パンク侍、斬られて候のレビュー・感想・評価
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言葉が牽引する前半とは打って変わって、後半は石井の怪物性が炸裂
さてこのどこからどう見てもけったいな代物をどう表現すればいいのか。町田康の文体をナレーション付きで表現するのも極めて難易度の高い創造的作業だが、その難しいセリフまわしを自分のものにして体現する役者たちにもヒヤヒヤ、ドキドキさせられる映画である。本作は町田、それに脚色を手がけた宮藤の技もあって、前半では言葉に牽引される部分が多い。そこに『狂い咲きサンダーロード』や『爆裂都市』で伝説を刻んだ石井岳龍のパワフルな怪物性がニョキニョキと巨大なツノを生やして本性を露わにするのはむしろ後半になってから。そこではもう映像と言葉が完全に調和し、画面がそして身体が自ずと突き動かされるようにスイングを始める。何がどうなるのかは口が裂けても言えないが、頭を抱えてしまうほど混乱と破滅と狂気と興奮に満ちたボルテージみなぎる映像世界には、日本映画界にこの人あり、と指をさしてしまいたくなるほど敬服の思いが沸き起こった。
ぐるぐる
賛否両論が別れる映画っていうのは、良くも悪くも「最高」と「最低」に別れるものである。フツーは。
だが、「パンク侍、斬られて候」はどうだ。こんなに全ての点数が拮抗している映画は滅多にない。
この点数のバラバラさ加減が、この映画への興奮、困惑、嫌悪、礼讃、そしてどれでもない何らかの刺激を示してるんじゃなかろうか。
私の話をすると、茶山さんが登場した瞬間の衝撃と言ったら令和最初の大インパクトだった。
暫く茶山さんの、顔が、顔…ダメだ、笑いが止まらない…!
あれは夢に出るレベルだね。
パンク、なのかは判然としないが、この映画は「滑稽味」を感じる映画だ。作中、猿回し奉行に任ぜられる主膳(國村隼さん!)がなげやりに解説するように、弱い者が強い者に一杯食わせたり、愚か者が賢者を凌駕したり、それらによって翻弄される様を「こりゃあ傑作!」と笑う。
それが芸の醍醐味であり、真髄なのだと。
堅物で正論しか言わない殿にはそれがわからない。
猿が小判を箱に入れる。それだけを淡々と見せられて、何が楽しい?集めるはずがバラ撒いてしまって慌てる猿回しの滑稽さ、猿に小判の価値を説くしょーもなさ、そういう諸々の「余計な部分」を楽しめないなら、猿回しには意味がない。
翻って、本編に対し、さして意味もなさげな大騒動を「滑稽だ」と笑えなければ、この映画を観る意味はないのだ。
御せると踏んでいたニセ宗教の、劣化二番煎じに翻弄される様を楽しめないなら、じゃあ何を楽しむのか?
この物語は、掛十之進という稀代の猿回しを観る映画だ。本当に猿も出てくるしね。
それにしても、茶山さんは最高だ。あんなぐるぐる見たことない。特にまぶたのぐるぐるが良い。
セリフがほとんど「あっ、ああ」とか「おおっ」しかない。それも良い。
多分、半年くらい茶山さんのモノマネだけで楽しい毎日が送れそうである。良かった、良かった。
なぜか無性に好きになった作品
好みが分かれるとは思いますが、私はかなり好きな作品です。
一緒に見に行った人は、私が気に入ったのが不思議で仕方なさそうでした。
あの混沌としたわけのわからなさが好きなのかなあ。
原作からして
無理無理!!映画化なんて無謀この上ない。映画界に喧嘩売ってんのか、相手にされないとわかっているのか?からこそウケるウケる。
たまらなくウケるでござりまするこんちくしょーでありんす。
芥川賞は芸術的な純文学なのーーー!このやろめ。
かなり観る人を選ぶ作品
プライム・ビデオ鑑賞
石井岳龍監督と官九郎の脚本、そこに集まった超絶豪華なキャスト達。
描かれている世界が実にアナーキー、このノリは好きです。
しかし序盤は勢いで突き抜けたものの、終盤はかなりカオス。
最初は風刺が効いていた脚本も、やりたい放題というかただ不思議な世界を見続ける時間になってました。
かなり観る人を選ぶ作品ですが、酔っぱらって見てるとちょうど良い感じでしたよ。
原作ファンのクドカンファンです!最高!
もともと原作を読んで衝撃を受け、町田康さんのファンになり、他の作品も読んでいたのですが
きっかけになったこの作品が、これまた私の大好きなクドカンで映画化するとは、聞いたとき飛び上がるほど感激しました。
ただ、あれを実写にするって、相当難しいのでは(クソ映画になる可能性が大いにあるな)と思っており、覚悟して鑑賞しましたが、個人的に、そんな心配を裏切る最高映画でした!
なんとなく分かっていますが、この映画を最高だと言う人間は、きっと多くないと思います。私も、原作を読まずに「綾野剛と若葉竜也だいすき!おもしろクドカン映画の新作か〜期待しちゃお!」というようなテンションでこの映画を鑑賞していたら・・・違った感想だったかもしれません。
この滑稽なエンターテインメントを一流の俳優陣がクソ真面目に演じていること、強すぎる風刺は薄寒い気がして茶化してしまうが、それをまた高いクオリティのアクションと映像美で作品を陳腐化させようとするような態度、全部ひっくるめて、パンクロックのような映画でした。
INUみたいなパンクな音楽のエンディングを予想していたのですが(INUも大好き)、予想に反してトレンドっぽい綺麗目なエンディング曲で(知らん曲でしたが)このバランスもまた良いな〜と思いました。
思想が偏りすぎるのは恥ずかしいから中和するんですけど、その中和して振り切らない感じが丁度良くかっこ悪くて、かっこいいんですよね〜。
もう一回原作読み直そうっと。
ひたすら不快
斜に構えたオッサン達から「コレが粋ってモンだ、面白くないヤツは感性が鈍いぜ!」って説教されながら学芸会コントを見せられた感じ。
登場人物が男性ばかりで絡みが多くて、生理的に受け付けない。
特にゆとり世代や知的障害オサム、スラム街の住人達の扱いが酷い。カルト宗教にハマる彼らを揶揄した劇中セリフで「社会のせいにして現実逃避」とdisってるが、障害や貧困は自己責任って考え方、ガチで昭和世代の精神論よな。
あと反戦デモとライブが同じ?パンクって反体制だと思ってたけど、まんま「世の中の事に無関心」な人の思考。どっちが現実逃避だよ。
猿軍団の爆発とか残酷で笑えないし、金払わずに地元図書館で借りて良かったわ。
終盤30分切るべき。
この世を烏合の衆の地獄と見立てポピュリズムの台頭を暴くという凡庸なテーマを説明台詞で語り、収集つかぬだけの荒唐無稽でパンクを自称されても。
終盤30分切るべき。
原典と思しき「地獄の黙示録」の端正と異様を想う。
「ツィゴイネルワイゼン」臭も半端に漂う。
一言で言えば「しょうもない」。 クスっと笑わせられるところもあるが...
一言で言えば「しょうもない」。
クスっと笑わせられるところもあるが、腹ふり党ってなんやねんww
ただ、北川景子のはじけっぷりはよかった。
ラストシーンもあれでいいと思う。
ここまで原作に忠実な作品は見たことがない。最高!!原作ファン
注意↓↓↓↓↓
※事前情報抜きに必ず"原作を読んで衝撃を受けて"からこの映画を見て、その忠実さと豪華さに度肝を抜かれるのがこの作品の最高の楽しみ方です。
映画しか見ていない方、もしくは「映画→原作」という順番で見てしまったが故にその衝撃が極限まで小さくなってしまい酷評されている方々へ
「誠に御愁傷様です。」
この作品の実写化のスゴさは原作を知らないと一切理解できないと思います。映画だけを見てもほとんど楽しめないだろう非常に稀有な作品です。
「原作を知っているか否かで作品の見方が180°変わるだろうこと」も諸々込みで見ていて最高に楽しかった。
原作を知らない人たち、俳優目当てで見に行った人たちから酷評されているのをこういう評価サイトを見て知っていると尚更勝ち組の気分になれるわねw(マウントみたいな書き方になってしまってすみません。あまりにも酷評の嵐で低評価だったのを知っているので笑いが止まりませんでした。)
"ボボボーボ・ボーボボを小説にしたような行き当たりばったりな言葉で紡がれた原作の奇妙奇天烈な笑い"の中にある哲学的な深さや社会を痛烈に皮肉った煌めきも映画の映像で見ただけでは九割伝わらないが、
原作を読んでいると"そうそう!コレコレ!!"や
"こんなのもあったわ!"という、これでもかという原作への敬意に感服し、
それと同時になぜこんなにも豪華な俳優陣が原作を読んだときの脳内イメージそのままに動き、喋る様がなんとも不思議で奇妙な感覚だった。
どうして、この作品の実写化にこんなにも豪華な俳優陣を揃えられたの?www
一体制作側にどんな力が???なんてことを色々考えている時間もすべて引っくるめての余韻が幸せ。
この映画は一体どのタイミングで原作を裏切るのか?ずっとハラハラしながら見ていたのに最後のセリフまで完璧に仕上げられていた。
原作からの変更は、映画として成り立たせるのに主要3キャストの設定を多少イジったくらいでしたね。
公開前の情報に主人公の名前の変更で(うわ...また原作レイプの商業目的のみのクソ映画じゃん!)と思って映画館鑑賞を見送ったのが大間違いだった。
ここまで真摯に原作に敬意を払い忠実に作ったなら映画館でちゃんと見ときゃ良かったなぁw
映画史に残るくらい原作に忠実な作品ですよ。
デ○ルマンだとか、進○の巨○とか、鋼の錬○術師、
ドラゴン○ール、ブ○ーチ
原作レイプかつ、世間に酷評される商業用に魔改造された歴代の駄作に比べたら、
原作にここまで忠実で、ただ単に一般客が理解できないだけの『大傑作』に運良く巡り合わせていただいただけで本当に幸せです。
脚本の宮藤官九郎さんや、綾野剛さんを初めとする原作そのままに役を大切に演技された豪華出演者の方々、制作スタッフさん、関係者の皆さん、
そしてこれを企画したプロデューサーさん?
皆さん「「天晴れ」」ですよ!
どうか数年後、この作品が一旦完全に影を潜めた頃に
(前情報なしで「原作→映画」で見るという形でのセット販売)がしっかり定着して、
今後、他作品で行われるであろう実写映画作品群とそのファンの方々に好影響をもたらしますように。
(原作レイプが駆逐、撲滅されその被害者が減りますように)
超・睾丸稲荷返し!!
「ちょっと寝る」という浅野忠信の言葉で一瞬眠りに落ちてしまいましたが、全体的には大好物なおバカ時代的でした。最も良かったのがベンチャーズ風味の音楽♪序盤での掛十之進と刺客である真鍋五千郎(村上淳)との対決。そしてバカバカしい展開そのもの!
現代社会を風刺しているような展開は、敵=腹ふり党が攻めてくるといった危機感を煽ることによって壊滅しているはずの残党を使ってHDP(腹ふりでっちあげプロジェクト)を立ち上げることだった。平和な世の中に飽きたような政治がデマによって動かされるという、あり得そうな内容だ。そのために敵をでっちあげるという闇の世界。綾野剛に感情移入してしまっては、この風刺にさえ気づかないのかもしれません。
超能力のエピソードはそれほど面白みがないけど、猿回しでの主従逆転の皮肉が殿に伝わらないといったところは笑える。腹ふり党が一斉に勢力を増していくところや、完全にコメディアン化した染谷将太の演技も最高。
新興宗教の爆発的な感染もかなりシニカルだったけど、「ええじゃないか」騒動をモチーフとしながらも、世界観は宇宙のサナダムシ。夢と現実の境目がわからなくなるような哲学的メッセージもありながら、コロナ禍の現代をも予言しているかのようでした。破滅した世界のその先は・・・
アナーキー宇宙へゆく
「爆裂都市」と「2001年宇宙の旅」(「幼年期の終わり」でも可)が空中衝突して爆発したような映画でした。あと、主題歌がベタな「アナーキー・イン・ザ・U.K.」なのは最後まで観て、腑に落ちたんだけど、なぜ随所に「朝日があたる家」なんだろう。まあ、好きな曲だからいいんだけど。
石井岳龍監督・工藤官九郎脚本で何でこうなってしまうのか、パンクだから?
そもそも、町田康の独特の文章、摩訶不思議な世界観を映像化すること自体が無理があったのかもしれない。
「くっすん大黒」で文芸界をひっくり返し、その後も誰も追従できない作品群で数々の文学賞を獲得した町田ワールドをどう映像化するのか大変興味があったが、この作品ではあのワールドを映像化するとかなり陳腐な風合いが出てしまった感があった。
石井岳龍がメガホンを取るということで、名立たる俳優大集合であったが、自らセリフを一切言わない選択肢を取った浅野忠信はじめ、多くの俳優が戸惑ったのではないかなと邪推してしまった作品。
<2018年6月30日 劇場にて鑑賞>
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