「旨いんだけど喰い足りない!」ヴェノム 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
旨いんだけど喰い足りない!
『スパイダーマン』原作での超人気ヴィラン(悪役)、
ヴェノムのスピンオフ作品が遂に登場!
そこまでアメコミ原作を知らない僕は、例えばグリーンゴブリンもDr.オクトパスも
映画で初めて知ったクチなのだが、なぜだか昔からヴェノムの名前と風貌は知っていた。
映画『スパイダーマン3』でも出ていたが、悪役が何人も登場する中でインパクト不足だった気が。
というわけで、ヴェノムさん単独主演で一体どんな
大暴れを見せてくれるだろう?と楽しみにしてました。
まず今回はPG12指定が付いてるんですよね。
そりゃね、これまでMCUで登場したキャラは
そもそも人間食べないし、主人公がロブスターを
踊り食いしたりトイレで○〇したりしないもんね。
普通のMARVELキャラにできないことを平然とやってのけるッ
そこにシビれるあこがれるゥ訳だが、本作最大の魅力はこの
ヴェノム&エディのキャラとユニークでパワフルなアクションだ。
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ちょいと気は弱いけど正義感が強く優しいエディと、
力も気も無茶苦茶に強いけど常識のないヴェノム
(まあエイリアンだし)。2人のやりとりが楽しい!
ヴェノムはモラルを持ち合わせないド悪党というよりは狂暴極まりない獣という印象で、
エディはまるでその猛獣をどうにか社会に馴染ませようと必死の飼い主のよう。
飼い主といっても……エディは基本ヴェノムに振り回されっぱなし(物理的にも)。
高い所はニガテなのに、バイクで飛んだりビルから落ちたりでツッコミもボヤきも必死。
ヴェノムもエディを気に入る中で、高校の悪友みたいなノリで
エディの仕事や恋の悩みに鼻を突っ込みまくって怖かわいい。
そしてアクション!
ヴェノムが暴れ出すまでの前半をじっくり描いた分、最初の大アクションはスゴかった。
熊並みの体躯で豹より速く襲い掛かるくせ、動物的な本能なのかテクニカルな戦いぶりも魅せる。
粘性自在の体を使い、腕を伸ばしてぶん殴り、その腕をプロレスのリングロープのように
利用して技を叩き込み、カーチェイスではロープ&粘体潤滑でヘアピンカーブ!
仇敵ライオットもまた違った戦法をとるのが面白い。
体を柔軟に利用するヴェノムに対し、ライオットは自身の体を槌や鎌のように変形・硬化させて戦う。
ラストバトルはヒーローアクションというより、もはや猛獣どうしのピットファイトだ。
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しかしながら……
アクションはね、良いんですよ。
良いんですけどね! 食い足りないんですよ!
中盤のチェイスシーンはかなり面白いのだが、そこからアクション的な見せ場は
最後も含めて2つ程度で、おまけに折角のクライマックス戦がアッサリ過ぎる!
あと5分くらいあの変幻自在の猛獣バトルを見たかったです。
ヴェノムが同胞を裏切る理由も弱過ぎる。
いや、弱過ぎるというより、もうちょっと説明してほしかった。
きっと元々〝シンビオート”一族は同胞意識が低く、相手を
捕食するよりも協調することに重きを置くヴェノムを、
侵略においては使えない〝負け犬”呼ばわりしてたんだと思う。
で、同じく負け犬意識を持つエディとは馬が合って居心地がよく、意識を長く
同調させるうちに、エディの大事に思うものが意識を伝染したのだろうと思う。
とまあ、物語の流れから好意的にそう解釈したが、そのあたりの描写が
かなり薄いので「なんか負け犬同士で気が合ったから同胞ぶっ殺す」
という主体性の無いキャラになってしまってる気がするし、
最後にエディを庇う展開も思ったほど心に響かなかったかな。
上記の物足りなさもだが、全体的にどうもテンポが早過ぎる印象。
タイトルが出るまでの余裕の無さからして気になっていたのだが、
ひょっとして細かく削られてるシーンとかあるんじゃなかろうか。
音楽もね、従来のヒーローものより若干恐怖映画テイスト
であること以外は特徴も薄く、耳に残らないのが非常に残念。
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以上!
せっかくのナイスキャラ&ユニークアクションなのに、
アクションとキャラ描写の不足や音楽の非個性のせいで
インパクトの弱い映画になってしまった印象。
ぬうううん勿体無い、真っ赤な大殺戮(カーネイジ)が
繰り広げられそうな続編に期待か? だが今回は3.0判定で。
<2018/11/03鑑賞>
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余談:
エンドロール後のあれは、色んな並行世界のスパイダーマンが一堂に会する
『SPIDER-VERSE』の前フリのようだが……(海外では既に予告編が公開されてます)
僕がアニメに関心が薄いというのもあるのだろうけど、本編とテイストが違いすぎるし
CGアニメのクオリティもイマイチだったので正直ガッカリしたというのが本音。
しかも本作、大作映画にしてもやたらエンドロールが長いし、
それでダレ始めたタイミングでのあの予告だったので、尚更ね。
なお、エンドロールも『SPIDER-VERSE』の内容も、本編評価には含めていません。念の為。