「美味しいはずなのに、薄味で物足りない」ヴェノム れーぶんさんの映画レビュー(感想・評価)
美味しいはずなのに、薄味で物足りない
エディとヴェノムのコンビはなかなか面白い。
またこの二人を見たいと思う。
けれどそれは、今作が面白かったからというより、物足りなかったからだ。
面白いはずなのに、いろいろ足りないのである。
設定はあれこれあっても、活かされない。弱点くらいはちゃんと利用されてたけど、それ以外、はて、なにか使われたっけ?
たとえば、ヴェノムがエディを気に入った、あるいは、ちょっとこいつ助けてやろうかと思ったのは、彼も自分の世界では負け犬だからだというのがある。けど、それが分かるシーンがない。
リーダー格のライオットと普通に戦ってるし。ライオットも、ヴェノムのくせに生意気な!みたいなことも言わないし。
それなのにヴェノムはエディに肩入れし、最後は身を挺して(!)エディを守ってくれる。だから正直、パラシュート兼盾になってくれるところも、ぐっと来るより「なんでそこまですんの?」という変な驚きがまさってしまった。
ヴェノムがなんだかんだ言ってもいい奴なのか、それとも今後どう転ぶか分からないのかも曖昧だ。
個人的に、ドラッグストアのシーンは興味深い。ヴェノムという力がないときは棚陰に隠れたエディが、力を得た後は正義を行使するわけだが、これは、力がないときでも勇敢で高潔だったキャプテンアメリカと好対照をなしている。
ヴェノムは、本来ヴィランである。
力を手に入れたエディが、独善的で感情的、自分勝手な正義を振りかざす内に、気に入らない奴は食うというモンスターになったとしても、おかしくはない。
そして少なくとも今作内では、彼等がちょっと怖いけど案外お茶目なヒーローになるのか、モンスターと化していくのかは、まったく分からない。どっちつかずな描かれ方だ。
自分としては、二人が信頼や友情を覚えつつヒーローのように戦うのも見てみたいし、悪に傾いていくとしてもそれもまた見てみたい。
そんなわけで続編は、キャラ紹介しなくていい分尺に余裕ができるんだから、もうちょっと濃いめの味付けでお願いしたいな。