出来るんですが、ラストのオチは個人的には正直ビックリし過ぎて、ちょっと納得は出来ないかな。
普通に起こりうる出来事なんですが、この終わり方には些か強引な感じがしなくもないです。
もっと、それよりも紘、瑛介、光彦の交流や嫁の初乃や明との家族の時間を観て、心地好い時間を過ごしたかったかなぁと。
ホント、そこだけ。
映像も綺麗だし、何かしら悩みや不安、傷を抱えながらも地元で不器用に生きていく人々の生活がいとおしい。
作品の伝えたい事は映像から感じ取って、各々が答えを見出だせば良いのではと言うのが阪本順治監督のメッセージかなと感じました。
ホント、ラストだけは個人的に…ですがw、心地好い時間と余韻に浸れる、良い作品かなと思います。