「スパイダーバースの布石?便乗商法の匂い」ヴェノム うそつきカモメさんの映画レビュー(感想・評価)
スパイダーバースの布石?便乗商法の匂い
いくつかある映画の弱点は
・物語が弱い
・主人公に共感できない
・映像がしょぼい
・ヒロインが美しくないし、足を出すファッションが似合ってない
・強い敵がいない
・スパイダーマンが登場しない
・ラストのおまけ映像(アニメーション)の内容が物議を醸す
と言ったところか。
まずは物語の弱さ。大きなストーリーの軸というものが存在しない。宇宙から採ってきた新生物との共生関係によって超人的な力を得た主人公が、ヴェノムとなり、彼の能力を欲しがる邪悪な企業との戦闘を繰り広げる。国家でも、軍隊でも、種族でもなく、企業が敵。この時点で、物語が決定的に弱い。ちょっとゆがんだ価値観を持ったCEOを、こらしめてやろうか、ってな展開にしかならない。なおかつ、映画の主題であり、最も魅力的な存在であるはずのヴェノムについて、ほとんど何の説明もなされない。かいつまんで言うと、「宇宙から来た生物が、エディにくっついて、無茶苦茶に暴れまわる」それだけの物語なのだ。
原作の由来である、スパイダーマンとの因縁については一切触れられず、この世界にはおそらくスパイダーマン自体存在していないようだ。そこは、映画にとって些末なことで、凶悪な新生物が暴れまわる映画なんて、痛快できっと楽しいぞ。程度の浅はかな企画意図しか見えてこないので、かなりがっかりする。確かに、スパイダーマンを出すことは、今となっては『アベンジャーズ』に絡む難しい問題を避けられなくなり、どうしてこの映画を企画したの?なんて言う自問自答を繰り返すことになる。
と思ったら、エンドクレジットのあとの、謎の短編アニメーションだ。スパイダーバースを、ソニーピクチャーズ独自に展開していきたいという、意思表示の表れ。映像の出来は『ベイマックス』に近いクオリティだったが、はっきり言って、それがヴェノムとどう関係あるのさ?ヒットしたら、続編とともに、この世界観を見ることが出来ますよ?というプレゼンテーション。
やっつけで作った本編の映画に、一見魅力的でいて実は中身のない提案を混ぜて、「僕たちと友達になろうよ?」作戦には、もう辟易としている。それを、マーベルのはじっこの方で、チマチマとやっていることに対して非常に腹立たしい。すでにDCユニバースが破たんしかけているように、○○ユニバース展開は集合した時に最大の力を発揮しなかったら意味がない。
それとも、この映像は『アベンジャーズ』が完結した後の、次世代のマーベル映画の布石だとでも言うのか?いずれにしろ、『ヴェノム』のヒットにより、ソニーピクチャーズと、マーベル映画の独自のユニバース展開があと2作品ほどは続くようだ。
2018.11.6